『SEX and the CITY』で結婚式場の舞台になった!「ニューヨーク公共図書館」『死ぬまでに行きたい世界の図書館』①

文芸・カルチャー

更新日:2019/10/28

 はるか昔の出来事から未来まで、文化や歴史、技術など人類の叡智がぎっしりと詰まっている図書館。ありとあらゆる地域に点在する図書館はそれぞれの地域の文化の影響を色濃く受け、重厚な雰囲気、幻想的で煌びやかな空間、モダンなもの、アジアンテイストなものなど私たちの美意識を刺激してくれます。この本を見るだけで素敵な図書館をめぐる旅へと出ることができます。知識の宝庫、感動と空想に出会えるステキな空間へいざ。

『死ぬまでに行きたい世界の図書館』(笠倉出版社)

アメリカ(ニューヨーク)
ニューヨーク公共図書館

あらゆる庶民に開かれた格調高きパブリックスペース

完成年数/1911年 収蔵数/1500万点(分館との総数は5300万点)

格式と公共性を兼ね備えた優美で幻想的な学びの場

 まるで映画のために造られたセットのような、幻想的で煌びやかな空間。ここは魔法使いが通う学校でも、貴族の舞踏会が行なわれるダンスホールでもなく、誰もが利用できる公共図書館の閲覧室なのです。

“庶民のための図書館設立”という理念のもとに建てられたニューヨーク公共図書館(New York Public Library)は、その名の通り〝公共〟の図書館です。「Public」という単語が「公立」ではなく「公共」と訳されることには理由があります。実はここ「ニューヨーク」という名を冠してはいるものの、設置主体は市ではなく独立法人で、財政基盤は民間からの寄付やイベントの収益で成り立っています。もちろん利用は無料。まさに大衆に開かれた公共の図書館なのです。

 ヨーロッパ古典主義の流れを汲むボザール様式で設計された建物は、様々な建築物がひしめくニューヨークにおいても一際目を引く荘厳さで、それ自体が観光名所となっています。内装だけで4年半もの歳月を費やしたという館内は、柱や窓だけでなく、椅子や机までもが重厚さに満ち溢れており、格式の高さが否応なく感じられるでしょう。

ACCESS
成田空港からアメリカのジョン・F・ケネディ国際空港まで、直行便で約14時間。空港から図書館までが約30km。車で40分程の距離。成田空港からニューアーク・リバティー国際空港を利用の場合、直行便で約13時間。空港から図書館までは同じく車で40分程かかる。

図書館・書店詳細
TEL:+1 917 275 6975 入場料:無料
開館時間:月・木~土10:00~18:00、火~水10:00~20:00、
日13:00~17:00 /一部祝日休館

ボザール様式の建物。二体のライオン像は、映画にも出演した。

美しいアーチ型の天井からは、銅製のランプが吊るされている。

落ち着いた雰囲気漂う閲覧室。優雅な時間を過ごせる空間。

棚の細部にまでこだわりが見られる。開館当初は100万冊もの蔵書が納められていた。

図書館を囲むように高層ビル群が立ち並び、人が行き交っている。

近場に寄り道
1キロほど歩いた先には〝モダンアートの殿堂〟と称されるニューヨーク近代美術館(MoMA)がある。

実際に結婚式が挙げられる映画セットのような図書館

 アメリカにおける優秀なテレビ番組に送られるエミー賞を7度、ハリウッド外国人映画記者協会の会員投票によって選定されるゴールデングローブ賞を8度も受賞するなど、単なるブームを超えて社会現象にまで発展した『SEX and the CITY』。30代独身女性4人の日常をコミカルに描いた同作品は、1998年から2004年にかけて全6シーズンのテレビドラマを放送。2008年と2010年には映画版が公開されました。

 映画の中で最も印象的なシーンのひとつである、主人公キャリー・ブラッドショーとミスター・ビッグの結婚式シーンは、なんとニューヨーク公共図書館で撮影されました。あの荘厳かつ華麗な結婚式会場は、映画のために造られたセットではなく、本物の図書館だったのです。しかも、この図書館では映画の撮影だけでなく、実際にも結婚式が挙げられるとのこと。まさに映画のような結婚式が実現できる場所なのです。

 綿密に造られたセット以上に美しいこの図書館では、他にも『ティファニーで朝食を』や『デイ・アフター・トゥモロー』、『ゴースト・バスターズ』など、数々の映画作品が撮影されています。

キャリーのウエディング!

大ヒットを収めた映画『SEX and the CITY』。サラ・ジェシカ・パーカー演じる主人公のキャリー・ブラッドショーは、新聞紙上で『SEX and the CITY』という記事を執筆するコラムニスト。自分や友人の恋愛をネタにしてコラムを書き続ける彼女は、ある時、ニューヨーク公共図書館の美しい階段を見て、ここで式を挙げようと決心したのです。壮麗な館内で、少々奇抜な緑色の髪飾りをつけ、純白のウエディングドレス姿のキャリーが、恋人のミスター・ビッグを待つシーンはファンの間で名場面として語り継がれています。

<第2回に続く>