「まつもとあつしのそれゆけ! 電子書籍」第11回 おすすめ電子書籍端末は?

2012/6/7

電子書籍にまつわる疑問・質問を、電子書籍・ITに詳しいまつもとあつし先生がわかりやすく回答! 教えて、まつもと先生!




ちば :今回は「まつもとさんがおすすめの電子書籍端末」について伺っていきます。

まつもと :ここのところ重たい話題が続きましたからね。今回はちょっと気が楽だな。

ちば :来月はTIBF(東京国際ブックフェア)が開かれます。そしたら忙しくなりますよ。

まつもと :新しい端末とかサービスの発表があるでしょうからね。電子書籍の世界も、あと気温も熱くなるなあ・・・。

端末と切っても切れない電子書店とラインナップ

ちば :でもホントにこれまで沢山の電子書籍端末が登場しましたよね。この連載でも、GALAPAGOSとかSONYリーダー、Kindleなどを取り上げてきました。

まつもと :電子書籍を扱う電子書店も数多く生まれましたし、フォーマットも複数あり、それぞれに対応する端末もそれこそスマートフォンまで含めると様々で、正直「どれを選んだら良いのか分からない」というのが多くのユーザーの本音だと思いますね。処分しない限り無くならない紙の本と違って、対応する端末が無くなってしまったら折角買った本が将来読めなくなる、という心配もまだまだ根強いはずです。

ちば :ふーむ……、そしたらどうしたら良いんでしょう?

まつもと :僕が昨年出した「スマート読書入門」(技術評論社)では、自炊をおすすめしていました。本を裁断してスキャンし、PDFにする、いわば電子書籍の自作ですね。こんな感じです。

ちば :えー……、大変そう。

まつもと :そういうと思いました。最近では紀伊國屋書店が展開するKinoppyなど、一度購入したら、複数の端末で読める仕組みの電子書店も出てきました。

ちば :なるほど。これなら一度買った本を将来にわたって読み続けられそうですね。良かった!

まつもと :ふっ……。

ちば :まつもとさん、いま鼻で笑いましたよね?

まつもと :いや、次に問題になるのが電子書籍のラインナップ数ということを言おうとしてつい。

ちば :あ、そうか。たしかにこの連載でも繰り返し「タイトル数が少ない」ということを指摘していましたね。

まつもと :そこは、出版デジタル機構のパブリッジに期待したいところです。たしかに、全体像が見えない部分もあるのですが、「5年後に100万タイトル」という目標には期待したいところですね。

ちば :はやく自炊しなくてもすむ世界になってほしい!

まつもと :印刷する前はデジタルデータであることがほとんどなのに、紙に印刷したものをみんながバラバラにして、またスキャンしているというのはどう考えても非効率だし、環境にも優しくないですからね。

電子書籍端末選びのポイントとは?

ちば :自炊や電子書店については分かりました。そうしたら端末選びはどんな基準で考えて行ったらいいんですか?

まつもと :あくまで僕の主観も入りますが、本=コンテンツの観点からは以下の3点を押さえておきたいですね。

1. 対応する電子書店が多いこと、あるいは電子書店が対応する端末が豊富であること。
2. 読みたいタイトルが電子書店に存在していない可能性を考えて、「自炊したPDFを扱いやすいこと」
3. 読書メモが取りやすいこと

ちば :ふむふむ。1の対応する電子書店が多いというのは、例えばiPadとかAndroidタブレット、スマートフォンですよね。対応する電子書籍アプリや本棚アプリがたくさんあって、好きなものを選べると。

まつもと :そうですね。仮にある電子書店で欲しい本が見つからなくても、他の書店なら見つかるかもしれません。そういうときに選択肢が多い方が安心です。

ちば :電子書店が対応する端末が豊富、というのは、先々を見越してということですね。

まつもと :そう。その端末が古くなって買い換えるときにも、購入した本を引き継げるかどうかは大きなポイントになってきます。

ちば :そして、2のPDF対応は……現状はやむを得ない、という感じですか?

まつもと :自炊した電子書籍のためだけではなくて、例えば仕事で使う資料を端末に入れておいて参照したり、旅行先の観光地図を表示させたりとPDFがスムーズに表示できると何かと便利ですよ。

ちば :そっか。3の読書メモってなんですか?

まつもと :「スマート読書入門」でも強調したんですが、電子書籍を読んでいて気になったことをメモしたり、場合によってはTwitterやFacebookなどにそれを投稿したりできるかどうかが重要だと思っています。前々回、酒井邦嘉先生から「電子書籍による読書は記憶に定着しにくい」というお話しを伺って、一層これ大事だなと思いましたね。

ちば :具体的にはどんな端末だと、読書メモが取りやすいんでしょう?

まつもと :後で僕が使っているものも紹介しますが、やはりiPadやAndroidタブレットのように、読書アプリからEvernoteなどのメモアプリに素早く切り替えができるものが良いと思います。iPad版のi文庫HDというPDFや青空文庫を閲覧できるアプリでは、アプリの中でメモをとって、Evernoteと同期させることも可能なんですよ。

ちば :おお!これなら、酒井先生の仰っていた「記憶の手がかり」が電子書籍でも残していくことができそうですね。では、コンテンツの次に考えるべきは?

まつもと :まつもと:ハードウェアとしての特徴ですね。以下の4点くらいが挙げられると思います。

1. 持ち歩きやすい重さであること。
2. 持ち歩きやすく、かつ本が読みやすい大きさであること。
3. 目的に適した表示方式であること。
4. 充電を意識せずに使えるものであること。

ちば :ふむふむ。重さ、大きさは確かに大事。特に女性の場合だとバッグに入るかどうか、は重要です。

まつもと :僕は大抵いつもリュックなので多少大きくても大丈夫なのですが、このイギリスのソニーリーダーの紹介ページもハンドバッグと並べていたりしますね。

ちば :まつもとさん、リュックはモテないから止めた方が……。

まつもと :荷物が多いんですよ。腰を痛めないこと・どこでも仕事できることを優先しています。それはさておき、必ずしも小さければ良い、という訳ではないのが悩ましいところですね。

ちば :というと?

まつもと :雑誌や新聞のように写真や図版が入っている読み物の場合は、やはり大きな画面で読めた方がストレスは少なくて済みます。iPadだと、横向き画面では見開きで読めたりしますからね。そもそもカラー表示だし。

ちば :そっか……、たしかにファッション誌だとその方がいいかな。

まつもと :この話は3の表示方式にも通じるものがあります。ちょっとこの動画を見てください。

ちば :KindleとiPadの比較CMですね。たしかに晴れた屋外だとiPadはしんどいなー……。

まつもと :このCMのおもしろいのは、iPadを持った男性が「じゃ、映画を見たいときはどうするの?」と聞くと、女性の方が「Kindle Fireを買うわ」と答えるところですね。Kindle Fireが199ドル、Kindleが79ドルなので、両方買ってもiPadより安い、というオチを付けてます。

ちば :なるほど(笑)。

まつもと :まあ、実際は2台持ち歩くとかさばるし、iPadの大きな画面、豊富なアプリもまた魅力ですから、一概にその通りとは言い切れないのですけど、1つの考え方ではありますね。

ちば :最後の充電については?

まつもと :やはり電子ペーパーを採用するKindleやソニーリーダーの方が、iPadやAndroidタブレットよりも圧倒的に電力消費が少ないんです。日常毎日充電できる通勤・通学時間に使うのであればiPadでも良いとは思いますが、長い時間充電無しで読むことになる出張や旅行の際には電子ペーパーの方が安心ではあります。目も疲れにくいですからね。