第32回『ハロウィンの夜とAV女優』/森田哲矢(さらば青春の光)連載

2017/12/15

1ヶ月の下衆休みをいただき、再びホームグラウンドへ帰ってまいりました。

 

「今月下衆コラムないの残念です!」

 

などの声は一切なく、世間はすっかりクリスマスムード一色になりつつあります。
お洒落なクリスマスツリーの前で撮った写真をInstagramに載せてキャッキャするリア充たちを見ていると、もしかすると世間は下衆なものなど求めていないのではないかという不安が襲ってきます。

 

それならば方向転換とばかりに『陸王』のような熱き男達の戦いを描いた小説を書かせてくれと担当に持ちかけたら無視されました。

 

「感情など持たず、早く新しい下衆を産め。お前は下衆を産む機械だ」

 

の目を向けてくる担当。

 

「いくら求められてないと言っても、終電間際の電車内に吐き落とされたゲロよりはマシだ。だから早く書け」

 

の目を向けてくる担当。

 

ネット上に吐き落とされた小さなゲロ、それがこのコラムなのです。

 

というわけで、いつものようにただただ下衆を撒き散らす以外に選択肢はなくなったので、今月もサクッとやっちゃいましょう。

 

 

さて、今年も漫才師の頂点を決める大会、M-1グランプリ2017が幕を閉じました。

 

今年も面白い漫才師達がしのぎを削る、物凄くハイレベルな大会。
そんなハイレベルな大会を制したのはとろサーモンさんでした。

 

僕自身、日頃からお世話になっているとろサーモンさんの優勝には、ただただ感動しました。
特にボケの久保田さんは、長年泥水をすすり、食えない時はキャバ嬢が飼っている犬を散歩させて生計を立てていたほどの下衆のカリスマです。

 

そんなカリスマに追いつくべく、僕も来年の決勝までに、犬ぞりぐらい散歩させてくれるキャバ嬢を見つけようと思います。

 

 

そんな軽い冗談で締めくくって今月のコラムを終えるのが理想でした。
しかし、そんなことをここの読者と担当が許してくれる筈もありません。

 

しかも先月休んでいることにより、下衆のキャリーオーバー発生中。
普段以上に醜い文章でなければ、担当の検閲をパスすることはできません。

 

もうこうなったらM-1グランプリ開催中に行われた、男達のもう一つの熱い闘いをここに晒すしかありません。
ここの読者なら『陸王』の数倍熱くなれる、そんな物語です。

 

それは、今年のハロウィンシーズンのことでした。

 

ここ数年、日本でも異常な盛り上がりを見せるハロウィン。
首都東京も毎年渋谷が、イベント事に敏感なパーティーピープル達でごった返します。
渋谷全体が巨大なクラブと化し、「トリックオアトリート」という本来あるべき言葉などとうに消え失せ、各々が好きな仮装に身を包み、数人で群れを成し酒を飲み、とにかく騒ぐ。

 

そして、そういう状況を一番疎ましく思っているのが、芸人という人種です。
ハロウィンに限らず、流行っているものなどに対して、斜に構えたスタンスをとり、あーだこーだ言いながらけして乗っかることはしないノーパーティーピープル、それが芸人です。

 

『芸人はハロウィンを楽しいイベントだと思ってはいけない』

 

居酒屋のトイレに貼ってある“親父の小言”にもそう書いてあったような気がします。

 

しかし実際のところ、ほとんどの芸人がハロウィンに対してこう思っているのです。

 

「オレも参加してえぇぇぇ!!! 斜に構えたスタンスなんてどうでもいい! 何も考えずミニスカポリスと絡みてえぇぇぇ!!!」

 

そう、ほとんどの芸人が本当は参加したいという葛藤と闘ってるのです。
それなのにハロウィンに対して興味のないふりをし、ハロウィンの日はなるべく渋谷に近づかないように家路につき、次の日のニュースも「ふーん」ぐらいの感じで眺めるだけ。

 

芸人は死ぬまでこれを繰り返すのです。
僕も芸人として、そう振舞って死んでいく筈でした。

 

しかし、今年のハロウィンで、芸人としてのポリシーに反する行動を取ってしまったのです。

 

その日僕は、とある収録終わりに後輩2人と新宿でご飯を食べ、家路に着こうと3人で品川方面に行く山手線に乗り込みました。
同じ車両に、仮装をした楽しそうなグループがちらほらいました。

