第34回『隠れヤリマン攻略法』/森田哲矢(さらば青春の光)連載

2018/2/15

この連載が始まって、とうとう丸3年が経ちました。

 

このコラムを構築してきてくれた数々のスキャンダラスな芸能人たち、世の中に数多と存在するヤリマンの方たち、僕の下衆な日常に付き合ってくれる芸人さん達。

 

彼らの功績なしではこのコラムの継続はあり得ません。

 

特に僕の下衆に付き合ってくれる仲の良い芸人さん達には多大なる迷惑をかけていることでしょう。
そして一番迷惑をかけてる戦友が、ニューヨークの屋敷と、BKBことバイク川崎バイク先輩。

 

恐らくこのコラムの登場回数が1位と2位の二人だと思います。
大体の合コンはこの3人で行きます。

今だから言いますが、第19回の『ヤリマン2万7千円事件』も、実はこの3人の話なのです。
あの時にいた“フリーディレクターの財津”は実はバイク川崎バイクだったのです。

 

当時バイクさんには彼女がいたので、バイクさんから「くれぐれもオレの名前は伏せてくれ」との要望があり、渋々了承しましたが、一応ちょっとしたヒントを残したかったので、『バイク』と『財津』で韻を踏むことにしたのです。

 

その後、テレビのスタッフさんに誘われて行った飲み会にいた20代後半ぐらいの男性に、

 

「フリーでディレクターやってる財津と申します」

 

と挨拶されるという奇跡が起きたりなんかもしました。
ちなみに本物の財津は宅飲みなんて猥雑なものからは程遠い、物凄く誠実そうな男でした。

 

余談はさておき、とにかく僕はこの3人で行く合コンが大好きなのです。

 

女性の扱い方をある程度分かっている屋敷。

 

“ヤリたい感”だだ漏れで、とにかくヤレるかどうかを女の子に確認してしまう僕。

 

1Nightを目的にしてるにも関わらず、ヤリマンに簡単に惚れてしまい、なんとかしてヤリマンと付き合おうとする恋愛体質のバイク。

 

僕とバイクさんというポンコツ二人のせいで、決して勝率が良いとは言えませんが、とにかくこの3人で行く合コンが僕は楽しすぎるのです。

 

その日の僕らは、渋谷で3対3の合コンに臨んでいました。
お相手は、幹事の女の子は両方友達ですが、その子に呼ばれた2人は今日が初対面という、最近の合コンで最もポピュラーな形の3人組。

初対面の女性とでも余裕で合コンを楽しめるのが女性の良いところです。
これを機にこの初対面の2人が仲良くなり、気がつけばこの2人だけで合コンに行っていたりするのです。

このシステムがある限り、日本の合コンは未来永劫続くことになります。

 

そして注目すべきは、3人が3人とも“隠れヤリマン”風の社会人女性達だということです。

 

“隠れヤリマン”とは、大っぴらにヤリマンだと公言はしませんが、ノリはそこそこ良く、かと言ってここにいるメンバーに、自分がヤリマンだとは思われたくないので、経験人数もだいぶ少なめに言い、お持ち帰りなどもってのほか、しかしながら実際は、お酒を飲んで楽しくなれば別にヤッてもいいかも、という非常に見極めの難しいヤリマンポテンシャルを秘めた女子達のことを指します。

 

男性側からすれば、世の中の女性全員そうなんちゃうの?という邪推をしてしまいがちですが、その辺の解明はホットドッグ・プレス編集部に任せることにして、我々は目の前の隠れヤリマン風女子3人組を口説くことに集中しました。

 

森田「梅酒の水割り水多めで」
屋敷「ほぼ水やないか!!」

 

いつも通りのやり取りで女性陣のご機嫌を伺う僕たち。
まずまずの反応を見せる女子達。

 

幹事の女性「皆さん何歳なんですか?」
バイク「オレ38cc! バイクだけに! ブンブン!」

 

プライドもくそもない自らの本ネタをぶつけるバイクさんのボケに対しても、まずまずの反応を見せる女子達。
そこに屋敷が続けます。

 

屋「オレが32歳で、森田さんが40歳」
森「あほ! そんなわけないやろ! 31歳や!」
屋「いやそこのツッコミで嘘つかんといて! ほんまは39やろ!」
森「マジでやめろや! ごめん、ほんまは33やねん」
屋「だからしっかり訂正した感じで嘘つくのやめて! ほんまは38な!」
森「お前がそれやめろや! ほんまにごめんな、ほんまは早生まれで今年34やねん」
屋「早生まれとか言ってほんまの感じ出すのやめろや! ほんまのほんまは37な!」

