「なぜその問いを抱いたのか?」を疑うことで、新たな問題が見えてくる/『哲学シンキング』⑨

ビジネス

2020/3/26

今後5年10年のビジネスは“問題解決型”の能力より、“課題発見型”の能力が重視される時代になる――。次の課題を見極める力を高め、世界のトップ人材に求められる新時代型の能力を身につけるための思考メソッド「哲学シンキング」を紹介します。

『「課題発見」の究極ツール 哲学シンキング 「1つの問い」が「100の成果」に直結する』(吉田幸司/マガジンハウス)

なぜその問いを抱いたのか

 さて、勘太くんは、まず、5と6の問いについて考えました(49ページ参照)。

「おばあちゃんの和菓子屋を救うには、どうしたらいいのか」という問いが、「大好きなおばあちゃんを救うにはどうしたらいいのか」という問いと、ほんとうに同じかどうか違和感を抱いたのです。

 勘太くんは、「救うってどういうことなのか?」「おばあちゃん(の気持ちなど)を救いたいのか? お店をつぶしたくないのか?」と自分自身に問いかけました。

 最初に浮かんだのは、「じつは……」と悲しそうにしたおばあちゃんの顔でした。

「おばあちゃんの和菓子屋を救いたい」と思ったのも、元気がないおばあちゃんに笑顔を取り戻したいからです。

 そのときは、おばあちゃんを救うことは、和菓子屋の危機を救うことに結びついていると感じられました。

 大切にしてきた和菓子屋のお客さんが減少し、このままだと店をたたまないといけないということが、おばあちゃんが悲しそうにしている理由だと考えたからです。

「だけどそれは、ほんとうにそうなのかな? ほかにもなにか理由があるのかな?」

 こんなふうに「なぜ自分はその問いを抱いたのか」を反省してみることは、哲学シンキングでとても大切です。そして、自分の思い込みを批判的に考え直してみたり、別の理由を探ってみたりすることで、思いもよらなかった新しい視点が得られることもあるでしょう。

 こういった場合には、問いに対するさらなる問いを立ててみたり、いくつかのケースに分けてみたりします。

 たとえば、「なぜ、おばあちゃんは悲しそうな表情をしたのか?」という新たな問いを立てて、次のように場合分けをしてみます。

 1 人気商品だった「もちもち桜餅」が売れなくなったから
 2 大好きなお客さんたちが、お店に来てくれなくなったから
 3 長年続けてきた和菓子屋をたたまないといけなくなるかもしれないから
 4 孫のぼくに、「もちもち桜餅」を食べさせてあげられなかったから

 場合分けには、すべてをくみつくせる場合と、そうでない場合があります。

 たとえば、あるお客さんが、お店の人気商品である「もちもち桜餅」と「あんこ玉」をいっしょに買うか買わないかの場合分けは、次の4つでくみつくされます。

 ① もちもち桜餅とあんこ玉を買うケース
 ② もちもち桜餅だけ買うケース
 ③ あんこ玉だけ買うケース
 ④ どちらも買わないケース

 でも、「おばあちゃんが悲しい顔をした理由」のような「理由」を問う問題には、完全にくみつくせないことがたくさんあります。今回の場合も先にあげた4つのケース以外に、なにかほかの理由があるかもしれません。

「もしかしたら、おばあちゃんにしかわからない理由がありそうかな」

 その場合には、あとで思いついたらつけ足すとして、その段階で思いつく範囲で、可能なかぎり箇条書きにしていきます。

「おばあちゃんは、ぼくをあざむいて悲しい顔をしたのでは?」など、無理に問いをひねり出す必要もありません。

 近代フランスの哲学者デカルトは、「真なるもの」を求めて、目の前に見えているものや「2+3=5」といった足し算さえも、疑問に付しました。これは、あくまでも「方法」として、いったん疑ってみただけなので、「方法的懐疑」と呼ばれますが、あまりに疑いすぎても、現実から離れすぎてしまいます。

 さて、仮に、おばあちゃんが悲しそうな表情を見せた理由を、62ページの1~4のケースに分けてみたとき、「お店をつぶしたくないから、悲しい表情をした」と直接のつながりがあるのは、1~3でしょう。もっと厳密にいえば、直接のつながりがあるのは、3だけかもしれません。

 一方、もし1~3は関係がなく、4のみが原因だった場合は、お店をつぶさないことは、おばあちゃんを悲しませないことに、直接つながらないかもしれません。

 仮にこの場合だったら、「おばあちゃんの和菓子屋を救うには、どうしたらいいのか?」という課題の解決は、直接的には、売り上げアップではないことになります。

「……あれ? 売り上げアップが解決策ではないかもしれない?」

 なんだか勘太くんの考察は、予想もつかなかったところに広がっています。

続きは本書でお楽しみください。