23歳童貞が一目ぼれしたのは都会の自由な女性…切ない恋の行方は――夏目漱石『三四郎』

文芸・カルチャー

2018/9/13

『三四郎 (新潮文庫)』(夏目漱石/新潮社)

 熊本の高等学校を卒業し、東京帝国大学に合格した真面目な主人公の三四郎は、23歳だが女性経験がない田舎者。女性と共に相部屋で一晩を過ごすが、気を遣うばかりで手も触れず、「度胸のない方ですね」と別れ際に言われる始末。

 東京の喧騒に辟易していた三四郎は、自由気ままで美しい美禰子(みねこ)という都会の女性に出会い、一目惚れする。その後三四郎は、大学の友人の与次郎、同郷の先輩の野々宮、英語教師の広田、野々宮の妹のよし子らとも交友を深める。

 ある日三四郎は、彼らと菊人形の見物に出かける。途中で美禰子は気分が悪いと言いだし、三四郎と彼女は一行から離れる。彼女は三四郎に、「迷子」の英訳は「stray sheep」であるのだと話す。石を飛び越えるときに美禰子は躓き、三四郎に抱きかかるように倒れ、彼の腕の中で「stray sheep」と囁いた。

 三四郎が美禰子に誘われて画家の原口の絵画展へ行くと、そこで野々宮と鉢合わせる。美禰子は野々宮をもてあそぶかのように、三四郎に囁く素振りをする。彼女のそんな態度に腹が立つと同時に、三四郎は彼女に恋をしていると自覚する。だが、美禰子の気持ちが誰に向いているのかが分からない。

 三四郎の帰省の間に、美禰子は彼女の兄の友人と結婚し、三四郎は失恋した。原口が美禰子を描いた「森の女」と題した絵が評判となり、それを見た彼は、絵に相応しい題は「stray sheep」だと感じ、口の中で「stray sheep」と繰り返した。

文=K(稲)