 

「そっか、今日はハロウィンかー」

 

「なんかめんどくさいっすね」

 

「全員スベってますよね」

 

 

みたいな毎年恒例の会話をしながら僕らは座席に腰掛けました。
すると、原宿駅でセクシーミニスカポリス達が乗り込んできました。

 

車内の視線を釘付けにするセクシーミニスカポリス達。
僕ら3人も御多分に漏れず、バッチリとその子達にピントを合わせていました。

 

「ハロウィンって基本だるいけど、ああいうセクシーな仮装する女子見れんのはいいよな?」

 

「そうですね」

 

なんとなくの沈黙。

 

「ああいう子達も最終的にお持ち帰りとかされんのかな?」

 

「今日会ったばっかりのわけ分からん男に持って帰られたりするんじゃないっすかね?」

 

「へー」

 

 

また沈黙。

 

「渋谷ってやっぱ凄いことなってんのかなー?」

 

「流石に今日は人の多さヤバイんじゃないすか?」

 

「うわー。絶対に行きたくないっすねー?」

 

そうこうしてる間に電車は渋谷に到着。
ミニスカポリス達が降りて行きました。

 

「うわー、やっぱ渋谷で降りんねやー」

 

「お持ち帰りされる為にね」

 

「けしからんすね」

 

「結局オレらみたいな奴がそういうのをパトロールせなあかんのかもな? ミニスカポリスだけに!」

 

「全然うまくないですよ! てゆうかそもそもなんで森田さんがパトロールするんすか!?」

 

「そうですよ! あんたハロウィンに縁もゆかりもないでしょ!」

 

「しかも今日の渋谷なんて本当に凄い人の数だと思いますよ? そんなとこ入っていくの馬鹿だけですよ?」

 

「それもそうか!」

 

「あっはっはっは!」

 

 

気がつくと3人とも渋谷のホームにいました。
芸人であるにも関わらず、ハロウィンの渋谷に降りたった3人。

 

「ちょっとだけやぞ? ちょっとだけパトロールして帰ろな?」

 

「分かってますよ。本当にちょっとパトロールするだけですよ?」

 

男はこういう時すぐに“パトロール”という言葉を使います。
「これは私服警官のコスプレなんだ」と言わんばかりに渋谷の街に繰り出す3人。

 

後輩の一人はジーパンを穿き、もう一人の後輩はミリタリーのモッズコートを羽織っている。
『太陽にほえろ!』の松田優作演じるジーパン刑事と、『踊る大捜査線』の織田裕二演じる青島刑事がいつも羽織っているモッズコート。

 

無理矢理にもほどがあるが、一応出来上がった即席の刑事の仮装。
そのセンターを陣取るただの童貞刑事。

 

西部警察のオープニングの如く、悠然と夜の渋谷を歩きだす3人。

 

 

しかし、えげつない人の量と、セクシーコスプレ軍団に出くわしても声一つかけれない内勤刑事達。
渋谷の街にウヨウヨいるSWATの仮装をしたイケてる集団は、いとも簡単に女性をナンパしています。
アメリカの特殊部隊に気後れする日本の内勤刑事達。
たまに「芸人さんですよね?」と声をかけられるもゴリゴリの男ばかり。

 

諦めムード漂う中、僕は振り絞るように、あの言葉を言いました。

 

 

「まあでも、賞レースの時期に新規の女性とエッチなことするのは御法度やから実際ヤらせてくれる女の子おってもヤらんけどな」

 

 

そう、このコラムの第22回『M-1グランプリと風俗業界の密接な関係』でもチラッと書きましたが、その日会ったばかりの新規の女性とエッチなことをすると、勝負の運気を全部女性に吸い取られ、結果良くない方向に運ぶという僕の中でのジンクスがあります。

 

3人とも数日後にM-1グランプリの準々決勝を控えている身。
ここで変な過ちを犯し、今年一年を棒に振るわけにはいかないのです。

 

全くハロウィンを謳歌できてない男達がギリギリ見つけた、

 

「オレら新規の女の子とでけへんもんなー」

 

というダサすぎる大義名分。

 

そんなダサすぎる大義名分を盾に、早くこの劣等感から解放されるべく渋谷を後にしようと思った矢先でした。

 

 

「僕の知り合いの女の子が今渋谷にいるみたいです! 飲もうって言ってます!」

 

