1週間に61分も費やしている!? メールの添付ファイルを探す時間をなくすには/『ビジネスチャット時短革命』③

ビジネス

公開日:2020/5/13

新型コロナウィルスの影響が拡大する中、在宅勤務を取り入れる動きが広がっています。テレワークやリモートワークの普及により、ビジネスチャット・オンライン会議の導入を進めている企業も急増し、従来のメール中心のコミュニケーションではビジネスが円滑に進まないケースも。新たな時代を生き抜くためのビジネスチャットとオンライン会議を駆使した「新しい働き方」を指南します。

『ビジネスチャット時短革命 ―メールは時間泥棒 ― メールを48.6%減らす働き方』(越川慎司/インプレス)

何かを「探す時間」が業務を圧迫する

 社員のメール事情について調査を続けていくと、さらに興味深い事実が浮かび上がってきます。ビジネスチャットを未だ導入していない企業71社に対する調査から、社員がメールの作業中に「ファイルを探している時間」が想像以上に長いことがわかったのです。なんと1週間に平均で61分も「メールソフト上で何かを探している時間」があったというから驚きです。とはいえ前述のとおりメールの受信数が年に8%も増えており、取り扱うデータ量が増えているので、情報を探す時間が多くなるのも仕方がない面もあると思います。

1週間に61分もかける「探しモノ」とは?

 それにしても、1週間に61分も「探す時間」にあてるというのは無駄としか言えません。どうしてこんなに多くの検索時間が発生するのか詳細な原因を知るために、検索時間を生み出す理由を探ってみました。すると、多くの人が「添付ファイル」を探すために時間を費やしていることが見えてきたのです。社外の人からのメールではなく、主に社内メールに添付されていたファイルです。

 社内で複数人がかかわって資料を作成する場合、メールに添付して共有し合うことがよくありますが、次々と更新されていく資料のバージョン管理は「ファイル名の変更」で行うのが一般的です。たとえば「企画書v1」とか「企画書v2」「企画書semi-final_v2」「企画書final」「企画書final_v1」「final_v3」……といった具合です。結局どれが最新版なのかわからなくなり、古いバージョンのファイルを最新版だと勘違いして更新してしまったり、更新履歴を調べるのに時間がかかったり、最新版を探すことに時間がかかったりしてしまいます。またファイル名を変えてしまうと更新履歴を追えなくなってしまうので、1つずつファイルを開いてどこが更新されたのかを確認する作業にも時間が奪われます。

 詳しくはセクション14で後述しますが、こういったケースではファイル自体を相手に渡すのではなく、そのファイルをクラウドに置いて、その保存場所(=URL)をメンバーに共有するようにしましょう。1つのファイルで管理していくため、多数のメンバーが更新をかけても履歴は完璧に残りますし、元のバージョンに戻すことも容易です。このクラウド共有は、メールでもチャットでも必須の使い方です。

メールソフトが「人探し」に使われている

 現在のビジネスで時間を奪う「探しモノ」は、なにも「ファイル」にかぎった話ではありません。多くの人が「人」を探すことにも時間を奪われています。これは特に大企業で深刻な問題になっています。

 従業員が1,000人を超える企業71社にヒアリングしたところ、「社内の人を探す時間を短くしたい」と答える企業が68%にものぼりました。「この情報を持っている人は誰か?」「この資料を作った人と連絡をとりたい」というように、社内の人を探すために大企業では週に43分が費されていたのです。年に換算すると、37時間もの時間を費して社内の人を探しているのです。前述のとおり、これとは別にファイルなどを探す時間が毎週61分あるので、合計で年に90時間も何かを探していることになります。

 さらに調査を進めると、人を探すときに、多くの社員がメールの中から探していることもわかりました。しかしながら、メールでは差出人や宛先、本文に出てくる名前で検索することはできても、その人がどこに所属し、どのようなプロジェクトにかかわっているかまではわからないはずです。では、いったいどのようにしてメールで人探しを行っているのでしょうか?

 調査結果を見ると、メールで人を探すとき多くの社員は、まずは「この人だろう」と見当をつけたうえで、その相手に確認メールを送っているようです。それが正しいかどうかは、相手からの返答を待たないとわかりません。確認を求められた相手側は、目の前の仕事と関係のないことを尋ねられた際などは、返答が遅れたり返答しなかったりすることもあり得ます。そうなるとさらに待ち時間が増え、ここでまた「メールを見ていいただけましたか?」という世界一ムダなメールを送ったり、不在の相手に電話をかけたりという非効率の連鎖が広がっていくのです。

目的の人をピンポイントで探し出そう!

 スマートに社内の人を探すには、まず相手の属性と状況を確認してから連絡をとりましょう。詳しくはセクション11で解説しますが、多くのビジネスチャットツールでは、相手のプレゼンス(在席情報)が確認できるのですぐにコンタクトすることが可能です。また、仕事やプロジェクトのテーマごとにチャンネルが作られているので、そこから当たりをつければスマートに人を探し出せます。全員に向かってメールで「誰かこのテーマに詳しい人はいませんか?」と問いかけるよりも、ビジネスチャットツールの関連するチャンネルで「この件を知っている人いますか?」と聞いたほうが短時間で目的の人が見つかります。太平洋に釣り糸を垂らすより、釣り堀で釣り糸を垂らすほうが魚が釣れやすいのと同じですね。

<第4回に続く>