 

本当の年齢は36歳ですが、いかんせんその情報を知らない者にとっては、何一つ伝わらない意味不明のノリを毎回必ず仕掛けてくる屋敷。
しかしながらなんだかんだ楽しそうにはしている女子達。

 

屋「森田さん、今日奥さん実家帰ってるんでしたっけ?」
森「おれ結婚してへんねん!!」
僕を貶めるための嘘をつく屋敷。
森「お前んとこの3番目の子、ぼちぼち立てるようになったか?」
すぐさま仕返しをする僕。
屋「子供おらんわ! 結婚もしてへんねん! ところで森田さん、もう覚醒剤やめれたんすか?」
森「覚醒剤なんてやってへんねん! そんなことよりお前、執行猶予中やのに酒飲んでええの?」
屋「捕まったことなんてないねん! てか森田さんあれですよね? 森田さんの両親って熟年離婚したんですよね?」
森「それは別にええやろ!!」

 

一応最後はそれなりにオチをつけるものの、途中に出てきたワードがやけにリアルなのか、笑いながらも少し警戒心を見せる女子達。
挽回とばかりに仕掛けるバイク。

 

バ「おいおい、お前らの会話ずっとエンストしてるぞ! バイクだけに! ブンブン!」
森「ブーーーーンブン!!!!」
バ「オレよりデカイブンブンすな!」
森「痛っ! いたとん!」
バ「出たーーー!!」

 

何千回とやってきたやり取りで挽回を図るものの、現状維持を保つのが精一杯。
テンポと勢いと声の大きさで、すべるのをギリギリ避けた感じが否めません。

お笑い好きの女子の前ではある程度結果を出せますが、お笑いに全く興味のない子の前ではポカンとされる諸刃のノリ。
ごくたまに、

 

「え? もしかしていたとんの人? 昔ちょっとだけ流行ったよね!」

 

という悲しいラッキーパンチがあるぐらいです。

 

そんなこんなでギリギリの攻防を続けながらも、なんだかんだお酒も入り上機嫌になった女子達を、宅飲みの聖地森田家へいざなうことに成功しました。

 

ここからが本番です。
一見ホームグラウンドに持ちこんでいるように見えますが、そんなホームグラウンドで幾度となく負けてきました。
悪夢のホーム7連敗を経験したこともあります。

 

なぜ勝てないかを真剣に考えた末、自分達の実力の無さを棚に上げ、球場の狭さのせいにしたこともあります。
お洒落な空間よりも、コタツや座椅子を置いて落ち着いた雰囲気を醸し出すという策が全く機能していません。

 

着いて再び乾杯をし、程なくすると屋敷が王様ゲーム専用のアプリを起動させました。
いちいち割り箸に番号を書いてどうのこうのという野暮ったさを排除し、王様ゲームという下衆の遊びに女子をすっと参加させることのできるアプリです。
このアプリ、屋敷以外に持ってる人間を見たことがありません。
しかもApple Storeのどこを探しても見当たらない謎のアプリ。
それをなぜか屋敷だけは持っているのです。

 

屋「このアプリおれが作ってん」
女「えー!? めっちゃ凄いじゃん!」

 

屋敷が醸し出す雰囲気からなのか、普通に信じる女子達。

そうして始まった王様ゲーム。
ある程度時間をかけ、キスぐらいのとこまでは行くことができましたが、

 

屋「じゃあ1番と4番が2人きりで荷物持って出ていく!」
女「いや、それはないわー。ないない」

 

流石は隠れヤリマン達、『王様の命令は絶対』などというこのゲームならではの言葉など一切通用せず、その手の核心を突いた命令には全く乗って来ません。
この世に絶対などないのです。

 

屋「じゃあ布団の中で10分間イチャイチャするのは?」
女「えー?」
屋「じゃあ1分! 1分だけやったらどう?」
女「1分だけだったらいいけど」

 

非常に難しい隠れヤリマンのOKライン。
もはや王様の命令とかではなく、王様の提案でなんとか凌ぐ僕達。

 

しかしあと一歩、あと一歩のところまでは来ている筈。
彼女達のOKラインを一歩踏み越えれば、そこには最高の楽園が待っているのです。
アメリカとメキシコの国境越えよりも遥かに難しい隠れヤリマン達のOKライン越え。
ここでガツガツ行って下手を打つと、国境付近での射殺は目に見えています。

 

隠れヤリマン達の牙城を崩す鍵は一体なんなのか?

