中高年が抱える「寂しさ」の実態――男女の違いとは?『中高年のための性生活の知恵』③

恋愛・結婚

更新日:2019/7/7


「セックスを避けられるようになって…もう愛されていないのかもしれない」そうした寂しさをひっそりと抱えている中高年の男性や女性は多いようです。男性は、中高年期の女性の心と体の変化を知らない。女性は、中高年期の男性の心と体の変化を知らない。そのことが、寂しさの根っこに存在しています。気持ちのすれ違いは、お互いの心と体の変化を知ることで解決するはず。中高年期ならではの豊かで穏やかな性を楽しみ、愛で満たされた毎日となるように――。

中高年が抱える「寂しさ」の実態(金子和子)

■中高年単身者が抱える問題

 前項ではセックスレスの実態について詳しくみてきましたが、本項では、中高年のメンタル面について詳しく見ていきましょう。わたしたち日本性科学会セクシュアリティ研究会が行った調査と合わせてお伝えすることで、現代の中高年の性とメンタルについての実態がご理解いただけることと思います。

 最近では、さまざまなメディアで「結婚する人が減ってきた」「結婚できない人が増えている」といったニュースを目にすることが多くなってきましたね。

 50歳まで一度も結婚したことがない人のことを、統計上では「生涯未婚者」と分類しますが、5年に一度、総務省が行う国勢調査を基にその数が算出されています。

 そして実際に、生涯未婚者の割合が近年は年々上昇を続けているのです。

 2015年の調査によると、男性では23.37%、つまり約 人に1人、女性では14.06%と約7人に1人が生涯未婚者に当たることが分かりました。たった5年前の2010年の調査に比べ、上昇しています。

 既婚者でも、中高年世代になると離婚や死別などにより、再度独身に戻る方も現れるので、未婚率はさらに高くなるわけです。

 わたしたちの調査に回答してくれた単身者のうちの半分以上が、単身世帯でした。父、母、娘、息子などと暮らしているケースもありますが、男性の66%、女性の57%が単身世帯という結果だったのです。

 何が言いたいのかというと──中高年でパートナーがいない方の問題として浮かび上がってくるのが、「寂しさ」ということなのです。

60代、70代に「単身の寂しさ」について聞いてみると、女性より男性の方が、より強く「寂しさ」を感じているということが分かりました。

 そして、それは高齢になるほど顕著となります(次ページグラフ参照)。

 ちなみに女性の場合、40代、50代の女性の48%が「単身の寂しさ」を感じているのに対して、60代、70代は44%と大差ありません。対して男性の場合、40代、50代の62%に対して60代、70代は75%と、女性とは、逆に上昇している実態からも明らかです。

 さらに、男性と女性では、寂しさを感じる割合以外に、感じるポイントに差異があることも分かりました。

 男性はシンプルに「単身」を寂しいと感じますが、女性はパートナーがいる場合でも、実は、寂しさを感じていることがあるのです。

 男性はフレームワーク志向なので、パートナーが「いる」ことで満足と達成感を覚えますが、女性の場合は、「いるけど会えない」「会っても心がつながっていない」など、パートナーとの関係性の内容に大きなこだわりを持っています。女性は本当の意味で心がつながっていないと、「寂しさ」として認識する。このことは、昨今のセックスレス・カップルの急増と無関係ではないことが分かります。

 そこで、次にわたしたちは離婚者を含めた単身の男女にそれぞれ「交際相手が欲しいか」という質問をしました。結果、「欲しい」と回答した男性が80%いたのに対し、女性は48%と大きな開きがありました(次ページ表参照)。

 また、交際相手が「欲しい」と答えた男女に、「どの程度の性的関係を望むか」を尋ねると、男性の65%が「性交渉を伴う愛情関係」、対して女性の57%は、「精神的な愛情関係」と回答。「性交渉を伴う愛情関係」と回答した女性は40%でした。

 つまり女性の場合、たとえ寂しくても「セクシュアルな関係〝だけ〟のパートナーなら必要ない」という特徴があることが読み取れます。中には、恋人が欲しくても、「性交渉を求められそうでイヤ」という人もいるのが実態です。

 逆に男性は、本能として「精子を放出する」ためにセックスが必要だと考えることもあるでしょう。この辺りが女性の感じ方と大きく違うポイントで、意識のすれ違いが生まれている可能性があります。

 しかし、セックスを含むパートナーを欲しがる傾向の強い男性ですが、メンタル面では案外弱く、女性が先に亡くなると、夫も後を追うように……というケースが多く見られます。

<第4回「セックスを拒否する“真の理由”」に続く>