売却 or 賃貸 or 自分で住む… 親が亡くなった実家、どうするべき?/新・お金が貯まるのは、どっち!?⑦

暮らし

公開日:2020/6/5

「一生お金に困らない生活を送りたい、でも現実的に考えて無理」と諦めている人へ――。お金を貸す側・借りる側、両方の視点を持った著者が教える“一生お金に困らない方法”。こんな時だからこそ、お金のことを勉強して少しでも賢く暮らしてみませんか?

『一生お金に困らない! 新・お金が貯まるのは、どっち!?』(菅井敏之/アスコム)

質問7 空き家になった実家は、「売る」、「売らない」、どっち?

 親が亡くなった実家を「空き家」のまま放置すると、こんなリスクがあります。

(イ) 建物の劣化による資産価値の低下(換気や掃除をしないので、カビや虫が繁殖し、壁紙・床・天井などの劣化が進む)

(ロ)不法投棄や不法侵入(放火の心配も)

(ハ)景観悪化、雑草や虫の発生による近隣からのクレーム

(ニ)屋根や外壁の崩れ、倒壊による近隣や歩行者への損害賠償

 では、空き家にしないために、実家をどうするか。選択肢は次の3つでしょう。

 ①売却して現金に換える
 ②人に貸して賃料を得る
 ③自分たちが住む

 ①「売却」は、わかりやすい話。売って現金化し、兄弟姉妹で分ける。子どもがあなただけで、その家に「賃貸」の需要があれば、②もいい。兄弟姉妹がいる場合は、誰が管理して収益をどう分配するか、話し合いが必要です。

 あなたがいま賃貸住まいなら、③「自分たちが住む」ことで家賃が浮きます。生まれ育った場所に友だちが大勢いる、いまの住まいより環境がいい、利便性も高い、となれば申し分なしですよね。子ども2人が相続したときは、1人が家の権利者となり(まるごと受け取り)、評価額の半分をもう1人に分割払いする方法もあるでしょう。

 以上3つをまとめると、①は「売る」、②③は「売らない」。

 家を相続したら、まず「売る」か「売らない」か、判断しなければいけません。

 現実には多くの人が「空き家」のままにしています。

 じつは、最大の理由は「仏壇がある」からです。だれの家にも置き場所がないし、粗大ゴミに出すわけにもいかない。でも、これは思い切るしかありません。寺や業者に相談するなどして思い切って行動してください。

土地のチカラを見きわめる

 相続した実家を「売る」か、「売らない」か。

 これは、実家が建つ土地の「ポテンシャル」しだいです。

 いいかえれば、潜在力、隠れているがじつは持っているチカラしだい。これを見きわめ、不動産としての価値が小さければ売る、大きければ売らずに持ちつづけるのがよいでしょう。

「不動産の価値」はどこで判断するのか。それは、物件そのものでなく、その物件の町(立地)にあります。「あなたはその場所に住みたいか」という基準で考えるのが簡単です。中心地へのアクセスはどうか、駅までの距離はどうか、近くにスーパーや病院があって不自由なく生活できるか……など(137ページ「質問16」)。

 近隣に雇用があるかないか、も重要です。実家のある町や村が衰退の一途をたどれば、資産価値も下がりつづけます。

 もうひとつ、不動産の価値の決め手は、自然災害リスクがあるかないか、です。2019年に相次いだ大型台風で、災害に対する耐性がその土地にあるかどうか、が注目されました。大地震や洪水の恐れが指摘される低地の資産価値が向上することは、この先まずないと思っていいでしょう。実家のある自治体のハザードマップをかならず確認してください。リスクがあれば売却をおすすめします。実家が地方にあるなら、早めの売却にむけて地縁・血縁を総動員してください。地場には地場の需要があります。

 実家だろうと、あなたの持ち家や借家だろうと、崖の下や谷間に住んでは、絶対ダメ。そういう場所に住んでいる人は、売却や住み替えを検討してください。

 逆に、実家の資産価値が高ければ「人に貸して収益を得る」ことを検討します。

 自治体からの助成金、日本政策金融公庫の融資などを活用して、水回りなどをリフォームし、「戸建て賃貸」として貸し出すのです。

 一戸建ての貸家は、ほとんどの町で供給が需要に追いつかない状態です。需要が高い理由として、子育て世代は子どもの騒音を気にしなくていい、さらにペットが飼える、庭がほしいなどが挙げられます。つまり、貸し手市場であり、素人でも稼げる余地がある、ということです。アパートと違って入居期間が長いのも、戸建て賃貸のよいところです。

 賃貸に出すとき、空室や賃借人の不適切な使用などトラブルが心配な人は、移住・住みかえ支援機構(JTI)の「マイホーム借上げ制度」があります。

 これは、50歳以上のマイホーム所有者からJTIが家を借り上げ、子育てファミリーなどに転貸(また貸し)する仕組み。最大のメリットは、最初の入居者が決まれば以後は空室になっても最低賃料が保証されることです。戸建て、マンションは問いません。対象地域も日本全国です。築年数が古くても相談に乗ってもらえます。

 建物が古ければ、思い切って「アパートに建て替える」ことも検討します。

 あなたは実家周辺の事情にくわしく、どんなニーズがあるのかがわかると思います。融資は全国どこでも対応する「住宅金融支援機構」に相談してください。実家の土地を相続したあなたは、立派な「地主」。土地勘があることは、融資する側にとっては大きな判断材料になります。

 ただし、アパート経営は、あくまで「事業」です。無知は身を滅ぼします。不動産オーナーむけの情報誌『家主と地主』などを熟読し、失敗談も語ってくれる先輩大家さんの経験に基づくアドバイスなども参考にしながら、チャレンジしてください。

答え
実家を売るか、売らないかは土地のポテンシャル、不動産の価値しだい。不動産価値が高ければ、売らずに人に貸して収益を得る方法を考える。建物が古ければ、アパートへの建て替えも検討に値する。

<第8回に続く>