 

すると女子の一人が言いました。
「そこにあるやつってファミコン?」

 

そう、僕の家には一番初期のファミコンがあるのです。
1983年に発売されたのを皮切りに、全世界で累計6000万台以上を売り上げた、まさに日本を代表するゲーム機です。

 

女「やったことないからやってみたーい!」

 

30年以上前のゲーム機を前に無邪気に喜ぶ女子達を見ながら僕は閃きました。

 

そうか! この手があった!

 

そしてその閃きと同時に真っ先に目に飛び込んできたのが、黄色のボディをしたアクションゲーム『スーパーマリオブラザーズ』でした。
1面につき4ステージで構成され、8面の最後のステージのクッパを倒せばゲームクリアという、ファミコン世代の人なら誰もが一度はプレイしたことのある、言わずと知れた名作です。

 

この均衡状態を打ち破る最後の手段。
僕は一か八かの勝負に出ました。

 

森「ここに『スーパーマリオブラザーズ』っていうソフトがあんねんけど、これをオレらがやって一回も死なずに最後までクリアできたらヤらせてくれへん?」

 

下衆の発想極まりなく、尚且つジャイアンよりも理不尽な一方的な提案。
それに対する女子の答え。

 

女「えー? それってめっちゃ簡単なんじゃないの?」

 

瞬殺でNOが出るかと思いきや、ゲームの難易度への質問、というまさかの返答。
僕はすかさず返しました。

 

森「いや、これ一回も死なずにクリアするって普通に考えたら絶対無理やねん! ほぼ100%に近いぐらい無理やで!」

 

それに対し、返す刀で応戦してくる女子達。
「じゃあなんでそんな提案するの? 絶対無理なんでしょ?」

 

食らいつく僕達。
「いや、このままズルズル飲んでもしゃあないやん? もう言うてまうけどオレらのゴールはSEXやねん! SEXしたくてしょうがないねん! これでクリアでけへんかったらキッパリ諦めるから! だからお願い! チャレンジだけさせて!」

 

どれだけ口調を強めようが、言ってることはこの世のどんな汚物よりも醜い内容です。
まさか口から吐き出すものの中でゲロよりも汚い言葉があったなんて。

しかし、幹事の女の子から思いもよらぬ返事が返ってきました。

 

「分かった! その代わりチャンスは一回だけだからね!」

 

埒があかないと思ったのか、はたまた僕達の並々ならぬ情熱が通じたのか、兎にも角にも奇跡のOKが出たのです。
女性のどの部分を刺激したのか全く分かりませんが、突然舞い込んだ歴史的ビッグチャンス。

 

自分の天職は芸人ではなく、SEXネゴシエーターなのではないか?

 

そう思わざるを得ないぐらいの大躍進。
そしてなぜか他の女子2人もこの条件を受け入れました。
なんとなんと、隠れヤリマンの牙城を崩す鍵は、『スーパーマリオブラザーズ』にあったのです。

 

『これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である』

 

アポロ11号のニール・アームストロング船長が月に降り立った時に言った言葉の意味が、やっと分かったような気がしました。
まさか小学生時代にあんなに夢中になってやり込んでたゲームが、この日の為の布石となっていたとは。
任天堂が業界トップを走り続ける理由も、なんとなく分かるような気がします。

 

突如として与えられた謎のビッグチャンスを前に、3人の顔つきは少年時代のそれに戻っていました。
小さい頃から慣れ親しんだゲーム。
もちろんクリアしたことはある。
ただ一回も死なずにとなると中々厳しい。
しかしながら、子供の頃よりも今の方が上手いのではないか?という根拠のない自信と、SEXが懸かっている時の集中力、これに賭けるしかありません。 

 

賞レースの決勝よりも真剣な表情をする3人の童貞と、なぜか覚悟を決める3人の隠れヤリマン達。
賭博罪すれすれのイカれたゲーム、人生で最も緊張する『スーパーマリオブラザーズ』がついに幕を開けました。

 

トップバッターはバイク川崎バイク。

 

お馴染みのBGMがかかる中、ゆっくりと動き出したマリオ川崎マリオ。
なぜか全員が無言になり、固唾を呑んで見守ります。
独特の緊迫感が室内を覆う中、キノコを取り大きくなるマリオ川崎マリオ。
大きくなったマリオに、自分の股間を投影する3人。
緊張のせいか、明らかにぎこちなく動くマリオ川崎マリオでしたが、なんとか1-1をクリア。

 

