「伸びる新人は、他部署の上司や先輩には仕事の相談をしない」『伸びる新人は「これ」をやらない!』⑧

ビジネス

公開日:2019/9/27

 近年のマネジメント論の主流を、真っ向否定するスーパードライなマネジメント手法「識学」に則った新入社員のための仕事術本です。

『伸びる新人は「これ」をやらない!』(冨樫篤史:著、安藤広大:監修/すばる舎)

\よくある誤解/
「業務で困ったら、よく話を聞いてくれる隣の営業部の課長に相談します。参考になることはたくさんあります」
「説明下手な上司より、伝え方がうまい人から聞いたほうが身につきますね。偉そうに聞こえるかもしれませんが、“適材適所に相談する”という感じです」

■その相談相手は、あなたの成長や成果に責任のある人物か?

 社内にはさまざまなタイプの先輩や上司がいます。「ほかの部署の上司は話を聞いてくれるのに」とか、「○○部の○○課長は親身にアドバイスしてくれる」などと、仕事や悩み相談の〝駆け込み寺〟のようになっている人もいます。共通しているのは、とにかく「よく話を聞いてくれる」「優しい」「目線を合わせてくれる」といったところでしょう。

 しかしながら、これら他部署の人への相談は、内容やアドバイスの受けとり方によっては、新人の皆さんが損をしてしまうケースがありますから、要注意です。伸びる新人は、相談相手も間違わないのです。

 評価者である上司は、「新人であるあなたに何を求めるか」を決めることができます。同時に、その何かを求めた結果である「あなたの行動」についても、その善悪を判断する機能・権限をもっています。この機能や権限は、あなたの直属の上司にしかありません。

 そしてさらに、あなたの行動の優先順位を決める機能も、直属の上司にしかありません。

 要するに、会社であなたがどういう行動をとればよいか、何を優先すればよいかを決定できるのは直属の上司だけだということです。

 それなのに、たとえば普段から親しい隣の部署の上司に、「こういうやり方がいいと思うんですけど、どうでしょうか?」と聞いてアドバイスを受け、その助言を活かして実行
したとしたら、どうなるでしょうか?

■アドバイスが間違っていたら大問題に

 特に悲惨なのは、そのアドバイスが間違っていたときです。手法そのものは間違っていなくても、優先順位を間違えていることもあります。

 あなたがアドバイスどおりに実行して失敗しても、アドバイスしてくれた隣の部署の上司は、あなたの成長や成果に責任を負ってくれません。そのとき、失敗の責任をとるのはあなただけです。

 本来であれば、新人の失敗の責任は直属の上司がとるのが組織のルールです。しかし、この場合には新人が勝手に他部署の上司にアドバイスを求め、それに沿って行動した結果、失敗しています。直属の上司の預かり知らぬところで起きたことですから、失敗の責任を新人がすべて負うことになっても何の不思議もありません。

■成功した場合でも問題が起こる

 また、たとえ他部署の上司や先輩社員のアドバイスに沿って行動した結果、首尾よく成功したとしても、その成功は直属の上司が考えていた“成功”とは方向性が違っている可能性があります。直属の上司からの評価は、必ずしも期待したような高評価とはならないかもしれません。

 さらに、ときには上司は、あえて失敗させることで部下を成長させようとすることがあります。そのとき、他部署の人からのアドバイスで変に成功してしまうと、そうした成長もできなくなります。

 上司同士の間に無用な緊張関係を生じることさえあるでしょう。

 新人の皆さんは、そのようなリスクも考慮して、特に仕事上の相談は他部署の上司や先輩社員ではなく、常に直属の上司に相談すべきなのだと肝に銘じてください。

 そもそも「責任と権限」という視点で考えると、「責任を負わなくてもよい状況で、権限を行使する状態」は一番気持ちがいい状態です。SNS上での発言が過激になりがちなのも、この責任のないところでの権限行使であることが理由の一つでしょう。

 皆さんの話を聞いてくれる隣の部署の上司は、まさにこの状態なのです。アドバイスをして尊敬の念をもたれたり、「よい人だ」と好かれたり頼られたりする。そのような心理的な〝報酬〟を得て、しかも極論すると新人の皆さんがどうなっても責任がないとしたら、これほど楽しいことはありません。

 そうした無責任な立場から発せられるアドバイスは危険なので、新人としては最初からそのような立場の人に助言を求めるべきではないのです。 

■気持ちをラクにするためだけならいいが……

 なお、ここでいう相談の中身は業務そのものに関することです。仕事に対する心得など、相談しても問題解決にならないようなことではありません。

「自分の気持ちをラクにするため」とか「皆同じ悩みをもっていることをただ確認するため」に、同僚や他部署の人に相談することまでは否定しません。

 ただし、そのような相談が現実的な問題解決にはならないことは、あらかじめしっかり認識しておく必要があります。

この対応が正しい
 自分にとって気持ちのよい、聞こえのよい答え・アドバイスを提示してくれる人に相談しがちでした。しかし、相談する相手は結果については責任を負っていないこともあります。これからは、直属の上司に相談しないと解決できない問題を、ほかの人にもち込まないように注意します。

<第9回に続く>