ジーパンからの突然の報告。

 

「マジか!? 飲もう! 向こう何人!?」

 

急に慌ただしくなる捜査本部。

 

「二人です!」

 

一人足りないですが、贅沢は言っていられる状況ではありません。
僕たちはすぐに居酒屋に入り、女子二人が来るのを待ちました。

 

すると、程なくして現れたのは『UFO』の時のピンク・レディの仮装をした二人組でした。

 

しかも当時のピンク・レディ(ミーちゃんとケイちゃん)に匹敵するぐらい可愛い二人組。
10月下旬だというのに、銀色のキラキラしたノースリーブのセクシーなボディコンを身に纏ったピンクなレディ達。

 

「ハッピーハロウィン!!!」

 

気がついたら人生で初めて発した単語を自然に叫んでいました。

 

ジンクスなど一瞬で忘れ、なんとしてでもピンク・レディをお持ち帰りする為に躍起になるペッパー警部達。
あの手この手でなんとかお持ち帰りを狙います。

 

しかし、そもそも人数も合ってなければ、ヤリマンの空気感もさほど感じられません。

 

 

いつも通りウーロン茶をウーロンハイのふりをして飲もうが、ドMのくせに“夜はドS”とアピールしようが(結局女は圧倒的にドMが多いからという独自のデータより)、うんともすんとも言いません。

 

途中から元々知り合いのミーちゃんとジーパンがいい感じにはなりますが、それでもお持ち帰りできるほどの距離感ではありません。

 

もしかすると、ハロウィンの日に仮装した女の子を持ち帰るのは、M-1の決勝で満票を取って優勝するのと同じぐらい難しいのかもしれません。

 

時間だけがイタズラに過ぎていき、とうとう始発電車が動き出すタイミングで、ピンク・レディが帰ると言い出しました。
僕たち3人も今日は分が悪いと判断し、全員でトボトボと駅まで歩くことにしました。

 

僕と青島とケイちゃんで並んで歩いてると、後ろで往生際の悪いジーパンがまだミーちゃんを口説いていました。
それに感化されたのか青島が最後の力を振り絞りケイちゃんに話しかけます。

 

「ちなみにケイちゃんは3Pとかしたことある?」

は? こいつ凄えな? 無理と分かったら何でもありやん?
青島のボケにつっこむのもしんどいので、シカトを決め込んでいると、隣から耳が吹き飛ぶほどのどえらいパンチラインが聞こえてきました。

 

「したことはないけど興味はあります」

 

なななななんて!?

 

興味ある???

 

さささささ3Pやで?!?!?!?

 

 

「おい青島! 逆探知は?」

 

「逆探知成功しました!」

 

「発信元は?」

 

「ケイちゃんです!」

 

 

そんなやりとりがあったかどうかはびっくりし過ぎてあまり覚えていませんが、とにかくケイちゃんがそう言ったのは事実なのです。

 

「ほんまに言ってるそれ? なあ? ほんまにほんま?」

 

青島と僕による執拗な取り調べ。

 

「はい。なんか人生でそういうのも経験しといた方がいいのかもとは思ってます」

 

午前4時35分、容疑者確保。

 

まさか青島がヤケクソで言ったボケが、こんな好奇心旺盛な容疑者を炙り出そうとは夢にも思っていませんでした。

 

しかもケイちゃんは「ミーちゃんにこの会話聞かれてないかな?」の感じで、後ろを歩くミーちゃんをチラチラ気にしている素振りをしていました。
この素振りがさっきの言葉の信憑性をぐんと上げてくれています。

 

これはひょっとしたらひょっとするぞ!
このままもし後ろのジーパンがミーちゃんのお持ち帰りに成功した場合、オレと青島に3Pチャンスが舞い込んでくるんちゃうんか!?
かつてこんな素直な容疑者がいただろうか?
なんとかしてこの子の人生を彩ってあげたい!
そしてオレの人生も彩りたい!

