「哲学シンキング」を使って問題の“核”を突きとめよう/『哲学シンキング』④

ビジネス

公開日:2020/3/21

今後5年10年のビジネスは“問題解決型”の能力より、“課題発見型”の能力が重視される時代になる――。次の課題を見極める力を高め、世界のトップ人材に求められる新時代型の能力を身につけるための思考メソッド「哲学シンキング」を紹介します。

『「課題発見」の究極ツール 哲学シンキング 「1つの問い」が「100の成果」に直結する』(吉田幸司/マガジンハウス)

和菓子屋の危機を救え!


 さあ、さっそくこの章からは、具体的にどういう状況で「哲学シンキング」を使って課題設定し、問題が解決するか、わかりやすくストーリーでご説明していきます。

 みなさんの職場や身近にいるひとたちを想像しながら読むと、より効果的ですよ。

 さてさて、ある町に住む家族になにか大変なことが起こりそうな予感……。

* * *

 日本のどこかにある小さな町に、小さな和菓子屋がありました。

 この和菓子屋のおばあちゃんは、近所でも評判の人気者で、おばあちゃんと話がしたくて、和菓子を買いに来るお客さんもいるくらいです。

 孫の勘太くんも、そんなおばあちゃんのファンの1人。今日も和菓子を食べに、自宅から歩いて10分のおばあちゃんのお店にやってきました。

「おばあちゃん、今日も遊びに来たよ。もちもち桜餅ちょうだい」

 いつものように大きな声で言ったのですが、どうもおばあちゃんの元気がありません。

「いらっしゃい、勘ちゃん。でも、ごめんね、今日は、もちもち桜餅ないのよ」

「ない? どうして? こんな昼間に売り切れちゃったの?」

 勘太くんは不思議そうにたずねました。

 一瞬、ためらって黙っていたおばあちゃんが「じつはね……」と口を開くと、なんでも、近所に最近できた巨大スーパーのなかに、テレビやインターネットで話題の和菓子屋ができたとのこと。たちまち町のひとたちのあいだで大評判。

 そのせいなのかおばあちゃんのお店の客足が遠のいてしまい、この2週間、もちもち桜餅が売れ残るばかりだから、今日はつくっていないのだと言います。

「こんな状況が続くとしたら、このお店も、たたまないといけないかもしれないねぇ」

 幼いころから、おばあちゃんもおばあちゃんの和菓子も大好きな勘太くん。

 この話を聞いて胸が苦しくなり、どうにかして、おばあちゃんのお店を救いたいと思いました。ところが、勘太くんには、どうやったらお店を救えるのかわからないばかりか、どこから考えたらいいかさえわかりません。何が問題なのか、どんな問題が起きるのか。

「いったいどうしたらいいんだろう? お店の経営のことはよくわからないし……。そういえば、お父さんが『ビジネスに使える哲学シンキング』って雑誌を読んでたなぁ」

 自宅に戻った勘太くんは、リビングに置いてあった雑誌を自分の部屋に持っていき、さっそく、読みはじめました。

テーマ1 「本質的な課題をどうやって突きとめるか?」

哲学シンキングがこんなときに使えます!

▶問題が起こったとき、何が本質的な課題なのか特定する(課題発見・設定)
▶よりよい解決法を探るため、創造的に考える(目標設定)
▶何をしたいのか、何をすべきか/すべきでないのか、意味や価値を構想する
▶日々の暮らしの中でモヤッとした問題を考えるとき、自分ひとりで頭を整理する

<第5回に続く>