“最高の相談相手”とは? 相手が本当に必要としているのはアドバイスではない…/『頑張りすぎない練習 無理せず、ほどよく、上手に休む――』⑥

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公開日:2020/4/25

「現役看護師」の女性僧侶・玉置妙憂さんが贈る人生の教科書。人づき合い、仕事、家族の介護…「頑張る」はいいけれど、「頑張りすぎ」はダメ。無理せず、ほどよく、上手に休む「頑張りすぎない考え方&実践法」満載の心がラクになる生き方をまとめた1冊です。

『頑張りすぎない練習 無理せず、ほどよく、上手に休む――』(玉置妙憂/マガジンハウス)

相談されたら、まず「聞く」に徹する
――アドバイスをしないテクニック

 私は仕事がら、たくさんの方々から相談を受けます。そのとき、私がいちばん気をつけているのは、「相手の邪魔をしない」ということです。

 相談されると、つい“解決策”を考えてあげたくなりますよね。「こうしたらいい」とか「ああしたらいい」とか。

 でも、私はそれをしません。ひたすら聞くだけです。

 なぜなら、“答え”を持っているのはその人だけだからです。

 答えがあるとすれば、その人の中にしかありません。

 答えは、自らが自分の中から探して見つけていくものなのです。

 もちろん、「探す」という作業はたいへんです。だから多くの人は、誰かに相談したくなります。

 相談という名の「グチ」ばかりのときもあります。でも、グチを言いながら、実はその人は、自分の中にある答えを探しているのです。

 話の流れで、「あなたはどう思う?」と聞かれるときもあります。

 その場合は、「そうねぇ~」と一度受け流して、「あなたはどう思っているの?」と返します。

 どうしても自分の意見を話すシチュエーションになったら、「私だったらの話だけれど~」とあくまでもこちら側の意見で、それが答えではないという念押しをする。

 相手が本当に必要としているのは、アドバイスではありません。考えるための材料なのです。

 お釈迦さまが悟りをひらかれたとき、それを誰かに伝えようとは思いませんでした。なぜなら、お釈迦さまの経験は、お釈迦さまだけの経験だからです。

 でも、まわりの人々が放っておきませんでした。どうしてもと頼まれて、お釈迦さまはいたしかたなく仏の道を説きはじめた、というのが仏教のはじまりです。

 宗教というと、教祖さまがいて、経典があって、「神を信じなさい」というイメージがあるかと思います。しかしお釈迦さまは、それとはずいぶん違います。

「私はこういうやりかたをして悟った。あなた方も試してごらんなさい」と、お釈迦さまはお話しされました。

「信じなさい」ではなく、「自分自身でハッと気づく以外にない」と説かれたのです。

 とはいえ、ひたすら聞くだけの姿勢をとるのは、なかなか難しいことかもしれません。「善意」が邪魔をします。悩みを抱えている人から相談されたら、何とかしてあげたくなるのが人情というものです。

 ですから、相談を受けたときは「聞くに徹する時間」をあらかじめ決めてください。

 15分でも、30分でも、1時間でもかまいません。その決めた時間は、あなたからはアドバイスをせず、ひたすら相手の話を聞きます。

 こちらの意見を言いたくなるかと思いますが、そこはぐっとがまん。「うん、うん」「そうね」など、適度にあいづちをうちながら、相手の考えが整うようにうながします。

 そして、相手が自分の中で整理がつき、答えが見つかったと思ったら、アドバイスをしてもOKです。

 ただし、その場合でも、少し休憩をはさむか、日を改めるなどして、お互いにリセットした状態で意見交換するのがいいでしょう。

「話す」は、「放す」――。

 人は話すことで、もやもやしていたものが放たれていき、整理がついていきます。整理がつくと、自ずと答えにたどり着きます。

 その途中でこちらがアドバイスをしてしまうと、相手は整理ができず、答えが見えなくなるのです。その人は、また、同じように失敗したり悩んだりしてしまいます。

 自分が相談するときには、この逆です。

 相談役には、黙ってこちらの話を聞いてくれる人を選びましょう。

 バシッとした答えが返ってくる人のほうが、相談のしがいがあるような気がしますが、ちがうのです。

「ふん、ふん」と話を聞いてくれる人、あなたのまわりにいませんか?

 一見、頼りなさそうに見えますが、実は、その人こそ最高の相談相手かもしれませんよ。

<第7回に続く>