「習うより慣れろ」オンライン会議を浸透させたいなら“強制利用週間”を設けよう/『ビジネスチャット時短革命』⑨

ビジネス

公開日:2020/5/19

新型コロナウィルスの影響が拡大する中、在宅勤務を取り入れる動きが広がっています。テレワークやリモートワークの普及により、ビジネスチャット・オンライン会議の導入を進めている企業も急増し、従来のメール中心のコミュニケーションではビジネスが円滑に進まないケースも。新たな時代を生き抜くためのビジネスチャットとオンライン会議を駆使した「新しい働き方」を指南します。

『ビジネスチャット時短革命 ―メールは時間泥棒 ― メールを48.6%減らす働き方』(越川慎司/インプレス)

オンライン会議の活用で営業成績が2.3倍に!

 海外拠点や地方拠点との接続のためにビデオ会議システムを導入している企業は7割近くありますが、その企業のうち6割以上の企業が「活用されていない」もしくは「あまり活用されていない」と答えています。企業が導入しているビデオ会議システムの多くは限られた会議室だけに設置されることが多いため、どうしてもその活用頻度は低くなってしまいます。加えて、経営者が「集まって話したほうがいい」と一度でも発言してしまうと、会議システムは埃をかぶった置き物と化してしまいます。

 従来のテレビ会議システムは専用のモニターや回線を用意して行うのに対して、本書で紹介するオンラン会議はインターネット回線を介して音声や映像、資料を流します。テレビ会議システムの導入には専用端末の購入や回線設置が必要ですが、オンライン会議はダウンロード提供されているアプリやWebブラウザーがあればすぐに会議を執り行えます。音質についても、最近のオンライン会議は高音質で、従来のテレビ会議システムとまったく遜色はありません。

オンライン会議を体験する機会を提供しよう

 インターネットを通じて参加するオンライン会議サービスは、手元にあるスマートフォンやタブレットからでも付属のマイクやカメラを使って気軽に会議に参加できるので、遠隔拠点との会議だけではなく、取引先への提案や採用候補者との面談、社内向けのセミナーやトレーニングなどで広くビジネスに活用できます。

 しかしながらビジネスチャットと同様、オンライン会議も全社員への普及には時間がかかるものです。従来の対面式集合型会議という選択肢が残っていると、誰しもどうしてもそちらの「慣れた使い方」を選択してしまうものです。「オンライン会議はむずかしそう」という先入観が心理的なハードルを高めてしまうのでしょう。あるコンサルティング会社でも、都内で分散するメンバー同士の定例会議でオンライン会議を使うように情報システム部門から指示されたにもかかわらず、3か月後には元の集合型の会議に戻してしまいました。詳しい話を聞くと、部下はオンライン会議の導入で生産性が上がり、使い勝手にも満足していましたが、上司が(たった一度だけ)うまく使いこなせなかったことがあり、「やっぱり元の会議に戻そう」という鶴の一声で戻してしまったのです。また、特定の部門だけで利活用を進めても、ほかの部門が抵抗すればすぐに以前のレガシーな会議に戻ってしまうこともわかりました。

 こうした状況で、私は24社のクライアント企業で「強制オンライン会議ウィーク」を設定し、期間中は社長や役員も含めて全社員がオンラインで会議を行うことに決めました。言わば強制的に「オンライン会議体験」を強いたのです。どこからでも会議に参加できるルールにしたので、自宅から参加する女性や、喫茶店から参加する外出中のセールス担当、会社の会議室から参加する課長、出張先のホテルから参加する部長などと、各自の働き方に合わせてさまざまな場所から参加していました。当然ながら役員会議もオンライン会議にし、リモート参加をOKにしました。こういった体験をさせて「意外とできた!」を実感させるのです。当初は情報システム部門の協力でセミナーをやったりガイドブックを作ったりして時間を費やしましたが、結果的にははじめてオンライン会議を使用した人の満足度は77%と高く、68%の人は「また使いたい」と回答してくれました。利用回数が増えれば増えるほど、満足度も再利用意欲も高まっていったことも驚きでした。これもまさにセクション09で述べた「習うより慣れろ」ですね。はじめは抵抗していた営業担当役員も、取引先に対して「オンライン会議は便利なので、ぜひ使ってみるといいですよ!」とすすめるほどの入れ込みようで、この経験から私も、経営陣を巻き込んで「経験学習の場」を作ることは行動と意識を変えるうえで非常に重要だと確信しました。

 経験学習により営業担当役員の意識が変わったことで、営業部門の会議はオンライン会議が基本となりました。オフィスにいるスタッフだけが会議室で参加し、顧客を抱えるセールス担当者には外出先からの参加を推奨したのです。「社内の会議」より「顧客と接する時間」を増やすように役員が指示し、KPI(重要業績評価指標)にも「顧客との対応回数」「商材の提案回数」を設定しました。この企業は法人向けの社員教育サービスを提供していましたが、オンライン会議の定着により、顧客への対応回数はそれまでの2.5倍に増え、提案件数は2.7倍に増えました。結果としてセールス担当者1人あたりの売り上げも2.3倍にアップしました。今では取引先に向けて、オンライン会議を使った社内トレーニングの提案をするほどです。自分たちが使ってみて効果を実感したら、それを顧客にすすめて新たなビジネスとして成り立たせたのです。

 オンライン会議を特定の部門だけでなく社内全体に浸透させるには、利用率を可視化するなどして各部門を競い合わせるのがおすすめです。そのうえで、オンライン会議のあとには必ず利用者に振り返りの時間をもたせましょう。「使ってみたら意外と良かった」「今度はこんなかたちで活用してみよう」というフィードバックが得られたら、社員の意識と行動が変った証拠です。

<第10回に続く>

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