成功ビジネスのすごい仕組みをビジュアルで学べる! モノ・ヒト編/『ビジネスモデル2.0図鑑』①

ビジネス

公開日:2019/7/19

 うまくいっているビジネスモデルにはどんな共通点があるのか? 「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と4カテゴリーに分けた全100事例を図解。すべてを同じフォーマットで比べながら、各企業の「すごい仕組み」を学べる一冊です。第1回目は「モノ」と「ヒト」のカテゴリーからそれぞれ1社ずつを紹介します。

『ビジネスモデル2.0図鑑』(近藤哲朗/KADOKAWA)

【モノ】EVERLANE ~「業界のタブー」を冒して得た消費者の共感~

 日本市場で縮小し続けるアパレル業界。バーゲンセールがはじまれば50%オフは当たり前。場合によっては80%オフなんてことも。この服の原価っていくらなんだろうと思ったことはないだろうか。

 2010年、米国サンフランシスコで創業した「EVERLANE(エバーレーン)」は、自社で製造・販売するすべての商品の原価を公表しているファッションブランド。材料の布、金具やファスナーなどのハードウェア、工場での人件費、関税、輸送費の内訳も公表する徹底ぶり。さらに、原価と同時に「Traditional Retai」(従来の小売であればどのくらいの価格なのか)を公表している。驚くことに、EVERLANEはほとんどの商品で、その価格と比べて半値ほどの価格で販売している。

 これを可能にするのが同社のビジネスモデル。従来のブランドは大きな路面店を出し、大量生産・大量販売で経済規模を追求してきた。EVERLANEはそれに逆行し、まず販路をECに特化することで中間コストを省く。また、製品を生活必需品に絞り、少量生産ですべてを売り切る生産管理によって、資材在庫・製品在庫を最小限に抑えている。

 公開しているのは、価格だけではない。アパレル業界の大量生産を請け負う発展途上国でのひどい労働環境が問題視される中で、EVERLANEは自社が委託する工場で「何をどのように生産しているか」の過程や現地の従業員の写真、取引開始までのエピソードまで丁寧に伝えている。これにより生産拠点の大部分を占める途上国から、労働・環境問題対策への共感を得ている。結果、ほとんど広告費をかけずに、口コミや紹介による集客を可能にしている。

 生産過程、原価、競合の値段を公表し、従来の小売が設定する価格と比べて半分の値段で提供できる仕組み。これらは従来のブランドから見ると間違いなくタブーだけれど、同社の掲げるスローガンは「徹底した透明性(Radical Transparency)」。そこに競合はいないことが、同社の一番の強みだと思う。

【ヒト】拼多多 ~友人や親戚を巻き込むことで安価で買える仕組み~

 Eコマース界の新星ながら、驚くべき勢いで中国を席巻する可能性を持つこの会社を知っているだろうか。共同購入サービスは、これまでもたくさんあったが、「拼多多(ピンドォドォ)」は目の付けどころがユニーク。これまでの共同購入サービスでは、商品を売りたい会社側がクーポンを発行し、広告費をかけることで、知名度を上げるという方法が一般的だった。一方、拼多多はゲームのミッションに挑戦するような共同購入サービス。たとえば、共同購入者のノルマをクリアすると、割引特典がついてくる。購入者が親戚や友人などにSNSで声をかけて、共同購入を宣伝させるという独特の仕組みだ。

 同サービスが中国で着目されていることには理由がある。中国では友人や親戚を信じて購入するという文化が強いため、中国で急速に拡大し、すでに1700万以上ダウンロードされている。

 拼多多は、2015年9月からはじまったまだまだ新しい会社だが、現在、淘宝(Taobao)、京東(JD.com)に次ぐ中国第3位まで成長している。その理由は、Tencent Holdings(テンセント)との深いつながり。2017年に同社が主要株主となり、2018年4月には30億ドルの出資を受けることで、拼多多の評価額は150億ドルに達した。さらに、創業から2年半でユーザー数は3億人、流通総額は740億ドルに到達。驚くべき成長の背景には、テンセントが開発した「WeChat」との連動がある。WeChatは、月間ユーザー数10億人のSNSアプリで、購入者が友人にセールスする拼多多のサービスと相性がよかった。影響力が高いインフルエンサー的なユーザーには、商品を無料で提供されるなどユーザーメリットもある。

 共同購入数があらかじめわかることで、生産ラインも改善できる。製造工場では、商材によっては大量生産によって大幅にコストを削減することができるために、ユーザーには破格の価格で商品を届けられるC2M(Customer to Manufacturers)のビジネスモデル。いくつもの要素をうまく組み合わせた美しいビジネスモデルである。

<第2回に続く>

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●プロフィール
近藤哲朗
株式会社そろそろ代表取締役。1987年生まれ。千葉大学大学院工学研究科修了後、面白法人カヤックに入社。ディレクターとして、Webサイトやアプリの制作に携わる。2014年、面白法人カヤックで出会ったメンバーと、社会課題の解決を目的とした事業や組織を応援するため、株式会社そろそろを創業。その一環で、noteで「#ビジネスモデル図解シリーズ」「#ビジネスワード図解シリーズ」を発表したところ、NewsPicksで合計20,000Pickを超えるなど、大きな話題を集める。現在は約50人体制の有志組織「ビジネス図解研究所」を運営し、「ビジネス×図解の追求」をコンセプトに、大企業やNPO法人向けにビジネス図解のコンサルティングを行う。

Twitter:@tetsurokondoh(チャーリー)
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