アニメ1話の作画には30人以上が参加! 描くパートはどう分けてる?/『アニメーターの仕事がわかる本』②

アニメ

公開日:2020/4/24

アニメーターの仕事がわかる本

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出版社:
玄光社
発売日:

長時間労働で低賃金、パワハラ、作画崩壊とか怖いニュースが多すぎ…一体、どんな働き方をしているの? 社会問題にすら発展したアニメーターの働き方と現実を、人気作画監督・西位輝実の実体験と取材。アニメーターの世界を歩くための、ゆるくてシビアな業界入門書です。

『アニメーターの仕事がわかる本』(西位輝実、餅井アンナ/玄光社)

テレビアニメは大人数での分担作業

もちい:テレビアニメの1話が24分で、枚数が4,500~7,000枚……。当たり前ですけど、1人では絶対に描ききれない量ですよね?

にしー先生:そりゃあもちろん無理だよー! 何千時間とかかる仕事だし、完成するより先に心が折れちゃう。

もちい:で、ですよねー!

にしー先生:アニメーション制作っていうのは、膨大な時間と手間が必要な作業。だから現場ではたくさんの人たちが集まって、それぞれに役割を分担しながら制作を進めているんだ。とくに、キャラクターの絵を描く「作画」のパートはすごい数のアニメーターが参加しているよ。

もちい:その「作画」って、だいたい何人くらいで描いてるものなんですか?

にしー先生:うーん、スケジュールによって差はあるけど、スタッフロールに名前が載る人だけでも15~30人はいるし、会社名でまとめられて個人名が載らない人も何十人といるからなぁ。

もちい:うわあ、1話あたりでもそんなに! それだけの人数でひと続きの映像を作るって、すごく大変そう。

にしー先生:そうだね~。だから現場では24分の映像を細かく分割して、「絵コンテ」にしたものをアニメーターに配るっていうやり方で作業を進めているんだ。

もちい:24分の映像を分割? つまり、3分ごとに担当する人が変わる、みたいな?

にしー先生:おっ、惜しい! たしかに時間で区切るのは正確だよね。でも映像って水みたいに流れがあるものでしょ? 分単位で区切ると、一連の動きの途中でバツっと担当者が変わる、ってことになっちゃう。


もちい:あっ、そっか! じゃあどのタイミングで?

にしー先生:基準になるのは時間じゃなくて、映像の中身なんだ。

アニメは「シーン」と「カット」で構成される

もちい:映像の中身?

にしー先生:そう。たとえば実写のドラマなんかでも、1時間丸ごとカメラを回しっぱなし、っていうのはありえないよね。人物のいる場所が変わったり、カメラのアングルが変わったり、必ずどこかで切れ目がある。
アニメもそのタイミングを利用して分割できるんだ。

もちい:たしかに言われてみればそっちの方が自然ですね。

にしー先生:まず大きな区切りとしてあるのが「シーン」、つまり場面のことね。教室から公園みたいに、キャラクターがいる場所が変わるタイミングでシーンも切り替わる。

もちい:ふむふむ。

にしー先生:さらに、シーンをもう一段階細かく分けたものが「カット」。背景が切り替わるまでのアングル1つが1カット、って考えてもらえばいいかなー。同じ教室にいる場面でも、キャラクターを正面からとらえるアングルと、上から俯瞰してみるアングルとではカットが別になるよ。

もちい:実写の撮影でカメラが切り替わるタイミング、ってことでしょうか。

にしー先生:そういうこと! そしてこの「カット」が、作画の作業を分担するときの基本単位になるの。だいたい1話が300~350カットで構成されるから、これをみんなで分け合う。

もちい:「アングルが変わるごとに」って、かなり尺(時間の長さ)に幅が出るのでは?

にしー先生:出るよ~。決まった時間ごとにアングルが変わるわけじゃないから、カットごとに尺の長さはバラッバラなの! だから2秒で終わるカットもあれば、10秒続くカットもある。仕事を分担する基準としては不思議な単位だよね。

もちい:うーん、不思議です。じゃあ、そのカットを引き受けたアニメーターさんが、1枚1枚絵を描いていく作業をする……ということでしょうか?

にしー先生:と思いきや、あとちょっと分割するところがあるんです!
たとえば、ここにまん丸のホールケーキが置かれているとする。「ここから1/8ピースください」って言われたら、どういう順番でナイフを入れる?

もちい:えっと、まずは真ん中を横一文字に切って、それを基準に次は十字になるように切って、それがまた半分になるように切って……。

にしー先生:おっけーおっけー。そういうふうに、まずは基準になる大きなポイントを作ってから小さくしていくよね。実はね、アニメーションのカットもこれと同じ方法で切り分けられるんだ。

動きのキーとなる「原画」

もちい:ん? どういうことですか?

にしー先生:最終的な目標は、映像を1枚単位の絵まで分割することなんだけどね。ホールケーキからいきなり1ピースだけを切り取るのが大変なように、1カットの中からいきなり1枚の絵を取り出すことは難しい。
だから、まずは動きのキーポイントになる絵を何枚か作るの。「動き始め」「動き途中」「動き終わり」みたいな感じでね。

もちい:ああっ、なるほど!

にしー先生:この「動きのキーになる絵」っていうのは、キャラクターの魅力が十分に出せるように、演出的な意図を込めて描かないといけないんだ。
この絵のことを、現場では「原画」って呼ぶんだけど……聞いたことない?

もちい:あります!
「原画展」とかよくやってますよね。

にしー先生:そうそう! で、これだけだと映像としてはまだ枚数が足りなくてカクカクしちゃうから、間に入る細かい動きを埋めてあげなきゃいけない。
その仕事が「動画」で、原画の人からカットを引き継ぐ形で作業をするよ。

もちい:「キーになる絵」を描く作業と「動きの間」を描く作業は、それぞれ別の仕事なんですか?

にしー先生:その通り! 動画の人が1枚1枚の動きを補完することで、滑らかな映像が完成するんだ。これで作画パートはおしまい。厳密には原画にも動画にもまだやることがあるんだけど、大まかな説明はここまでにしておこうかな。
1話分のアニメーションがどうやって動いているか、なんとなく理解できたかな?

もちい:はい! だいぶわかった気がします。

にしー先生:おっけ~。「動画」と「原画」の役割や性質については、また後で詳しく説明するからね。

<第3回に続く>

この記事で紹介した書籍ほか

アニメーターの仕事がわかる本

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玄光社
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ISBN:
9784768312797