「緊張してるからうまくいく」という思い込みのウソ/『人前で変に緊張しなくなるすごい方法』④

暮らし

2019/9/2

あがりやすい、ビビリ、テンパりがち…あなたの「緊張」はどのタイプですか?
変に緊張してしまったせいで恥ずかしい失敗をしたことがある人は多いのでは? 初対面や大勢の前でも緊張しなくなる「簡単トレーニング」を連載紹介します!

『人前で変に緊張しなくなるすごい方法』(伊藤丈恭/アスコム)

■どうしてあなたは大事な場面でテンパってしまうのか?

 まずは“敵”を知ることから始めましょう。
 そもそも緊張とはなんなのでしょうか?
 医学的には、緊張とは脳内ホルモンの一種であるノルアドレナリンが過剰に分泌されることで、交感神経が活発になりすぎて自律神経のバランスが崩れてしまった状態をいいます。

 その結果、心拍数が上がり、動悸が激しくなり、手足や声は震え、冷や汗が出たり、顔が火照(ほて)ったり(赤面)するといった〝症状〞がもたらされます。

 みなさんが大事な場面で、胸がドキドキしたり足がガクガクしたり、声が震えてしまったりするのは、医学的には自律神経の乱れに原因があったのです。

 そんな状態では当然、不安がいっぱいで、判断能力にも著いちじるしく欠けるでしょう。いってみれば頭が真っ白―。それが医学的には緊張状態なのです。

 たとえば、いまこの瞬間、お腹を空かせた獰どう猛もうなライオンに対峙(たいじ)してしまったとしましょう。

 すると、あなたの交感神経は一気に活発になり、自律神経のバランスが崩壊し、逃げ出そうにも頭の中は真っ白。冷静な判断ができず、その場でガチガチになってしまうことが想像できませんか? これがまさに究極の緊張状態です。

 日頃から「緊張しやすい」と自覚がある人は、ライオンが「会議」であったり、「上司への報告」であったり、「初対面の人に会う」であったりするのでしょう。

 ライオンを怖がるな、といっても無理ですよね。緊張というのは、もともと人間に備わっている本能的な反応ですから。

 でも一方で、会議がライオンだなんて大げさな、と笑う人もいるでしょう。そのような「緊張しない人」と「緊張する人」には、心の奥底にどんな違いがあるのでしょうか?

■真面目で責任感の強い人ほど緊張しやすい

「緊張しやすい人」には、どんな特徴があるのでしょうか?

 私は、その人の心の奥底に「大事な場面を無事に乗り切りたい」「何事もなく平穏に終わってほしい」「きちんと済ませて責任を果たしたい」などという思いがあることから緊張が起こると考えています。
 そんな思いを私は“成功への葛藤”と呼んでいます。

 あなたが緊張して失敗してしまった大事な場面を振り返ってみてください。

・プレゼンテーションで言うべきことを忘れて言葉に詰まってしまった。
・商談の席で自分の会社の商品説明がうまくできなくて取引が成立しなかった。
・PTAの会合で思わぬ反論を受けて、自分が言わなくてはいけないことをきれいに忘れてしまった。

 そのとき、あなたには、「責任を果たさなければ……」といった気持ちはありませんでしたか?

「成功への葛藤」などというと、「成功したい!」という思いが強い上昇志向のかたまりのような人が持つイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。自分に与えられた役割をきっちりと果たしたいと考えている真面目で責任感の強い人こそ、そんな思いにとらわれてしまうのです。

 一方、「緊張しにくい人」は、会議やプレゼンなどを「ライオンと対峙するような重大事」とは感じていないため、結果として自然体で話すことができてしまうのです。

■「緊張しているからこそうまくいく」を信じたらダメ!

 世間には「緊張しているからこそうまくいく」と考えている人がいます。いや、むしろこうした考え方が世の中の主流なのかもしれません。

 演劇界でもそう考えている人は少なくないようで、演出家の中には役者さんの緊張を高めるために怒鳴り散らしているとしか思えない人もいます。会社でも、鼓舞(こぶ)するつもりなのか、怒鳴り散らして社員を緊張させる人がいるようです。

 でも私は、「緊張しているからこそうまくいく」とはどうしても思えません。「一流の俳優というのは、緊張しているからこそ大舞台で実力を発揮できるのではないですか?」
 こんな質問を受けたときは、はっきりと「NO」と言わせてもらっています。

 私は、リラックスした状態で物事に集中するには、変な緊張をとらなければならない、と考えています。

 たしかに緊張していてもやれることはありますが、けっして演技のセオリーではありません。緊張が少しでもあると、身体や心が委縮してしまうのは、ビジネスパースンも役者も同じです。

 人を感動させるほどのスピーチ、いや、そこまでいかないにしろ、スピーチで失敗しないためには、いっさいの緊張をとらなくてはなりません。

 緊張しているからといってパフォーマンスは上がるわけではないのです。
 私自身、緊張しやすい性格だからよくわかるのですが、緊張をうまくとれる人だけが“いい仕事”ができると考えています。


【次回につづく】