セックスレスの理由2トップ『中高年のための性生活の知恵』①

恋愛・結婚

更新日:2020/8/4


「セックスを避けられるようになって…もう愛されていないのかもしれない」そうした寂しさをひっそりと抱えている中高年の男性や女性は多いようです。男性は、中高年期の女性の心と体の変化を知らない。女性は、中高年期の男性の心と体の変化を知らない。そのことが、寂しさの根っこに存在しています。気持ちのすれ違いは、お互いの心と体の変化を知ることで解決するはず。中高年期ならではの豊かで穏やかな性を楽しみ、愛で満たされた毎日となるように――。

セックスレスの理由は「疲れている」「面倒くさい」が2トップ
(荒木乳根子)

「うちはセックスレスだからさあ」

「もういまさら、そんなんじゃないから、ウチは(笑)」

 などと話す中高年男女の声をよく聞きます。

 実際、セックスレス・カップルの増加については、さまざまなメディアでも取り上げられていますが、そもそもセックスレスとはどういった状態を指すのか、ご存じでしょうか? 先のようなことをお話ししている方々の中にも、確たる共通認識はないように思えます。

 セックスレスとは「特殊な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交、およびセクシュアル・コンタクトが1カ月以上ない場合」と、わたしが所属している日本性科学会は定義しています。

 では、実際はどうなのか? について具体的な調査を見ていきましょう。

 一般社団法人日本家族計画協会が発表した「第8回 男女の生活と意識に関する調査」によると、16~49歳の婚姻関係にある男女のセックスレスの割合は、2004年以降徐々に上昇し、2016年には47・2%にも及んでいます。

「性交に積極的になれない理由」で最も多く挙げられているのが、男性では「仕事で疲れている」で35・2%、女性では「面倒くさい」の22・3%がトップです。その他、目立った回答に「出産後なんとなく」(男性12・0%、女性20・1%)があり、セックスレスが長期化していることもうかがえます。

 わたしたちセクシュアリティ研究会で実施した2000年と2012年の40~79歳の男女の調査でも、夫婦間のセックスレス(性交が月1回未満)が増加していました。グラフを見てください。男性、女性共に、2000年の調査に比べて、2012年の方がセックスレスのカップルの割合が顕著に上昇していることが分かります。


 特に40~50代の上昇は著しく、男性で2.5~2.7倍、女性では1.8倍も高くなっています。

 夫婦一緒に調査に応じてもらったわけではないために男女差が生じていますが、どちらもセックスレス化が著しいことが分かります。

 特に、50代においては、月1回以上性交を行っている男女はわずか14~24%という結果でした。これには、50代前半になると女性は閉経し、性交痛などの性機能障害が強まることが関係しているといえます。こうした体の変化については、第2章で詳しく取り上げていますので、参考になるでしょう。

 ここで少し記憶を掘り起こしていただきたいのですが──

 日本はバブル崩壊後景気低迷が続き、2000年から2012年までも、不景気な時代でしたね。そのことも影響してか、多くの女性たちが主婦として家庭での仕事を担うだけでなく、外へ働きに出るようにもなりました。実際に、1995年前後から夫が大黒柱で妻が専業主婦の世帯と、共働き世帯の数の逆転現象が起きています。


 つまり、このころを境に、経済的に自立した女性たちが増え、それと同時に望まないセックスに対して、夫へはっきりと「ノー」と言う妻が増えたと考えられます。そのことについては、わたしは望ましい変化であるととらえています。自分の望まないセックスに耐え忍んでいた女性たちの人権が守られるようになったと受け止められるからです。

 その一方で、男性たちは経済的なパワーを減退させ、もしくは失った上、これまでおとなしく従っていたパートナーからセックスを拒絶されるようになり、自信を失ってしまったのではないでしょうか。

 なお、全年代で見た場合、有配偶者で1年間まったく性交がない人は、2000年では男女とも4人に1人程度だったのに、今回は男女とも2人に1人以上で倍増しています。

 セックスレス傾向は中高年に限らず、全年代において生じている現象だと考えられています。

<第2回「中高年にセックスレスが急増する理由」に続く>

【イベント詳細】
『中高年のための性生活の知恵』出版記念講演会


【内容】
人生100年時代、寂しさとは無縁の第2の新婚期を迎えるために読むべき、大人の性教育書が刊行されました。なぜ自分は拒否されるのか? なぜ求める気持ちになれないのか? 性のスペシャリストが現場で得た知見、そして中高年男女2590人のアンケートからわかった、現代日本の性の真実のすべてをまとめた一冊です。今回、読者(女性限定)を対象に出版記念講演を開催いたします。司会にはタレント、エッセイストの小島慶子さんをお迎えして、中高年女性たちが抱える心と性の問題について掘り下げ、たっぷりと語る90分です。


【開催日時】7月29日(月)19:00~
【会場】丸善・丸の内本店 3F日経セミナールーム
【定員】100名(女性限定)
【参加方法】【問い合わせ先】は公式ページをご覧ください。