「よっしゃよっしゃ! 良いっすよバイクさん!」
後ろから檄を飛ばすスーパー童貞ブラザーズ。
「キノコ取ったら大きくなるねん」
と、女子に向かって明確な下ネタを言うスーパーセクハラバイク。

 

そして地下のステージである1-2が始まります。
少しずつ緊張がほぐれ、徐々にスムーズな動きを見せるマリオ川崎マリオ。
ここで、一度このソフトをプレイしたことのある人間なら誰もが知っている裏テクを使うマリオ川崎マリオ。
1-2から4-1へワープできるという、このゲームをやる上で最もポピュラーな裏テク。
それを見た女子達が一斉に叫びます。

 

「ちょっとちょっと!! めっちゃズルいじゃん!!」

 

全盛期の蓮舫ぐらいガツガツ来る女子達。

 

「ちゃうねんちゃうねん! これはごく当たり前のことやねん! 言ってもまだゴールまではだいぶ長い道のりやから!」

 

何も知らず叫ぶ女子達をなんとかなだめる僕達。
女子達のプレッシャーに動揺したのか、何でもないノコノコに当たり、小さくなるマリオ。
それに伴い小さくなる僕らの股間。
何とか4-1をクリアし、再び地下ステージである4-2へ進むマリオ川崎マリオ。

 

「ふぅー」

 

手をぷらんぷらんさせながら、謎の吐息を吐きカッコつけた様子のバイク。
忘れてはいけません、彼はSEXがしたいだけの男です。

そしてこの地下ステージにも4-2から5-1へ進むワープがあります。
恐る恐るそのワープを使う M K M(マリオ川崎マリオ)。
籠池氏の嫁ぐらい、やいのやいの言ってくる女子達。
相変わらずの女子達のプレッシャーを浴びながら、5-1をクリアし、5-2へ進んだその時でした。
M K Mの目の前にハンマーブロスが現れたのです。
実はこのハンマーブロスというキャラクターは、予測のつかない動きをし、尚且つ無数のハンマーをひたすら投げてくるという『スーパーマリオブラザーズ』をやる上で、1、2を争う程のやっかいな敵キャラです。

 

室内に一気に緊張が走ります。
何とかハンマーブロスのハンマーを回避しようする M K M。
ハンマーブロスという見たこともないキャラクターに思いを乗せ、祈るような気持ちで懸命にハンマーブロスを応援する女子達。

そして鳴り響いた死のBGM。

 

マリオ川崎マリオ、死亡。

 

「やったー!!!」
室内にこだまする女子達の歓喜の叫び。
一人呆然とするバイク。

 

先輩であるが故に、居酒屋での飲み代を全額払い、森田家までのタクシー代、コンビニで買い込んだ酒代も全て払ったにも関わらず、あっけなくハンマーブロスに殺され、今日という日を終えたバイク。
目には涙を浮かべ、

 

「こんなん無理に決まってるやん…」

 

と、まるで自分が理不尽な目にあったかのように拗ねるバイク。

 

そして2番手に名乗りを上げたのは屋敷でした。
屋敷は僕とバイクさんよりは年下なので、どちらかと言えばスーファミ世代の人間です。
それを象徴するかのように、ゲームが始まるや否や、何の計画性もない無謀なBダッシュで馬鹿みたいに走り出す屋敷。
しかし、危なっかしいながらも、ほぼ勢いだけで次々と面をクリアしていきます。

 

「こんなもん勢いが大事なんすよ!」

 

と、叫びながら、その勢いのままハンマーブロスにぶつかり、屋敷死亡。
あまりに哀れな死亡劇。

 

屋「ちょっと待って!ちょっと待って! これは違うねん! もう一回やらせて!」
と、懇願するも、
女「ダメだよ。一人一回って言ったじゃん」

 

と、冷静に断られました。
ポンコツの先輩2人を引き連れ、誰も持っていないアプリを駆使し、本来ならこんなことせずに普通にSEXできたであろう男、屋敷。
その男の夜は本当にあっけなく終わりました。

 

そしてとうとう僕の出番が回ってきました。
2アウトランナーなし。
凡退した二人は腑抜けになり、泣きながら床におちんちんを擦り付けていました。 
そんな2体の死体を見て、いたたまれなくなった僕は、超ダメ元でもう一度理不尽な提案をしました。

 

森「これもしもオレが全面クリアしたら、バイクさんも屋敷も全員SEXさせてもらうのは無理かな?」

 

ちんこを床に擦り付けてた二人の体がピタッと止まります。

 

女「なんで? 二人はもう負けたじゃん?」

 

