藤本さきこの本喰族!!桜の時期に選んだ1冊『雷桜』宇江佐真理/連載第2回

文芸・カルチャー

公開日:2019/5/5

 私にとって本は、食べて吸収し細胞にするもの。

 食べることと同じくらいを作っていく。

 食物が肉体のエネルギーを作るなら、書物は魂のエネルギーをつくる。

 ひとつだけ違うことは、魂には「お腹いっぱい」という感覚がないこと。

 お腹いっぱいにするために読むのではないのだ。

 この連載「本喰族」では、読んだ本の中から頭に残っている「言葉」から次の本をリレー形式で検索し、魂がピンときた本をどんどん喰っていきたいと思います♡

『雷桜』宇江佐真理

 根元は銀杏だが、途中から桜になっている奇妙な木「雷桜」の周りで起こった、殿様と狼女、身分の全く違う者同士の純愛時代小説。

 前回の本から「雷」で探し、今がちょうど桜の時期という事もあり、この本にした。

 1歳の雛祭りに拐され、15年間山の中で暮らした狼女の遊と わずか4歳で殿様になってしまい、心から打ち解けることの出来る友人を1人も持つことなく育った斉道。

 遊は15年ぶりに産みの親の元に帰るのだが、いくら躾を受けても、普通の綺麗で可愛らしい女にはなれない。斉道も幼い頃から母親と引き離された寂しさと、上からの期待に神経が潰され、気の病を持っている。

 お互いに共通する孤独と、普通では無いという寂しさが引きつけ合い、男女の愛情を芽生えさせる。

 2人が徐々に心を惹かれあい、受け入れていく様子がとても切なく美しかった。

 それは 相手を通して、自分のありのままを受け入れていく姿が感じられたからだと思う。

 優しく甘美な山の情景の中で何度も出てくる「風が頬を嬲る」という表現にギョッとした。

「嬲る」というその漢字のせいもあるかもしれない。

 背景の美しさに、その風の描写が馴染まないような気がして違和感だった。しかし読んでいるうちに、型に押し込め切れない人間の苦悩が表れているのかもしれないと感じた。

 遊と斉道は、別れが迫っている中、山の中でたった一回だけ結ばれた。

「逃れたいのに逃れられない」「身体の芯から獣じみたものが騒ぐ」

 自分の中から湧き上がる何かを敏感にキャッチする狼女の遊と、

「拒むな、拒めば獣になる、拒まなければ遊の男になれる」

 男の斉道の葛藤。これまで、闇雲に女で憂さ晴らしをしていた斉道に本来ある優しさが見えた気がした。

 結局、遊は斉道の子を孕むのだが、もし正しい孕み方というものがあったなら、大正解の孕み方だろうと思う。 その後斉道は紀州徳川家の将軍になることになったので、遊の子は将軍の子として生きる事も可能だった、もっとも遊も側室として、斉道の立場の恩恵を受けることはできた。

 が、悠も産まれた子も、山で生きていくことを選ぶ。

 ぜひ桜の季節に読んでほしい一冊。

 次の検索ワードは「嬲る」にしたかったのだが、ポルノしか出てこなかったため「孕む」にします

文=藤本さきこ

第3回に続く

(プロフィール)
藤本さきこ●ふじもとさきこ/株式会社ラデスペリテ 代表取締役
1981年生まれ、青森県出身。累計3万人以上を動員した「宇宙レベルで人生の設定変更セミナー」を主宰する人気講演家。4人の子の母でありながら、実業家としても活躍。1日20万アクセスを誇るアメーバのオフィシャルブロガーとしても知られる。友人と共同創業した「petite la' deux( プティラドゥ)」は実店舗からネットショップへ事業形態を変更。布ナプキンや化粧品、香油、ハンドメイド雑貨を販売。そして、「Laddess perite(ラデスペリテ)」では、自身が開発したオリジナルの万年筆やノートやスタンプ、自ら選んだ文房具を発売し、いまや年商3億円を超える規模に拡大。自らの人生を「明らめた(明らかに見た)」結果、宇宙の叡智に触れる経験をして以来、「女性性開花」をテーマに人生の在り方を追求。著書『お金の神様に可愛がられる』シリーズ3部作はベストセラーになり、『お金の神様に可愛がられる手帳』(いずれもKADOKAWA)は、4年連続で刊行している。


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