つぶやきシローの青空読書 芥川龍之介の『地獄変』を読んだよ

更新日:2013/12/20

つぶやきマーカー

「物語は、殿に使えていた”私”目線で語られるのね。怖い話を聞いているみたいで、自然と引き込まれちゃったよ」

登場人物のほかに”私”っていう語り手がいて、昔の怖い話を聞いているみたいなんだよね。殿が良秀に『地獄絵図を描け』と命じたことから、このおぞましいお話は始まる。さぁ、物語の始まりでございます…って感じだね

「みんな色々考えただろうけど、僕の解釈は…良秀は娘を近親相姦したんじゃないかな」

絵を描き進める良秀は、やがて正気を失ってくのね。溺愛する娘が地獄で自分を待っている悪夢をみてうなされるんだけどね、これを読んで僕はピンときたのよ。この後、娘が誰かに襲われた記述があるんだけど、その犯人は父親の良秀なんじゃないかって。娘を愛するあまり、罪を犯しちゃったんじゃないかなと思ったね

「娘の惨たらしい最期を、じっと見据える良秀。これぞ親子の究極の愛、そして芸術を突き詰める人間の有様なのかね」

よりリアルな地獄絵図を求める良秀は、弟子を鎖で縛ったりミミズクに襲わせたりして、人間が悶絶する姿を描いていたのね。だけどそれじゃ飽き足らず、『燃え盛る牛車のなかで、黒髪の女性が悶えている姿を描きたい』って殿にお願いするの。殿が用意したその牛車のなかには、なんと良秀の一人娘が乗せられていたんだよね。娘の燃えたぎる惨い様を、良秀はただじっと見つめていたんだよね…

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「結局、世の中すべて地獄だよね…。救いようがないこの世の地獄をみてしまって、もう死ぬしかなかったんだろうね」

その一件以降、芸のためには娘への情愛をも捨てる男だって、みんなが良秀を批判するのね。だけど、出来上がった地獄絵図の屏風絵をみて、誰も彼を悪く言わなくなったとか。そこに描かれていたものがあまりに凄まじかったからね。しかし、絵を描き上げた翌日に彼は自殺してしまう。この世の中、何をするにもどこへいくにも地獄だなって痛感したね

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愛情表現が不器用な父と、父を誰よりも尊敬し貧しい生活をも明るく楽しく過ごす息子・健太の物語。不足した日常は彼らにとって不幸ではない。しかし、健太が小学校に入学する頃、突然二人の生活に終わりが訪れる。理想な親子とは?つぶやきシローがその問いを投げかける。

僕が思う理想の親子を書いてみました。
こういう父親、こういう息子が今の時代もいてもいいんじゃないかって思います。