森「お願い! ここでもしクリアしてオレだけがSEXできたとしても、それって何も楽しくないと思うねん! ボーカルだけが引き抜かれてメジャーデビューするあの感覚やねん! この3人がSEXできな意味ないと思うねん!」

 

道理も何もない、一本筋が通ってることを言ってるわけでもない、的を得た例えでもない、3人ともヤらせてほしいというただのお願い。

 

女「じゃあ本当にこれが最後ね。クリアできなかったらその時点で帰るから」

 

いけました。
ただただお願いしただけなのに、いけました。
もうここまで来たら「普通にゲーム関係なくヤらせて!」って言ってもいけるんちゃう?
と思ってしまうほど寛容な隠れヤリマン達。

その隠れヤリマンのお許しにより、ゾンビの如く蘇るバイクと屋敷。
勝っても負けても恨みっこなしの、本当に最後の戦いが始まりました。

 

手汗でびちゃびちゃのコントローラー。
夢半ばで死んでいった彼らのSEXへの思いが全身に伝わり、身が引き締まりました。
全人類の期待を一身に背負い、スタートボタンを押す僕。
祈るような表情で僕を見つめる屋敷とバイク。

 

バイクさんと屋敷を手ぶらで帰すわけにはいかない。

 

いつかのオリンピック選手達と同じような気持ちになりながら、慎重に歩を進めました。
面をクリアするごとにハイタッチを交わす3人。
自分にとってのピーチ姫は誰なのかを、頭の中で選び始めます。
マリオでもなんでもなく、ただのクッパにしか見えない3人。

この部屋にはSEXをするかしないかという、どうしようもなくナンセンスな2択しか存在しません。
長い人類の歴史を見渡しても、スーパーマリオでこの緊迫感を味わえた人間など1人もいないのではないでしょうか?
とてつもない緊迫感が部屋中を包み込む中、今までの冴えない人生がフラッシュバックしてきました。

 

やるしかねえ。
ここまで幾度となく積み重ねてきた敗戦は今日の為にあったんや。
学生時代から全くモテてけえへんかった。
勉強もダメ、スポーツもダメ、秀でた特技があるわけでもなく、尚且つ金もない。
芸人になっても変わらずモテへん日々。
でもここでクリアしたら、今までの人生全て清算できるような気がするんや。
人種差別、戦争、侵略、狂った世の中かもしれん。
でもSEXだけはどこの大統領も止めることはでけへん。
SEXだけが平等なんや。
SEXこそがこの地球上で最も尊い行為なんや!!

 

ハンマーブロス出現。

 

死亡。

 

 

まさかまさかのハンマーブロスでの3連敗。
その瞬間、女性陣は歓喜に沸き、雑魚2人は被害者団体のような目で僕を睨みつけてきました。

 

森「ごめんもう1回! もう1回だけチャンスちょうだい!」
女「何言ってんの? ダメに決まってるじゃん?」
屋「オレらめっちゃ久しぶりにやったから全然実力出せてないねん! ほんまにもう1回だけ! お願い!」
バ「2人とも諦めよ。オレらは負けたんや」

 

こいつこの期に及んで何1人だけカッコつけてんねん?
のバイク。

 

女「じゃあまた機会あったら飲もうね! バイバイ!」
女子達はそそくさと帰っていきました。

 

部屋に残された童貞3人。
テレビ画面には『GAME OVER』の文字。

 

僕たち3人はゲームの世界から現実に戻ってきましたが、おちんちんだけはまだパンパンに膨れ上がっていました。

 

隠れヤリマン達の超優秀なSP、ハンマーブロス。

 

森「まあクリア出来たとしてもなんだかんだヤらせてくれへんかったやろうけどな」
屋「まあね」
バ「ていうかおれヤるとかより付き合いたいタイプやしな」

 

童貞たちの渾身の負け惜しみが、むさ苦しい部屋の天井に消えて行きました。
すると、携帯で何やら調べ物をしてた屋敷が急に立ち上がりました。

 

「ちょっと待ってください! 4-2から一気に8面まで行ける裏テクありますやん!!」
「マジで!? てことはハンマーブロスを回避できるってこと!?」

 

驚愕の事実を知り、すぐにその裏テクを使ってみる僕達。
女子がいない中での絶望的クリア。

 

しかし、落胆したものの、次の戦いへの準備は整いました。
新手の詐欺集団がここに結成されたのです。
しかし、その日以来、ちょいちょい宅飲みに持ち込むことはできますが、

 

「スーパーマリオブラザーズをクリアしたらヤらせてくれへん?」

 

という提案を了承してくれる団体は未だ現れません。