遺言書 or 生前贈与…賢い遺産相続方法はどっち?/ 新・お金が貯まるのは、どっち!?④

暮らし

公開日:2020/6/2

「一生お金に困らない生活を送りたい、でも現実的に考えて無理」と諦めている人へ――。お金を貸す側・借りる側、両方の視点を持った著者が教える“一生お金に困らない方法”。こんな時だからこそ、お金のことを勉強して少しでも賢く暮らしてみませんか?

『一生お金に困らない! 新・お金が貯まるのは、どっち!?』(菅井敏之/アスコム)

質問4 生きているうちに、子どものためにやっておくなら、「遺言書」か「生前贈与」か、どっち?

 相続で揉めないためには、遺言書の作成が必須です。多くの人は、そのことをわかっています。でも、書いていない人がほとんどです。

 親から白黒つけられる子どもの気持ちを考えると、「書かない」のではなくて、「書けない」のです。

 親が遺言書を書かずに亡くなれば、残された兄弟姉妹が「遺産分割協議書」をつくるとき、みんなで親の気持ちを想像しながら話し合うことになります。

 でも、親の面倒を見た度合いが違うし、それぞれの家庭の事情もある。「父さんはこう思っていたはず」という考えが、兄弟姉妹それぞれで食い違いかねません。

 すると、喧嘩になってしまいます(107ページ「質問12」)。

 ですから「生前贈与」は、親が生きているうちに実行しておく、間違いのない遺言なのです。

 ただし、現金の贈与では、1年間に110万円を超えると贈与税が発生してしまいます。そこで、遺産を「現金」ではなく「不動産」にすると、実際の取引価格より低く評価されるケースがあります。

「不動産」を贈与すれば、贈与税を低く抑えることもできるのです。

 不動産投資というと、高額の資金が必要だし、空室リスクもある、管理だって大変そう、お金と違って分けにくいし……など不安要素が頭に浮かび、敬遠される方がいらっしゃるでしょう。

100万円から始められる不動産投資「不動産小口化商品」

 そんな方のために、1口100万円単位で所有・贈与・相続できる「不動産小口化商品」を紹介します。不動産が持つメリットをそのまま活かしながら、小口に分割することで、より一層、扱いやすく身近なものになるという商品です。これは、国が定める「不動産特定共同事業法」に基づいたものです。

 親の立場からしても、子どもに500万円の「現金」をわたして贈与税を余分に払い、消費や娯楽に使われてしまうよりは、500万円の不動産小口化商品を購入し、それを贈与するほうが、子どもにお金を浪費させることなく、安心です。

 生前贈与をおこなう際は、贈与契約書作成の手続きが必要です。分配金は不動産収入ですから確定申告も必要になってきます。

 もちろん定期預金とは違いますから、元本保証ではありません。管理運営のプロである不動産会社の信用・運営能力や投資物件の事業性に対する見きわめも必要です。

 これまでお会いしてきた相談者のなかには、自分がどんどん高齢になっていくと、いま持っている不動産の価値が下がってしまい、このまま古いアパートなど持っていてもよいのか、と不安に感じている人が多くいらっしゃいました。この状況のままで相続が発生してしまうと、子どもに不動産を「資産」ではなく「負担」として引き継がせることになる。そう悩まれる方は多いのです。

 こうした不安から解放される方法として、古いアパートを売却し「不動産小口化商品」を購入するというかたちで、資産の組み換えを検討される方は増えています。

 年1~2回の分配金は、旅行や食事など、ゆとりある生活資金となります。

「不動産小口化商品」は地域貢献にもなる

 いま、銀行など金融機関は投資信託や保険商品の販売に躍起です。それぞれの人が貯めた金融資産が、投資信託としてさまざまな外国や会社の資金として投資されています。しかし、それらの金融商品を購入して得をする人は、私の経験上、ごくわずかです。最近も、株価暴落により大きな損をした、どうしたらいいですか? という相談が相次いでいます。

 一方、不動産小口化商品であれば、ひとりでは所有できない質のよい不動産資産を、みんなでシェアして所有し、配当金を受け取ることができます。国内不動産ですから、為替リスクはありません。

 近年、地方では、空き家・空き室、空き店舗によるシャッター通りなど、町の空洞化が大きな社会問題となっています。そのため、個人それぞれが節税や老後対策のためにおこなう不動産投資は、町の再生や活性化につながっていきます。

 それは今後、不動産小口化商品が、これまでの「点」としての不動産投資から「面」として発展する「まちづくりへの投資」へとかたちを変える可能性を秘めているということです。

 不動産小口化商品によって、町に社会性のある優良な物件が増え、住みやすい町になれば、それはすてきな地域貢献だと思いませんか。

 私は、志と社会性にあふれた不動産運営のプロが、全国でこの不動産小口化事業(不動産特定共同事業)に取り組まれることを望んでいます。「お金の地産地消」を進めることが、地域の活性化につながることをおわかりいただけたと思います。

 ご自身が生きているうちに、未来世代のサポートや地域価値を高める当事者として参画されてはいかがでしょうか。始めるにあたっては、信用できる不動産の専門家に相談しましょう。

答え
相続資産は圧縮効果のある「不動産小口化商品」にして生前贈与する。子どもに気持ちをしっかりと伝え、未来の世代の生活をサポートすることが大事。

<第5回に続く>