妻のブラジャーとパンティ「愛しているから絶対に脱がない」/『ざんねんな万葉集』⑧

文芸・カルチャー

2020/2/1

日本人は1,300年前からダメダメで美しかった…!
新元号「令和」の出典となったことであらためて注目を集めた万葉集。その収録歌数は、日本最大の4,516首!
中にはイマイチな歌もあって、カスな奴らが身勝手なイタい歌を詠んでいたりするのです。そんな万葉集から特にざんねんな51首を選抜。愛すべきダメ人間たちの歌に、思わずクスッと笑ってしまうはず!

『ざんねんな万葉集』(岡本梨奈:著、雪路凹子:イラスト/飛鳥新社)

妻の下着も汚れてきた 旅も長くなったなぁ

 そんな目で見ないでくれ。確かに俺は、ブラジャーを着けて、パンティを履いている。

 まぁきみの目には、俺は変質者として映っているのだろう。

 違う。俺はただの愛妻家だ。

「これ、私だと思って、身に着けておいてね」

 妻はそう言って、ブラジャーとパンティをくれたんだ。どんな思いで、俺にこの下着を託したか、お前にわかるか?

 ……しかし、だいぶ汚れてしまった。旅も長くなったなぁ。

 どんなにボロボロになっても、俺はこの下着を脱がないぜ。俺は常に妻を感じていたい。

 死ぬ時は一緒だ。

下着を替えない男
しかし…それは愛ゆえになのです

三六六七 作者未詳(男)

原文

和我多妣波 比左思久安良思
許能安我家流
伊毛我許呂母能
阿可都久見礼婆

和歌

我(わ)が旅は 久しくあらし
この我(あ)が着(け)る
妹(いも)が衣(ころも)の
垢(あか)付く見れば

現代訳

私の旅は 長くなったらしい この私が着ている 妻の下着が 垢で汚れたのを見ると

解説

 最後に変質者のようなものをすみません。イラストはもちろんデフォルメです(雪路先生、こんな注文をご快諾くださりありがとうございました)。現代の女性の下着を、男性が身に着けると、こういう変態チックになりますよね。ですが、当時の下着は、男女の区別はほとんどなく、同じような肌着を身に着けていたと考えられます。このように、離れ離れになるときに、男女が再会する日まで、お互いに肌着を交換して着用したり、持ち続けたりしていました。

 この詠み手も、新羅へ出発する際、妻と下着を交換して着用しました。天候などで予定が大幅に遅れ、思わぬ長旅になったので、その下着がだいぶ汚れて垢もついたようです(もともと3か月の予定なので、予定通りでもかなり汚いはず)。衛生的にも、ざんねんなことになっていますよね。それでも着替えないのです。

 離れていても妻をそばに感じられますし、お守りのようなものだったのでは。無事に帰国できていたならよいですね。とっくに着替えた妻に「くっさ!」と言われなかったことをお祈り申し上げます。

用語

あらし:「あるらし」の略。

着(け)る:カ行上一段活用動詞「着(き)る」の連用形「着(き)」に、状態・存続を表す「あり」がついた「着(け)り」の連体形。

続きは本書でお楽しみください。