のど筋トレをはじめる前に…注意すべきポイントとは?/『声筋のすごい力』④

健康・美容

公開日:2020/3/25

最近、つまずくことが増えていませんか? 実はそれ、喉の筋肉=声筋の衰えが原因かもしれません。来たる人生100年時代、なるべく健康寿命を延ばすためには、声筋を鍛えることが大事です。誰でも簡単に始められる「声筋トレ」の方法をご紹介します!

『声の専門医だから知っている 声筋のすごい力 – こけない 老けない よろめかない -』(渡邊雄介/ワニブックス)

「改善可能な部分」に筋トレで働きかける

 ここから、のどを鍛える筋トレの具体的な方法をご紹介していきます。

 初めに、「そもそもなぜ声筋トレが必要なのか」というところから、おさらいをしつつお話ししていきましょう。

 人間の体は、誰でも老化をしていきます。「まったく老化しないようにすること」は不可能ですが、老化が進行するスピードを遅らせることは、訓練次第で誰にでも可能です。

 特に、筋肉の老化防止については訓練が有効です。骨などを鍛えることは難しいもの。ですが、筋肉なら努力次第で老化を遅らせたり、よみがえらせたりできるという事実は、大いに希望が持てるところでしょう。

 声筋も、その名の通り、“筋肉”です。積極的にアプローチをしていきましょう。

 ひとつ理解しておいてほしいことがあります。

 加齢による声筋の変化については、大きくふたつに分けられるという事実です。

 

①年齢を重ねることでホルモン分泌が変わり引き起こされる声筋の変化
→改善不可能、元に戻らない(不可逆的)

②長年の疲労による、声筋の変化
→改善可能、元に戻る(可逆的)

 

 ①のホルモン分泌の結果、起こる変化については、残念ながら対策の立てようがありません。けれども②の疲労によって起こる変化については、努力次第で回復させることができるのです。

 とはいえ、このふたつの変化にはっきりとした境目は存在しません。ですから、②の改善可能な部分に働きかけるトレーニングやケアは、決して無駄にはなりません。

 ずっと続けていただくことで、必ずプラスの影響をもたらしてくれます。

 

 私たちは、老いから逃れることはできません。

 けれども「改善可能な部分に、できる限りアプローチする」という姿勢が重要です。

 治療の最前線にいる医師として、患者さんたちから日々教えられること。

 それは、リハビリなどの現場で医療者の提案を信頼し、適切に続けられた方ほど、目覚ましい結果を得られているという事実です。ご自身が予想していた以上にのどの状態が回復したり、医療者の想定をはるかに上回る結果を得られたりすることが多いのです。

 もちろん、頑張りすぎは禁物です。無理せず「いい塩梅(加減)」でトレーニングを楽しんでいきたいものです。では一体どうすれば「改善可能な部分」に、効率よく働きかけることができるのか、考えてみましょう。

 

 ひとつ目は、無理なダイエットは避けるという原則です。

 年齢を経てからの急激なダイエットには、健康面の危険がつきまといます。

 全身の健康のため、体重をほどよく適正に保つことは重要です。中高年の方なら、メタボリックシンドロームなど生活習慣病予防のために主治医からダイエットをすすめられている方も多いことでしょう。

 けれども、体重減少だけにとらわれると、筋肉量の減少につながりかねません。

 

 急に体重が減ると、脂肪よりも先に筋肉からやせてしまうので、声筋(声帯)も連動してやせていきます。声筋がやせすぎると、筋量が減り、力を出すことが余計に難しくなってしまいます。「やせること」よりもむしろ、栄養をよく摂ること、体を動かすこと、筋肉を落とさないことを心に留めて、長期計画で行いましょう。筋肉量が少なすぎると、筋トレどころではなくなってしまいます。

 

 ふたつ目は、普段からよい姿勢でいることです。筋トレさえ頑張っていれば、平素の姿勢は乱れていてもいい……なんてことはありません。姿勢の崩れは声筋の衰えどころか、万病のもと。筋トレを行う大前提として、普段の姿勢を正していきましょう。

 よく言われることですが、よい姿勢とは、正面から見たときに両肩の高さが左右均等で、体の正中線と垂直に交差している状態です。

 また、悪い姿勢の代表格は、猫背です。猫背になると、胸郭もせばまってしまい、よい呼吸がしにくくなります。胸を張ることを心がけてください。

 これらのルールは、座っているときにも、立っているときにも当てはまります。

 さあ、いよいよ「声筋トレーニング」実践編のスタートです!

※「血圧が高い」など循環器疾患がある方は、主治医と相談して行ってください。

<第5回に続く>