 

そんな気持ちで後ろを振り返る僕。
するとそこには敗北感にまみれたジーパンの姿がありました。
持って帰れそうな空気など一切なく、むしろこれ以上傷つかない為に、当たり障りのないトークを引きつった顔でしているジーパン。そして気がつけばすでにハチ公前まで歩いて来ている一行。

 

そして渋谷駅に到着。
ピンク・レディの二人は、

 

「ご馳走さま! また飲もうね!」

 

と言って、何事もなかったかのように改札の奥へと消えていきました。
最後になんとなく僕と青島に目線をあわせてくれたケイちゃんを見送りながら、歯茎貫通するんちゃうかってぐらい奥歯を噛み締めました。

 

その後、ひとまずハチ公前へ移動し、僕と青島のジーパンに対する説教が始まりました。

 

「お前オレら3Pできたかもしれんねんぞ!」

 

けして犬の銅像の前で言う台詞ではありません。

 

「マジすか!? そんなことになってたんすか!?」

 

驚愕するジーパン。

 

「どうしてくれんねん! もう諦めてたのにここにきてむっちゃムラムラしてきたやんけ!」

 

日本を代表する感動的な話の主人公の銅像の前でなかなか理不尽なキレ方をする僕と青島。

 

ジーパンへの怒りをグッと堪え、再び渋谷の街をあてもなく徘徊する僕たち。
女の子に声をかけるわけでもなく、かと言って声をかけられるわけでもなく、ただただ徘徊しているだけの童貞3人。

 

すると青島の携帯が鳴りました。
素早く携帯を開く青島。
そして告げられる衝撃の一言。

 

「僕の知り合いのAV女優が今から3人で家来てもいいって言ってます!!!」

 

僕は一瞬何が起こったか分かりませんでした。
意識が飛びそうになるのを寸前の所でなんとか踏み止まりました。

 

 

え、え、え、え、AV女優!?!?!?!?

 

 

そう、東京という街には、AV女優という魅惑の生物が多数生息しているのです。
単体女優、企画物女優、人妻系女優など、ありとあらゆる種類のAV女優の保護指定地域、それが東京なのです。
いつ世界遺産に登録されてもおかしくありません。

 

そしてその魅惑の生物を捕獲し、ワシントン条約をかいくぐり、こちら側に提供しようとしてくれる密売業者、青島。
この男は只者ではありません。

 

「どうします?」

 

青島が聞いてきます。

いきなり訪れた4Pチャンスに、流石にたじろぐ僕とジーパン。

 

4Pなんてボンバーマンでしかやったことないよ?

 

と、訳の分からない言葉が頭の中を駆け抜けていきます。

 

しかし、どれだけたじろごうが、選択肢は一つしかないのは全員が分かっています。
しかも、こんな時間にこんなクソ芸人3人を家に招いてくれるAV女優の懐の広さにはただただ脱帽します。

 

「行くしかないだろ!!!」

 

コブクロよりも力強く言い放った僕達は、すぐさまタクシーに乗り込み、AV女優の家へ向かいました。

 

このコラムを始めた頃は、まだドブの中の薄汚いただの下衆だった僕が、下衆登山の山頂とも言える、AV女優のお宅に足を踏み入れようとしていると思うと、込み上げてくるものがあります。
山頂から見る景色はさぞゲスいことでしょう。

 

僕たちは途中のコンビニでレッドブルを一気飲みし、バキバキに目を血走らせながら、AV女優が住むマンションの下のインターホンを押しました。

 

「はーい」

 

AV女優の声とともに開くエントランスの扉。
エレベーターに乗り込み、行き先階のボタンを押した時、すっかりあのジンクスを忘れていたことに気づいた僕は勇気を出して言いました。

 

「おい、今M-1期間中やで? 数日後には準々決勝やで?こんなとこでエッチなことして大丈夫かな?」

 

「……」

 

先輩相手に余裕で無視をする青島とジーパン。

 

「やっぱまずくない? ほんまに運気吸い取られたら洒落にならんで?」

 

「……」

 

完全にシカトを決め込む青島とジーパン。

 

「オレ今年も決勝行きたいねん。お前らも一回ぐらい決勝行きたいやろ? そうやろ? なっ? なっ?」

 

「プロだったら問題ないってコラムに書いてましたよね?」

 

去年もクソ一休がいましたが、今年のクソ一休担当青島がとんちを効かせてきました。

 

確かに去年、「プロだったら問題ない」と書きましたが、去年お世話になったプロとはまた違う種類のプロ。
去年は手コキのプロ、今年は挿入のプロ。
挿入のプロは危険すぎるのではないか?という不安で僕はいっぱいでした。

 

考えがまとまらないまま、とうとうAV女優の部屋の前まで来てしまいました。
インターホンを押し、扉が開くと、そこには物凄くエロそうな風貌と、物凄くエロそうな佇まいの正にAV女優といった感じの女性が立っていました。

