うまい話には要注意! たいした勉強もせずに投資に手を出すと…/新・お金が貯まるのは、どっち!?⑥

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公開日:2020/6/4

「一生お金に困らない生活を送りたい、でも現実的に考えて無理」と諦めている人へ――。お金を貸す側・借りる側、両方の視点を持った著者が教える“一生お金に困らない方法”。こんな時だからこそ、お金のことを勉強して少しでも賢く暮らしてみませんか?

『一生お金に困らない! 新・お金が貯まるのは、どっち!?』(菅井敏之/アスコム)

質問6 うまい話にだまされやすいのは、「高収入のエリート」か「ふつうの会社員」か、どっち?

 前の質問では、定年後は収入減だけにとらわれて不安にならずに、自分が築いた資産(不動産)に目を向けて、生活資金をつくりだす方法をお伝えしました。

 なぜなら、老後の不安や閉塞感にさいなまれ、「あなただけに特別な情報」などという怪しい話につい巻き込まれて、一発逆転をねらい、大切な老後資金をなくしてしまったケースをたくさん見聞きしてきたからです。

 こういったケースに多いのは意外にも、現役時代に仕事ができた決断力のある人たちです。

 いわゆるエリートサラリーマンですね。現役かリタイア組かを問わず、私のこれまでの相談経験のなかで、これははっきりいいきることができます。

 年収1000万円以上の経営者・医師や、一部上場会社の社員や公務員はもちろん、年収にかかわらず「自意識がエリート」の人も含みます。

 こうしたお金の罠にはまりやすい大きな理由のひとつは、「融資」を受けやすいことです。

 手持ちのお金はなくても、「これぐらいのものを持っていないと、格好がつかない」と見栄をはってしまうからなのか、カードローンについ手を出してしまう。

 ローン会社は簡単に融資してくれます。

 しかし、ローン会社はあなたの人柄に融資するわけではありません。

 あなたの高収入という「属性」に依存して、お金を貸してくれるわけです。

 これはつまり、「何があってもボーナスや退職金で返せ」ということです。

 カードローンで穴埋めをしなければならないような人は、本当は支出をコントロールしなければならないのですが、安定した収入を得ている、大企業に勤めているがゆえに、脇が甘くなってしまうのでしょうか。つぎに何を考えるかといえば、なんとかもっと収入を伸ばす方法はないだろうかと思うわけです。

 なぜかいきなり株式投資をしたりFX(外国為替証拠金取引)をしたりして、少しずつ危ない投資に近づいていきます。いや、そんな話がやってくる、というほうが正しいかもしれません。

 仕事中、突然ワンルームマンション業者から電話がかかってきたりもします。

「お客様は特別ですから、わたしが銀行を紹介させていただきます。特別にいいかたちで全部セットしますから」

 などと、ダメな不動産をすすめられることもあります。

 エリートは、この「特別」という言葉に弱いことをセールスマンは知っています。

 投資セミナーには、30代、40代のエリートがたくさん来ています。

 彼らの気持ちはわかります。上司も部下も気に入らない、なんとかここから抜け出したい、と思っても出口が見えず、閉塞感でいっぱい。せめて何か副収入を、と思ってやってくるのです。

 でも、ろくに投資の勉強もせず、お金も貯められない人が甘い話に乗るだけでは、破綻は見えています。

 たとえば外資系金融マンであれば、手取り年収2000万円くらいの人がごろごろいます。

 その年収の2割を貯金したら400万円が1年で貯まり、5年続けたら2000万円になります。だからといって、それができる人ばかりではないんですね。なぜなら、億ションや外車の購入、豪華海外旅行、子どもは幼稚園から私立、自分はストレス発散のため今日は六本木、明日は銀座、という生活をしているからです。

「自分は特別」と思うエリートが危ない

 高い年収を得ているエリートがお金の罠にはまりやすいのは、やはり「特別な自分だから、特別ないい話が来るのだ」と考えているから。「うまい話などない」というのが世の中の常識です。「特別なあなたには損はさせない。絶対に儲かる」という話はすべてウソだと思ったほうがいいのです。

 不動産投資の場合、ダメ物件でも借入人がエリートだと審査が通ってしまうことがあります。空き室になったり修繕費がかさんだりしたとしても、高い給与収入や退職金でカバーできると判断されてしまうからです。

 しかし、普通のサラリーマンの場合は、そうはいきません。

 きちんと勉強し、時間をかけてコツコツとお金を貯め、充分な自己資金を投入しないと融資は受けられません。結果的に、そういう努力をした普通のサラリーマンのほうが、いい物件を持ち、成功されています。

「自分は特別」などと考えていませんから、うまい話にも飛びつきません。脇を締めているのです。

 いい会社に入り、いい給料をもらっているのは実力かもしれません。しかし、その環境にはかならず周囲からのお膳立てがあります。投資やお金の世界はそれとは違います。会社のように、みんないい人、ばかりではありません。自分だけは大丈夫と思っても、それは過信かもしれません。

「5年でリタイアするから」と、たいした勉強もせず、ダメ物件を立て続けに購入し、いま、ゾンビ状態にあるエリートサラリーマンを私はたくさん知っています。

 収入を増やそうと考える前に、まずは自分の肥大した支出を見直し、毎月の収支を黒字にしてお金を貯めてください。投資を考えるのはそのあとです。

答え
危ないお金の話にのってしまいやすいのは、エリートサラリーマン。自分を特別だと思ってはいけない。絶対に儲かる話などない。自分を過信せず、まずは毎月の収支を黒字にして、お金を貯める。

<第7回に続く>