まつもとあつしのそれゆけ! 電子書籍 第4回 ニコニコ静画とソーシャルリーディング

kindle

2012/3/2

電子書籍にまつわる疑問・質問を、電子書籍・ITに詳しいまつもとあつし先生がわかりやすく回答! 教えて、まつもと先生!



ちば :まつもとさん、おはようございます!ここがニコニコ動画を運営しているドワンゴさんなんですね。意外な場所にあるのでびっくりしました。

まつもと :そうなんですよね。東京日本橋、隅田川近くの「明治座」と同じビルに入っています。創立150年を迎える演劇場と動画配信でポップカルチャーを引っ張ってる会社が同居しているのって、何度来ても感慨深い・・・。

で、今日は前回「まつもとあつしのそれゆけ! 電子書籍 第3回 ソーシャル・リーディングって何?」で触れた「ソーシャル・リーディング」について、でしたよね。

ちば :そうです! でも、電子書籍とニコニコ動画っていうのもやっぱり不思議ですけど、いま国内でそれを聞くならまずはここ、ということなんですよね。

<お話を伺った方>

ドワンゴ 企画開発部長 伴 龍一郎
ばん・りゅういちろう●中野真とともにパケラジ次世代版の構想を考えた一人。その後「ニコニコ動画モバイル」開発メンバーのマネジメントを担当。現在は企画職へ転向し、アニメ事業とニコニコ事業を支える。

ニコニコ動画でマンガが読める?

まつもと :ということで、伴さん、よろしくお願いいたします。先日、別のサービスについてお話しを伺ったばかりASCII.jp:”リスペクト”を見える形に――進化する「ニコニ・コモンズ」ですが、今日はニコニコ動画が手がける電子書籍サービス「ニコニコ静画」についてお話しを伺います。

伴 :はい、よろしくお願いします。たしかに、ちばさんが仰るように、ちょっとイメージ掴みにくい部分はありますよね。もともと2009年11月に「動画に加えて静止画も扱います」ということで始めたサービスなんです。

「ニコニコ宣言」ニコニコ宣言(9)‐ニコニコ動画というコンセプトのもと、いろんなコンテンツにコメントをつけて、みんなで楽しもうということでラインナップしたものの一環です。

まつもと :サービスを開始されたころは「イラスト」が中心でしたよね?

伴 :そうなんです。イラスト投稿サイトとしての面と、実験的にはじめた「ニコニコ漫画」というサービスが軸でした。これはわたしたちが作家さんに原稿料をお支払いして、オリジナルの作品を作るというものです。動画と紙の漫画の「あいのこ」みたいなものですね。

まつもと :マンガがスライドショーのように順番に表示されて、あとはニコニコ動画と同じようにユーザーがコメントを投稿できるんですよね。

ちば :おー。かわいい・・・。BGMも出るんですね。

伴 :そうなんです。アニメなどの動画コンテンツを制作するとおカネも手間もかかりますが、こういう見せ方なら、紙のマンガに近い形で制作することができるんじゃないか、という狙いがありました。そこから発展させて、去年の11月にスタートしたのがニコニコ静画(電子書籍)という訳です。

まつもと :作家さんは商業デビューされているような方が中心だったんですか?

伴 :どちらかというと、ニコニコ動画やネット上でマンガを発表されている方々が中心でしたね。また、Web上でオーサリング(画像や音楽がでるタイミングなどを設定する)ツールも用意していますので、ユーザーの皆さまにもニコニコ動画と同じようなスタイルで作品を発表できるようになる予定です。

動画から紙の書籍へ関心を広げてもらう

まつもと :ニコニコ動画と同じインターフェイスなので、見て(読んで)いる方も、他の人のコメントを読んだり、気軽に投稿したりできますよね。このニコニコ漫画と昨年11月に登場したニコニコ静画(電子書籍)はどう違うんでしょうか?

伴 :アプローチとしては2つの方向性があると思っているんです。Webブラウザでみるのに特化して、コンテンツをはじめからそれ用に作るのが、ニコニコ漫画のスタイルですね。それとは別に、既に膨大にある「紙の書籍」をどう電子化して「ニコニコ」してもらうことができるか、という方向で取り組んでいるのが、ニコニコ静画(電子書籍)です。

ちば :なるほどー。

まつもと :ニコニコ動画と違って、確かに縦長サイズで、紙と同じような画面が表示されますね。iPadだとタップしている間だけ、コメントが流れるので、読書自体に集中することもできるというという訳ですね。電子向け作品だけでなく、紙で出版されるものも扱うのはどういう狙いがあるんでしょうか?

伴 :ニコニコ動画は、会員数2552万人(うち有料プレミアム会員は152万人)を超える大きなサービスになりました。ユーザーさんの投稿作品だけでなく、例えば映画やテレビアニメの有料配信を行ったり、月額定額でアーティストの動画を見られるファンクラブ的な機能も提供しています。このプラットフォームを映像だけでなく、いろんなコンテンツで活用してもらいたいという思いがあります。

アニメの場合がわかりやすいのですが、漫画やライトノベルが原作になることが多いですよね。出版不況などと言われていますが、アニメを見てそういった原作を買ってもらうとことも多いはずです。ニコニコ静画(電子書籍)で、購入まで至らなくても、例えばお試し版を読んで、「これ面白そうだな」と思ったら、書店で本を買ってもらってもいい。そこで何かお役に立てればと思うし、そうなっている方がニコニコ動画のユーザーさんも楽しいと思うんですよね。

ちば :ダ・ヴィンチでも映画の公開とあわせて原作本やその作家さんを特集したりしますけど、それと近いかも。

伴 :ですです。そして、ニコニコ動画の「コンテンツを起点として感情共有する」という基本理念にもマッチする面白いサービスになるんじゃないかなと。先日、角川グループさんと提携もしましたので、ニコニコ静画(電子書籍)に対応している作品であれば、あちらの電子書店BOOK☆WALKERで購入した本や無料お試し版を、ニコニコ静画(電子書籍)でコメント付きで読むということも可能になってます。

他の出版社さんともいろいろお話しをしているところですが、ニコニコ動画はとにかく沢山のユーザーさんが「コンテンツを楽しみに来ている」場所なので、そういう人たちが原作本になんらかの形で興味をもち、紙・電子を問わず手にとってもらうきっかけになってくれると良いなと思ってます。