 

一瞬でムラムラが加速する3人。
ダメだと分かっていても股間は自然と熱を帯びてきます。

 

そしてなぜかテレビでは有名女優さんの作品が再生され、物凄くエッチなシーンが流されています。
部屋に置かれている大量のエロDVDにも目がいきます。

 

「今ね、色んな女優さんの作品観ながら勉強してたの。みんなやっぱりエロくて素敵」

 

お前もな。

 

と、心の中で呟く僕。

 

「なんか人がいっぱい来たからちょっと暑いね」

 

と言いながらフワッフワの生地の薄ピンクのパジャマのジッパーを少し下ろすAV女優。
そこに現れたるはGカップはあろうかというパイオツの谷間。
もしかしたらこれ自体がAVなんじゃないか?というぐらいのシュチュエーション。

 

そして、どこからともなく聞こえてくるダミ声。

 

「ヤッちゃえよ」

 

僕の中の悪魔が語りかけてきました。

 

「相手はプロなんだから大丈夫だよ。いいからヤッちゃえよ」

 

確かにプロやもんな……

 

「ダメよ! 絶対ヤッちゃダメ! また同じ過ちを繰り返すわよ!」

 

甲高い声の天使が応戦してきました。

 

「今年も決勝に行きたいんでしょ? だったら絶対ヤッちゃダメ!」

 

そうやんな、今年も決勝行きたいもんな……

 

「お前はそもそもコントの人間なんだからそんなに漫才頑張らなくていいんだよ」

 

確かに……

 

「絶対ダメ! M-1の決勝に行くと行かないでは営業の数が如実に違ってくるのよ!」

 

それもほんまやねんなぁ……

 

「だったら最悪手コキだけしてもらえよ」

 

手コキ?

 

「そうだ。最後までするから運気が取られるんだよ。手コキなら運気を取られたりはしない筈だ。だから去年は手コキ専門のデリヘルを呼んでたんだろ?」

 

確かに去年は手コキで決勝まで行ったんだ……

 

「しょうがないわねぇ。じゃあ手コキまでよ。それ以上は絶対ダメだからね!」

 

最終的に天使が折れる、という漫才の基本のようなやり取りが終わった直後、気がつくと僕はズボンを下ろし、全員の前で恥ずかしげもなくイチモツを放り出していました。

 

「ごめん、手コキだけお願いしてもいい?」

 

この世の中で最も醜いお願い。

 

「えっ? 別にいいけど、手コキだけでいいの?」

 

やはりそうです。
手コキ以上のことは確定しているのです。

 

「うん、手コキで大丈夫。オレ今年も決勝行きたいから」

 

この人何言ってんの?

 

の顔をしながらも渋々手コキをしてくれるAV女優。

 

ほんまにこの人誰に何言うてんねん?

の顔で見てくるジーパンと青島。

 

そして僕の、飽くなき挑戦が始まりました。

 

今までこのコラムで散々繰り広げてきた死闘の数々。
それらは全て最終目標をセックスに設定してきたものばかりでした。
あの手この手で何とかセックスに漕ぎつけようとしていました。
だがしかし、今回は違います。

 

セックスをさせてくれる女性が目の前にいるにも関わらず、M-1時期の影響でセックスができないのです。
僕は自らの数奇な運命を呪いました。

 

なんでや!?

 

なんで今日なんや!?

 

目の前にいるのはAV女優やぞ!?

 

AのVの女優やぞ!?

 

そのAのVの女優と、SのEのXできんねんぞ!?

 

これ逃して決勝行かんかったらショックで死んでまうかもしれんぞ!?

 

 

今世紀最大とも言える強烈な葛藤などお構いなしに、早々からAV女優のプロの技が光ります。
これでもかと言うようなテクニックで僕のイチモツを刺激してきます。

 

登頂を目標としてた登り始めた下衆登山。
しかし今回は6合目でフィニッシュするという道を選んだ僕。
そう覚悟を決めたにも関わらず、その6合目にまたあいつが現れます。

 

「山頂まで行っちゃえよ」

 

そりゃ行きたいっすよ……

 

「ダメよ! 山頂までは絶対ダメ! 6合目で我慢するのよ!」

 

そうすよね……決勝行きたいっすもんね……

 

