青春卓球マンガの常識を破天荒なゴリラが破壊する!! 笑撃のパワースマッシュギャグ漫画【手書きPOP付】

マンガ

公開日:2020/4/17

pingkong
『PINGKONG(ピングコング)』
(コミック・ジャクソン/小学館)

 マンガなどの商品を売り込むための紙媒体販促ツールである“POP”を交えた作品紹介連載がスタートして4回目。マンガ作品を紹介するにあたって“ゴリラ”について調べてから原稿を書き始める回が来るとは想像もつかなかった。うん、ありえない…でもありえてしまったのが今回の作品、コミック・ジャクソン先生の『PINGKONG(ピングコング)』(小学館)だ。

 主人公は双子の卓球姉妹。姉・タクミの影響で卓球を始めた妹のコトミは、やがて姉を抜き、周りからは“天才卓球少女”とまで言われるように。脚光を浴びるコトミ。だが、ふとしたことから自分に才能がないことを痛感したタクミは、人生も姿もまったく別のものに豹変してしまう…そう、ゴリラに。

 どうやったらゴリラになるんだよ!? と反射的に突っ込んでしまいたくなるようなあらすじだ。簡略にしたあらすじだけを読むと“出オチ”っぽい作品だなと思う人がいるかもしれないが、設定は破天荒ではあるものの、出オチ感はまったく感じさせない。むしろメインストーリーの裏でもきちんと物語が進行していることがこのマンガには描かれているので、それも含めておもしろい。単なる“ゴリラ覚醒作品”でないのだ。

 物語は、全日本卓球選手権大会の地区予選の第1試合から始まる。この時点で、姉のタクミは…もう、ゴリラだ。これを目にした対戦相手は当たり前ながらとんでもない違和感を持ち、でも全力で試合する。だがタクミは今ゴリラなので(笑)、自分のプレイが思い通りにうまくできない。そこで思いついたとんでもない行動を機に、その試合は白熱したパワープレイに持ち込まれる…。

 そんな白熱した試合展開で魅せるゴリラな姉とその妹の物語は、かつて幼い頃お世話になった卓球場や、甘酸っぱい恋のエピソードなど、2人が育った背景へと深掘りされいく。

 タクミが今でも一途に想う、ドイツへラケット職人として留学した幼なじみのワタルくんとの再会エピソードは、ゴリラであることを知られたくないタクミの悶絶する姿がとても切ない。しかしタクミとワタルが2人っきりでいい感じになろうとも、タクミが“ゴリラ”である以上、その展開は違和感たっぷりで可笑しい。こうやって、待ち構える障害と試練に、姉妹は“ゴリラギャグ”を交えながら向かっていく――。

 この作品で描かれる姉妹の絆はもちろんのこと、やはり“ゴリラパワーの炸裂”が最大の見せ所だ。さて、ここでようやく私が調べて得たデータが少しだけ生かされる。ゴリラの握力は平均500kg(人間の成人男性の平均は45~50kg)、パンチ力に至っては1t以上らしい(ヘビー級のボクサーは約1tという説もある)。

 物語序盤の第1試合でも、その持ち味を存分に見せてくれる。卓球界の未来を担う妹コトミのパートナーだけあって、なにも言えない卓球協会も冷や汗状態だ。この1巻では第2試合まで描かれるが、ゴリラの圧倒的パワーに対して対戦相手は“とある対策”で挑んでくる。ギャグマンガらしからぬ壮絶で熱い試合展開は、ページの隅々まで必見だ!

 姿とステータスは“ほぼゴリラ”であるタクミ。わずかに残っているはずの大事な“恋する人間少女”の部分は、最後まで守り切ることができるのだろうか? それに、人間に戻ることはできるのか? ――その行方を見守ろうではないか!

 サンデー編集部の懐の深さも感じるトンデモ卓球マンガ。ギャグと物語のラリーが続き、無事にラストを最高のスマッシュエンドで決めてほしい! どんな逆境があっても“ゴリ押し”で描き切っていただくことを切に願う。


文・手書きPOP=はりまりょう