「みんなが持ってるモノ」に惹かれたり反発したりする心理学的理由は? 【ビジネスにすぐ効く心理学】連載第5回

ビジネス

公開日:2018/12/20

『ビジネス心理学 100本ノック』(榎本博明/日本経済新聞出版社)

 仕事そのものは嫌いじゃないけど、職場の人間関係や、お客さんとのやり取りが億劫で、会社に通う足取りが重くなる…。そういう気分になったことはありませんか? ビジネスでも中心となって動いているのは人間ですから、そこにはいろいろな心の働きが絡み合います。実際にビジネス分野で急速に“心理学”の存在感が増しています。

「ちょっと理屈っぽい?」と思っていた心理学を、ビジネスでの「あるある」な場面に重ね合わせてわかりやすく解説してくれるのが『ビジネス心理学 100本ノック』(榎本博明/日本経済新聞出版社)です。本書から、あなたが今すぐ役立てられそうなトピックをご紹介します。

■自分に似た他人を判断基準にする心の働き【社会的比較】

 洋服を買いに行った際に店員さんから「これ、すっごく売れてるんです!」「スタッフ間でも人気なんですよ?」とすすめられるがままに買ってしまったことはありませんか? 逆に「みんなが持ってる」モノなら避けようと考える人もいるかもしれません。自分ではなく「みんな」を判断基準にするのは、人間の「社会的比較」の習性によるものです(本書170ページ)。

 落ち着いて考えてみると、大切なのは「自分が欲しいかどうか」であって、「多くの人が欲しがっているかどうか」ではないはず。人によって好みが違うのは当然ですし、優先順位や経済状況も異なります。

 でももし仮に、あなたが求めようとしているモノ・サービスが、「九州のラーメン店に関する本」や「家族3人で週末だけ運転する際の自動車保険」だったら、どうやって自分にピッタリのものを探しますか? 自分に明確な判断基準がないときには、「社会的比較」の習性に従って、“自分に似た他人”を基準にすることになります。この場合は、Amazonで九州ラーメンのガイド本のランキングやレビューを閲覧したり、保険の情報サイトで自分と同じ程度の収入の人の書き込みを参考にしたりするのです。

 日本人が「みんなはどうしているか」という情報に過敏である性質を利用して、「売れている」「人気がある」といった宣伝文句が意図的に使われることもあるそうです。こんなキャッチフレーズを見かけたら、財布を鞄から取り出す前に一度深呼吸が必要そうです。

 本書は、ビジネスだけではなく生活の折々でも気になる心理学の基本と、それを活かした実践的ヒントを紹介します。心理学の正しい知識は、ビジネスや仕事であなたの武器となり、疲れた心にはそっと寄り添ってくれるもの。本書のページをめくって、そんな心強い相棒を得てみませんか。

文=田坂文