家計費を「売上」ベースで考えていませんか? 経費や税金などを差し引くと… /フリーランス、自営業のためのお金の超基本⑤

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公開日:2020/5/27

フリーランス、自営業がコロナショックを生き抜くための決定版! 人気家計再生コンサルタントがお金の管理術を丁寧に解説します。フリーランス、自営業だからできるお得な「お金の話」を大公開。

『ゼロからわかる! フリーランス、自営業のためのお金の超基本』(横山光昭/アスコム)

家計費は、「手取り額」をベースに考える

 月々使っていいお金を、「売上」を基準に考える人は少なくありません。しかしフリーランス、自営業の人は、売上から経費、税金などを引いた「手取り」を基準に考えるべき。その額を把握して初めて、ムダ遣いを本当に減らすことができるのです。

「手取り額」がわかっている人は…
毎月しっかり貯金ができる。ムダ遣いがない。

「手取り額」がわかっていない人は…
隠れたムダ遣いが多く、お金がたまらない。

 フリーランス、自営業の人にとっては、経費だけでなく、家計費の見直しも、とても大事です。

 経費と家計費の両方において、必要なことのみにお金を使い、ムダな支出をおさえること。

 それができて初めて、お金をためたり、将来に向けて資産を増やしたり(具体的な方法については、第4章でお話しします)することができるからです。

 その際、何よりもまず気をつけていただきたいのは、

 1か月の家計費は、売上の額でなく、最終的な「実質の手取り」の額をベースに考える

 ということです。

 93ページでご紹介したCさんのケースをあらためてみてみましょう。

 Cさんの場合、1か月の平均的な売上は60万円です。

 ところが、経費に26万円かかっているため、所得は34万円となり、さらにその中から、住民税約3万円と国民年金や国民健康保険の保険料5万円を払っています。

 つまり、会社員の「手取り」にあたる額は、Cさんの場合、26万円となってしまうのです。

・Cさんの売上 60万円
・Cさんの手取り 26万円

 いかがでしょう。

 数字で見ると、インパクトが全然違いますね。

 毎月60万円のお金が入るので、本人も周囲の人も「比較的裕福である」と考え、スケールの大きな生活をしてしまいがちですが、実際のCさんの手取りは26万円。

 会社員の初任給の平均額よりは高いけれど、しっかりお金を管理しなければ貯金はできませんし、ムダ遣いをする余裕はあまりありません。

 このギャップが、フリーランス、自営業の人が陥りやすい落とし穴であるといえます。

 同様の方は、ほかにもたくさんいらっしゃいます。

 たとえば、年収(1年間の売上)が1000万を越えていて、身なりも立派なのに、貯金が少なく、将来に不安を抱えている方もいらっしゃいました。

 その方の場合、年に1000万円以上稼いでいても、経費の割合が非常に高く、実際の手取りは月々30万円ほどでした。

 でも、まるで月々80万円くらいの手取りがあるかのように、気前よくお金を使ってしまうのです。

 売上を基準にお金の使い方を考えるか、手取りを基準に考えるか。

 これで大きく人生は変わります。

 実は、「節約しているのにお金がたまらない」「いくら頑張っても貯金が増えない」という悩みを持つ人が、手取りを正確に把握していないケースは少なくありません。

 そもそも自分が実際に手にするお金の額をきちんと把握していなければ、せっかくの節約も貯金も場当たりな的なものになり、長続きはしません。

 さて、今まであなたは何を基準に月々の収支を考えていたでしょうか。

①手取りを基準にお金を使っていた
②売上と手取りの中間くらいを、なんとなく基準にしていた
③売上を基準にお金を使っていた
④特に考えていなかった

 さまざまなケースがあると思いますが、特に②~④に該当する方は、口座とカードを使い分け、月々いくら経費にかかっているかを把握できたら、自分の所得を計算し、税金や社会保険料を差し引き、「手取りの額」を計算してみましょう。

 月によって収入が違うという人は、帳簿や確定申告時の書類などをもとに、一年分の手取りを計算し、それを12で割って、平均額を出しましょう。


 それがわかったら、具体的に家計費を見直していきます。

 家計費の見直し方については、拙著『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー刊)などに詳しく記してありますので、ここではポイントだけご紹介しましょう。

 家計費においても、まずは「何にいくらまで使っていいか」という枠をつくることが大事です。

 私はいつも、相談に来られた方に、支出を、

・消費(消): 生活に必要なものに使うお金。生産性はさほど伴わない。食費、住居費、水道光熱費、教育費、被服費、交通費など。

・浪費(浪): 生活に必要がなく、無意味で生産性もないものに使うお金。嗜好品、程度を超えた買い物やギャンブル、固定化された高い金利など。

・投資(投): 生活に不可欠ではないものの、将来の自分にとって有効な、生産性の高いものに使うお金。

 の3つに分け、お金を使うたびに「その支出がどれにあたるのか」を考えていただいたり、家計簿に記録し「見える化」していただいたりしています。

 そのうえで、月々の「手取り」を100とした場合、消費を70%、浪費を5%、投資を25%の枠内におさめていただき、投資については、さらに、

・貯金やお金への投資など「将来へ残す投資」:15%
・自分への投資など「使う投資」:10%

 に分けてもらっています。

 自分への投資というのは、今後の自分にプラスになる本を読むとか、資格を取得するとか、将来役に立ちそうな知識や経験を手に入れるためにお金を使うことです。


 そして、消・浪・投のうち、最も減らしていただきたいのは浪費の部分、次に、必要以上に偏った、消費の一部です。

 経費を使うとき同様、家計費においても、常に「きちんと枠内におさまっているだろうか?」「この支出は本当に必要なのか?」「消費や投資ではなく、浪費ではないのか?」と考えるようにしてみてください。

 それを繰り返すことで、お金に対する意識、お金の使い方が変化し、ムダな支出が減っていき、貯金や投資に向けられるお金が少しずつ増えていくはずです。

 フリーランス、自営業の人の場合、収入にも支出にも波がありますから、毎月必ず、決まった枠の中に支出をおさめ、決まった額を貯金するというのは難しいかもしれません。

 ですから、基本的な枠組みはおさえつつ、収入が少ない月は貯金にまわす額を少なめにし、その分、収入が多い月は貯金額も多くするなど、フレキシブルに対応されることをおすすめします。

<第6回に続く>