「関係ねえよ。山頂は気持ち良いぞー?」

 

「絶対山頂まで行っちゃダメ! 手コキで我慢して!」

 

天使と悪魔のめまぐるしい攻防。

 

「森田さん、挿れたいんじゃないすか?」

 

急に比喩表現もクソもなくカットインしてくる青島。

 

「そうですよ! 挿れた方がいいですよ!」

 

ジーパンも加勢してきます。
もはや悪魔は3匹になりました。

 

そこからは天使と悪魔3匹による地獄のオーケストラが頭の中で鳴り響きました。

 

さあ登れ! 山頂まで登れ! 絶対ダメよ! 登頂するんだ! 絶対ダメよ! 登頂すればいいんだよ! ダメよ! 森田さん! 登頂! ダメ! 登れ! 森田さん! ダメよ! 登頂! 森田さん! 登れ! ダメ! 森田さん!

 

もはやベートーヴェンの第九に聞こえてきます。
第九はどんどん加速し頭がおかしくなりそうです。

 

登れダメ森田登れダメ森田ダメ森田登れダメ森田登れダメ森田登れダメ森田登れダメ森田登れダメ森田登れダメ森田登れダメ森田登れダメ森田
登れーーーーー!!!
ダメーーーーー!!!
森田ーーーーー!!!

 

「ふぅー……」

 

 

イキました。

 

 

長々と書きましたが、普通に4、5分の手コキでイキました。
紆余曲折ありましたが、今回はどうにかこうにか6合目でフィニッシュできたのです。

 

そして、ここまで読んでくれている人はいるのかという強烈な不安が襲ってきています。
僕ならボンバーマン辺りで読むのやめます。

 

しかし、ここまで読んでくれた方々には申し訳ありませんが、ここから更に醜い展開になります。

 

なんと、ジーパンと青島が、僕の手コキでの昇天に感化されたのです。
急にリアルにM-1のことを考えたのか、奴らも手コキで済まそうとしだしたのです。

 

こうなったらもういよいよヤバイです。
6合目にごった返す刑事たち。

 

「僕たちも手コキでお願いします!」

 

とまでは言わないものの、全く山頂まで登ろうとはしません。

 

青島とジーパンの相手をしている最中のAV女優からは、

 

「何でこの人達は誰も挿れないんだろ?」

 

の空気がバンバン伝わってきます。

 

よく考えてください。
AV女優の家に男が3人も行って、誰も最後までヤらずに帰るなんてことがありますか?

 

「M-1の時期やから手コキしか無理やねん」

 

と言ってどこの女子が納得しますか?

 

僕は二人にプレッシャーをかけ続けましたが、二人とも鉄のハートで頑なに山頂までは登らず、6合目でフィニッシュしていました。

 

ジーパンに至ってはフィニッシュしたかどうかも怪しかったです。

 

AV女優のマンションから下山し、昇る朝日を眺めながら僕らは思いました。

 

「この中の誰も絶対決勝なんて行かんねやろなー」

 

案の定、誰一人として決勝には行きませんでした。

 

決勝進出者の発表が終わった直後、こんなことなら挿れておけばよかったという強烈な後悔で、本当に死にたくなったのを覚えています。

 

そしてよくよく考えると、散々天使だ悪魔だ言ってましたが、一番の天使は何も考えずひたすら僕らに手コキをしてくれた、あのAV女優だということに気づかされました。

 

そして一番の悪魔は、あの後何回LINEしても既読すらつかないケイちゃんです。

 

2017年最後のコラムを書き終えた今、いつ打ち切りを宣告されても大丈夫なように、来年のM-1で優勝する為のネタを、今のうちから作っておこうと思います。

 

 

最後に、兼ねてからこのコラムのファンだと言ってくれている、銀シャリの鰻さんが今月の挿し絵を担当してくれました。
ちなみに挿し絵のタイトルは『イキな演奏』とのことです。
M-1にまつわる下衆話の挿し絵を、まさかガチのM-1チャンピオンが描いてくれるとは夢にも思っていませんでした。

 

銀シャリファンのクリーンな方々は、くれぐれも文章は読まないでくださいね。

 

いつか有名ミュージシャンが、「このコラムを曲にさせてくれ!」とか言うてけえへんかなぁ、とバカげた夢を見ております。

タイトル『イキな演奏』 イラスト/鰻和弘(銀シャリ)