結婚願望は強いけど、恋愛が続かない「 普通に結婚したいだけなのに…」/『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』⑥

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公開日:2020/2/1

女の生き方に正解なし! 恋愛、結婚、キャリア、子作り、不倫…。どっちの道を進んでも、どっちも案外つらいもの。A子とB美、どっちが幸せ? 生き抜くためのヒントが見つかる、女たちのリアルな本音対決!

『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』(鈴木涼美/マガジンハウス)

 2年のフリー期間を経て、その後は一度、損保のエリートコースにいる彼と付き合い、同棲の真似事もしてみたが、1年半ほどたったら、やはり情熱が薄れた。

「嫌いっていうわけじゃないけど、どうしてもこの人がいいって思ってたのがなんでかわかんなくなっちゃうんだよね。損保の彼氏は特に、別に顔が好きだったわけでもないし、すごい趣味が合うわけでもなくて、でも出会った時はビビビって感じで好きになって、最初は向こうに彼女いたけど、頑張って落として奪って、嫉妬してめっちゃ泣いたりとか。超好きだったような気がするんだけど、その情熱、どこ行った? って感じ。そのあとすぐに、国交省の事務官の人と付き合ったけど、その人も最初は超振り回されて、なかなか会えなくても好きって思ってたんだけど、2年付き合って、相変わらず忙しくて、別にこんな忙しい人に固執する必要ないんじゃないかと」

 結婚願望は結構強い。ただ、現実的に結婚を見据えて、計画的に恋に落ちることができるタイプではない。30歳を過ぎた頃から、当然のように親や親戚に心配され、また周囲の友人からも、彼女が結婚していないことを意外がるような声をかけられるようになった。

「30代で独身だと、ポリシーとか仕事命みたいなキャラとか求められない? いや、正直、あんまり可愛くない人だと売れ残っちゃったのかな、みたいな感じで気を使われるのかもしれないけど、そうじゃなければ、なんで結婚しないの? って不思議がられる。で、そのうち仕事好きなんだねって勝手に想像される。別に、今の仕事を一生やるほどやりがいのあるものだとか思ってないけど、普通に好きな人と付き合って、好きじゃなくなったら別れて、っていうの繰り返してたら結婚っていう状態に落ち着かないじゃん」

 

 昨年は、仲の良い大学の友人とウエディングフェアを巡ったり、若干抵抗を感じながら初めて占いに行ったりもした。別に深刻に悩んでいるわけでもないし、出会いがないだとか、彼氏ができないだとかいう事情もないため、婚活に精を出す気にはなれない。20代の頃に比べれば条件の合う人との出会いは限られるとはいえ、それなりの数の独身男性と毎月知り合うし、ちょこちょこ恋愛関係になる人もいる。

「逆に出会いなんてない方がもっと焦って結婚に向けて努力とかするのかな? というか、別に妥協したくないとか理想が高いとかじゃなくて、普通に結婚したいのに、具体的なイメージが全然わかないんだよね」

 巷(ちまた)に溢れるのはマッチングサイトや婚活街コンなど、出会いの創出や、逆にお一人様の老後的な仕事人間の生き様白書で、どれも彼女にとって必要な情報ではない。今の彼氏は広告代理店の1歳年下の独身で、向こうに結婚する気がないわけではないようだが、彼が本腰を入れて結婚を考えるようになる頃には、自分の方は若干冷めてきているのではないか、という緩やかな絶望とともに付き合っている。なまじ学習能力があるだけに身動きが取れなくなるのは大人の宿命かもしれないが、それでも現実的なお見合いや婚活で条件だけを頼りに結婚なんてするには、彼女の恋愛欲は純粋すぎる。

「お見合いとかで結婚する人って、風俗嬢ばりに割り切ってないとセックスできなくない?」

 謎な名言を発して、彼女の35歳になる年は幕を開けた。

<第7回に続く>