「伸びる新人は、社員同士で無駄に仲よくしない」『伸びる新人は「これ」をやらない!』⑥

ビジネス

公開日:2019/9/25

 近年のマネジメント論の主流を、真っ向否定するスーパードライなマネジメント手法「識学」に則った新入社員のための仕事術本です。

『伸びる新人は「これ」をやらない!』(冨樫篤史:著、安藤広大:監修/すばる舎)

\よくある誤解/
「仕事が片づいていないけど、今日の同期会には行かないと。同期の間で仲間外れにされてしまいそうだし……」
「ランチはいつも同期で集まっていくことにしてるんです。社長だって、入社式のとき『新人同士、コミュニケーションを密にとって、会社を変えていってほしい』といってましたよ」

■組織の「和」は生産性に寄与しない

 ここでいう「和」とは、人間関係がよい、単純に「仲がよい」といった意味です。どんな会社でも、「何か雰囲気あんまりよくなくて」とか、「ランチも何か楽しくなくて」などと感じられることはあるものです。

 しかし会社は、そもそも社員が仲よくするために集まっている場所ではありません。伸びる新人になりたいのであれば、この点を十分に理解し、仕事より「和」を優先しないようにしなくてはなりません。「チームに和がないから、力を発揮できない」などというのは、ただの言い訳です。

 これまでの人生で、部活動など集団で何かの目標に向かって努力した経験のない人にはイメージしにくいかもしれませんが、集団において、その構成員の仲がよい状態は、目標達成の「前提」や「条件」ではありません。あくまでも目標達成に向けた努力の「結果」として生じるものです。

 たとえば「会社」という集団であれば、成果を出すためには社員それぞれが与えられた責任を果たしながら、目標へと向かっていきます。その過程で徐々に信頼関係が生まれ、仲よくなっていくというのが正しい状態です。

「仲よくなる・ならない」の前に、与えられた責務を一生懸命に果たすこと。それこそが、社員同士が仲よくなるための最短ルートであり、逆ではありません。このような認識をしてください。

■ギスギスしているのか、切磋琢磨しているのか

 仲が悪いわけではないけれども、新人の目には、一見ギスギスしているように見える職場もあります。しかし、もしその状態が、それぞれの社員が自分の責任を果たすにあたって、必要以上のコミュニケーションをとっていないというだけなのであれば、実は何も問題はありません。それはただ単に、「チームのメンバーが切磋琢磨している状態」です。

 お互いの職責をまっとうしようとする過程で、真剣であればあるほど社員同士がぶつかることもあります。ですから、その切磋琢磨している状態を「ギスギスしている」といっているのなら、まったく問題はないのです。

 そして、ギスギスしているように見える状態のなかで仕事をしていても、組織全体がいったん目標を達成すれば、そのときにはその組織にはいままで経験したことがないような「仲のよさ」を感じられる状態が生じます。そういった組織こそが、機能的で生産性の高いチームといえるでしょう。

■結果的に得られる「仲のよさ」

 学生時代に部活動の経験がある人なら、そのときのことを思い出してみてください。部活では、仲よくするための時間といったものは、通常まったく設けません。それでも、一緒につらい練習を乗り越えていったときに、結果的に、部活の仲間とは誰よりも仲がいい関係になったのではないでしょうか?

 たとえば甲子園の常連校など強いスポーツチームでも、監督は選手たちに「仲よくしろ」という指導などしません。しかし、個々の選手が目標に向かって努力し、切磋琢磨する結果、自然とチームの絆が深まっていきます。

 スポーツと会社は違うという意見もありますが、「目的をもって集合し、一人ひとりが役割・責任をまっとうすることで競争に勝つ」という意味では、スポーツのチームも会社も同じ組織です。会社でとるべき態度や行動についても、ある程度参考になるはずです。

 このように、結果と「和」の関係では、結果が先で和は「結果のあと」にできるものです。仲のいい組織で働くことをそもそもの目的にせず、むしろ自分が結果を出すことで、チームの仲をよくすることをめざすようにしてください。

この対応が正しい
 1日の大半をすごす職場ですから、人間関係はよいほうがいい。でも、「和」で目的が達成されるわけではありませんよね。ギスギスしているように見えるのも、真剣に職責をまっとうしようとしている証拠なのかも……。自分の責任に集中し、成果を得ることで和が生まれるのだと考えるようにします。

<第6回に続く>