「映え」は完全無視!! 自分だけのために書くことで無限に広がる可能性…!/『時間をもっと大切にするための小さいノート活用術 』④

暮らし

公開日:2020/4/29

ウェブマガジン『毎日、文房具。』編集長・髙橋拓也がおすすめする世界で1番“気楽な”ノート術。スマホのように開く。そうすれば、煩雑な毎日が整理され、新たな可能性が見えてくる。小さいノートを味方につけて、“あなたの時間”を取り戻そう!

『時間をもっと大切にするための小さいノート活用術』(髙橋拓也/玄光社)

04 自分だけのために書く

 小さいノートは、誰かに見せるためのものではありません。

 SNSで、芸術的なほどに美しく綴られた個人ノートを目にすることがありますが、他人の鑑賞に耐えうるノートを作るのって、実はすごくスキルと時間を要するのです。よく、SNS疲れという言葉を耳にしますが、これは人の反応を気にするあまり、本来、自分が発信したかったことが知らずしらずのうちに歪んできてしまったり、気疲れして、何気ないリアクションに傷ついたりしてしまう、というものです。

 小さいノートは、あくまで自分のためだけのもの。ですので「映え」は、完全に無視してください。文字が汚くても、問題なし。その都度その都度で、不揃いに余白があっても構いません。人に見られるからちょっとカッコいいことを書いてみよう、なんて気張るのも、もってのほかです。その瞬間の気づきやアイデアを書き留めることが、目的なのですから。

 過剰なデコレーションは不要ですが、デコレーションは全面的にやめてストイックに徹するべし、と主張したいわけではありません。ノートをつけているうちに、1日の区切りの目印のためにシールの必要性を感じたり、付箋をつけた方が使い勝手がよいと感じることもあるかもしれません。そういう時は積極的に使いましょう。

「自分」という領域を超えた段階から、少しずつ負担が生じてきます。時間も無駄になれば、疲れてしまい、ノートから離れることになってしまいます。

 もちろん、人に見せるのがダメ、ということではありません。InstagramやFacebookなどに美しく書き綴ったノートをアップすることで満足感が上がる、そしてそれが続けるモチベーションになるという方なら、ぜひそうするべきだと思います。


 大切なのは、気楽にやれること、疲れないこと、そして書き続けることなのです

 なぜこれほど、小さいノートを使い続けることを薦めるのか。

 それは私自身が、ノートを使い続ければ続けるほどどんどん楽しくなってきたからです

 小さいノートが5冊ほど溜まった頃くらいからでしょうか。1冊を2~3週間ほどで使うので、3~4カ月の記録というわけです。積み重ねてみると、小さいなりにけっこうボリュームがある。パラパラと見返してみると、たった数カ月前のことなのに、こんなことを考えていたんだとか、こんな人に会っていたり、こんなところに行っていたんだ、という新鮮な発見もありました。会社勤めや日常生活では、そうそうドラマチックなことは起こりません。でも、小さいノートを使ってみて、何気ないことだからこそ、忘れてはいけないんだと気づいたんです

「今度あのカフェに行ってみたい」とか「○○さんからの誘いに時間が合わず、断ってしまった」とか、「展覧会をのぞいてきた」「映画館で○○時に待ち合わせ」などのメモを見返しているだけで、ひとたび過ぎ去った平凡な日々が立体的に自分の中で蘇り、慌ただしさに背中を押されるように過ごしてきたような時間に、確かなリアリティをもたらしてくれるのです。一見、取るに足らない日々の記録のように思われますが、時間をおいて見直してみれば、アイデアの萌芽のようなものも綴られていました。当時は目の前のことで精一杯になり動けなかったけれども、今なら余力もあって時間も作れる。あるいは実現するための手立てがないとすっぱり諦めてしまっていたけれど、この前、新たに出会った人の力を借りれば、何とかなるかもしれない――。何気ない人との出会いや些細な状況の変化が、ちょっと前までは不可能だと自分の中で切り捨ててしまっていたことを、可能にしてくれるかもしれません

 こんなものを見ていた。こんな場所を訪ねていた。こんな人に会っていた。

 ノートの中のあちこちに散逸している短いメモの数々が、ある瞬間ひとつに結びつき、人・モノ・コトがつながり、新たな出来事が動き出す。そんな可能性を、小さいノートはもたらしてくれていたのです

 人目を気にしないからこそ存分に、自分だけのひそかな想いや希望、日常の断片を書き留めることができます。その積み重ねは、流されがちな日々の備忘・整理になるだけではありません。自分という人間の自信にもなり、思いがけないアイデアを生み出します。

 雑多で十分。ゆるく、長く、小さいノートを続けていきましょう。

<第5回に続く>