遺言書のメリットと「自筆証書遺言」の書き方/『終活ねっと式 マンガでわかる「終活」』③

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公開日:2020/2/28

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遺言書のメリットと「自筆証書遺言」の書き方

 資格を有する相続人が複数いる場合、遺産相続の分割割合は法律で規定されていますが、遺言書に希望の相続の配分を記すことで、遺言者の要望に沿った相続も行うことができます。また、相続人にあたらない親族への相続も可能となります。たとえば、長男の妻などは相続人にあたりませんが、遺言書に記すことで相続の分配が可能になります。

 そのための遺言書には3つの種類があります。そのなかでも、「自筆証書遺言」は費用がかからず、自分で書くだけでいつでも作成できるため、もっともよく使われる遺言書です。実際に書く際のポイントは、以下の通りです。

日付や遺言の内容、署名まですべて自書する

 自筆証書遺言は、基本的に遺言者が遺言内容の全文、日付および氏名を書面に手書きして、これに印を押さなければなりません。ただし2018年の法改正により、相続財産の目録を別紙で添付する場合、その目録だけは自書でなく、パソコン等で出力したものでもよくなりました。

記載内容は具体的かつ詳細に書く

 相続財産が不動産であれば、所在地、地番、地目地積までを書き、預貯金であれば、金融機関の口座情報などを詳細に書く必要があります。

証人がいらないため、内容を秘密にできる

 遺言者の没後、自筆証書遺言がある場合、必ず家庭裁判所で「検認(けんにん)」を受ける必要があります。自筆証書遺言は証人を立てずに遺言書を作成し封印することができるため、検認まで自分以外の人に内容を秘密にすることができます。ただし、第三者の保証やチェックがない分、不満を持つ相続人から偽造を疑われたり、記載ミスによって無効になったりするリスクがあります。




「公正証書遺言」「秘密証書遺言」とは?

●公正証書遺言

 自筆証書遺言は手間や費用をかけずに作成でき、他者に内容を知られずにすみますが、「書式を間違えると無効」「相続人によって改竄(かいざん)されるおそれがある」というデメリットがあります。

 そのデメリットを解決できるのが、公証役場で作成する「公正証書遺言」です。遺言書を公証人が作成し、公証役場に原本が保管されるため、書式の不備や改竄のおそれがありません。

 手続きは以下の通りです。まず、遺言者は2名以上の証人を用意し、証人の立ち会いのもと、公証人の前で自身の口頭(通訳人による通訳含む)または自分で書いた書面で遺言の内容を伝えます。それを公証人が遺言として筆記し、記載内容を遺言者と証人に読み聞かせ、各自が署名・押印して承認します。公正証書遺言の正本と謄本(とうほん)が遺言者に渡され、原本は公証役場に保管されます。

 かなりの手間と相続額に応じた費用がかかりますが、公正証書遺言は家庭裁判所の検認が要らないなどのメリットもあります。ただし、公正証書遺言の存在を遺族がわかるようにしておかないと、気づかれないまま相続手続きされてしまうケースがあるため、注意が必要です。

秘密証書遺言

 遺言の内容を明かさずに封印した遺言書を、公証人と証人が証明する「秘密証書遺言」という制度もあります。作成日は公証役場に記録され、故人が書いた本物の遺言であることは証明できます。しかし、記載事項の証明はしないので、書式の不備によって無効となるリスクがあります。また、公証役場で保管せずに持ち帰るため、紛失や盗難のリスクも残ります。


<第4回に続く>