「白井悠介のなんとかなるさ」⑦初めてのアフレコ

小説・エッセイ

更新日:2020/6/18

 さて、今回はお待ちかね(?)の専門学校時代のエピソードをお話ししたいと思います。

 専門学校時代をひとことで言うと、「めちゃくちゃ楽しかった!」。

 だって、声優を目指す人たちが集まるんですよ? つまり、アニメやゲームが好きな人たちばかりってことです。そうなると仲良くなるスピードも早くて、これまでの学生生活と比べても距離が縮まるのもあっという間。“好き”を共有できるのって、素敵なことなんだなぁと思いました。

 その反面、同じ夢を持つ者同士、ライバル意識なんてものもあるわけで。こいついい声してんな、こいつイケメンだな、と密かな闘志も燃やしていたのでした。

 1年目の授業は舞台が中心。みんなで協力しながら、ひとつの舞台を作り上げていきます。でも正直、ぼくは舞台の授業があんまり好きではありませんでした。

 なんで舞台をやらなきゃいけないの? そんな風に思いながら、渋々受けていた気がします。

 でも、いまとなってみれば、当時の授業の意味も深く理解できるんです。声優というのは声だけで表現する仕事。怒っているときや泣いているとき、走っているとき、寝っ転がっているとき、すべてを声だけで表します。

 ところが、それが難しい。体の動きや体勢に応じて声がどう変化するのかを熟知していないと、キャラクターの動きにぴったり合う声が出せないんです。それを知るためには、実際に体を動かしながら発声するのが一番。つまり、舞台は必須科目のようなものなんですよね。

 でも、当時はそんなことを知る由もなく、「なんでこんなことしてるんだろうな……」なんて思いながら、なんとなく受けていたのでした。あの頃の自分に言いたい。もっとしっかり勉強しなさい!

 俄然やる気が出たのは2年生になってから。いくつか選択できるクラスのなか、ぼくはもちろん「声優アフレコクラス」を選びました。ついに、憧れの“アフレコ”ができる!

 アフレコの授業では、実際に映像に声を乗せていきます。もちろん、最初はなかなかうまくできません。羞恥心もありましたし、マイクの前で声のお芝居をするのって、想像以上に難しかったんです。

 それでも、目の前のキャラクターから“自分の声”が出てきたときの感動は忘れられません。ぼくがやりたかったのはこれだ……! あらためてそう確信し、その授業だけは絶対に休まずに出席していました。

 そんな専門学校で最後に待っているのが、声優事務所を招待して行われる一大オーディション。そこで目に止まった生徒は、そのまま事務所に所属できるチャンスがあるんです。生徒たちはみんな、そのオーディションに参加するために2年間頑張っていた、といっても過言ではありません。もちろん、ぼくも。

 でも、なんとぼくは、そのオーディションを辞退してしまいました。えっ、なんで? どうして!? 気になりますよね(笑)。

 この続きは次回で~!

今週の一言:他の授業は休んでいたかって!? それは聞くな!

構成協力=五十嵐 大 写真=干川 修 スタイリング=小林かおる ヘアメイク=川口愉里恵
衣装協力=ミックスメッシュワンピース(gomme/GOMME HOMME) 2万4200円/ラフォーレ原宿店 TEL 03-3796-4336

第8回につづく

しらい・ゆうすけ
1月18日、長野県生まれ。2011年に声優デビュー。2015年に出演した『美男高校地球防衛部LOVE!』で注目を集め、以降、『アイドルマスター SideM』『アイドリッシュセブン』『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』などの話題作への出演が相次ぐ。「理想の緑」をブランドアイコンとする、オリジナルアパレルブランド【MIDORI】も立ち上げたほか、YouTuberとしての活動もスタートし、「しらいむチャンネル」で自由気ままな動画も投稿中。
公式Twitter:@shirai_universe
公式YouTubeチャンネル:しらいむチャンネル
MIDORI公式サイト:アパレルブランド