善逸「俺が考えた俺だけの型」基本に忠実ながらも“独自の型”を生み出すことの大切さ/『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方⑥

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公開日:2020/5/30

マンガ『鬼滅の刃』の炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助が、どんどん強くなれるのはなぜか…。大切な人を守るため、敵を倒すため。思い通りにならないことがあっても、投げ出さずに立ち向かう。『鬼滅の刃』から学べる強い心のつくり方を、印象的なセリフとともにご紹介します!

『『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方』(井島由佳/アスコム)

積み重ねることで自分独自の型が生まれる

『鬼滅の刃』における主役級の登場人物は、剣士としての素質にあふれたキャラクターばかりです。炭治郎の同期しかり、「柱」と呼ばれる鬼殺隊の精鋭部隊しかり。体力、運動神経、判断力、忍耐力など、持って生まれた才能のみならず、みな努力する才能も持ち合わせています。

 最初は誰もが(炭治郎の同期ですべてが我流の嘴平伊之助という例外中の例外を除き)、師匠から教わった通りの剣の技術、戦術を駆使して鬼と戦います。しかし、日々の修行や戦いを重ねていくなかで、オリジナルの技や独自のスタイルを確立させていく人物も少なくありません。

 基本に忠実でありながらも、相手や状況に合わせてアレンジしていく。

 身につけた能力を、創意工夫によってもう一段レベルアップする。

 できる人はみんな、これを実現しています。

 炭治郎は、初めて十二鬼月と相対したとき、大苦戦を強いられます。下弦の伍にランクされる累という鬼に果敢に挑むも、なすすべがありません。鱗滝から伝授された「水の呼吸」という呼吸法をもとに繰り出す型(技)は、ことごとく跳ね返されてしまいます。

 死を感じたとき、走馬灯の中で、竈門家に代々伝わる〝ヒノカミ神楽〟を踊る亡き父の姿を思い出し、父親から教わったヒノカミ神楽独自の呼吸法を活用した技で累に斬りかかります。すると、それまで見えなかった累の隙の糸が見えるようになり、形勢が逆転するのです。

 もちろん、ヒノカミ神楽を用いた戦い方は、鱗滝に教わったものではありません。炭治郎がほぼ無意識のうちに、独自に発見したものです。

 炭治郎の同期の我妻善逸も成長していくなかで、自分だけの型を開発します。

 善逸は、ふだんは臆病で小心者、いうならば究極の〝ヘタレ〟タイプながら、恐怖におびえて気絶するかのように眠ると、スーパー剣士に変貌を遂げるという、一風変わったキャラクター。師匠から「雷の呼吸」を伝授されるも、6つある型のうち唯一「壱の型」しかマスターできませんでした。

 しかし善逸は、同門の兄弟子でありながら鬼になってしまった獪岳と死闘を演じたとき、同じ「雷の呼吸」の使い手である獪岳も知らない7番目の型「漆ノ型 火雷神」を炸裂させ、見事に頸をはねることに成功します。

 そして、師匠がえこひいきをして善逸だけにその技を教えたと勘違いする、死ぬ間際の獪岳に対し、善逸はこうつぶやくのです。

「これは俺の型だよ 俺が考えた俺だけの型」
(17巻 第145話「幸せの箱」より)

 私たちは、炭治郎や善逸のように特殊な才能を持っているわけではありません。

 でも、ひとつのことに徹底して取り組むことによって、自分なりの型を見つけることはできます。

 コツをつかむ。

 効率の良い方法を見つける。

 自分がやりやすいように工夫する。

 そう考えるとわかりやすいでしょうか。

 茶道・華道・書道(もしくは香道)の「三道」といわれる日本の伝統芸能、あるいは武道などに通じる「守破離」という考え方があります。

 これは、茶道千家流の始祖である千利休の「規矩作法 守り尽くして破るとも離るるとても本を忘るな」という教えから広まったものといわれ、基本をベースにしながらひとつのことに真剣に向き合えば向き合うほど上達し、その経験から独自の個性が生まれるというものです。

 勉強に関しても、同じことがいえます。

 最初は、両親や学校の先生から、読み書きの仕方、ノートのとり方、問題の解き方などを教わりますが、学年が上がり、学ぶ教科や範囲が広がり、難易度が上がっていくにしたがい、自分に合った勉強法を考えるようになります。

 とくに受験勉強は、ただがむしゃらに机に向かうだけでは集中力が続かなくなるので、勉強する教科の順番、勉強する環境(自宅、塾の自習室、図書館など)、休憩時間のはさみ方などに、おのずと気を配るようになるでしょう。

 仕事にしてもそうです。上司から教わったことを基本にしながらも、自分なりに工夫しなければ、早い出世は望めないでしょうし、責任ある大きな仕事を任せてもらえないという状況に陥りかねません。

 基本をたたき込んだら、まずトライしてみる。そして、失敗したらその原因を考え、改善し、またトライしてみる。そうやって試行錯誤を繰り返していくうちに、自分の型ができあがっていくものなのです。

<第7回に続く>