身のほど知らずで赤面する炭治郎。目標達成に近道なし! “地道にやること”のススメ/『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方⑦

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公開日:2020/5/31

マンガ『鬼滅の刃』の炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助が、どんどん強くなれるのはなぜか…。大切な人を守るため、敵を倒すため。思い通りにならないことがあっても、投げ出さずに立ち向かう。『鬼滅の刃』から学べる強い心のつくり方を、印象的なセリフとともにご紹介します!

『『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方』(井島由佳/アスコム)

下弦→上弦→鬼舞辻無惨。目標達成に近道はない

 これまで述べてきたように、大きな目標を持つこと、なにごとにも真剣に取り組むこと、壁にぶつかってもあきらめないこと、つらくても耐えて我慢することは、どれも重要で、強い自分をつくるためには欠かせない要素です。

 しかし、ものごとには順番があります。いきなり頂上へ到達できるわけではありません。身の丈に合っていないこと、あまりに分不相応なことにいきなりトライすると、大きな挫折感を味わうこともあるし、それが原因で目標そのものをあきらめることもあります。強い自分になるには近道はないのです。

 炭治郎は小さいことの積み重ねを大事にするタイプですが、向上心が強く、熱血漢でもあるので、時に自分を見失うこともあります。早く禰豆子を人間に戻したいという思いが先行して、突っ走ってしまうこともしばしば。

 炭治郎は、十二鬼月の下弦の伍・累を倒したあと、鬼化した禰豆子を殺さずに連れて歩いていることが隊律違反に当たるとされ、鬼殺隊の本部に連行されます。

 そして鬼殺隊の「柱」が集結して半年に一度開かれる〝柱合会議〟の場で、裁判にかけられることになったのですが、炭治郎は禰豆子を傷つけようとする「風柱」の不死川実弥に食ってかかります。相手が自分よりはるかに実力が上の柱でもお構いなしです。

 するとそこに、鬼殺隊の当主を務める「お館様」こと産屋敷耀哉が現れます。

 お館様は鱗滝や義勇からすでに事情を聞いていて、禰豆子の存在を認めており、柱たちを説得しようとしますが、すべての鬼が敵であり、見つけ次第殺すことが唯一無二の正義であるとたたき込まれてきた柱たちは、簡単に受け入れてはくれません。

 逆にお館様の考えを改めさせようと、禰豆子をさかんに挑発し、襲いかかるように仕向けます。禰豆子はぐっと我慢し、人間を襲わないことが証明できましたが、それでも快く思わない柱はいます。

 その様子を見て、お館様は炭治郎に、炭治郎と禰豆子が鬼殺隊として戦えること、役に立てることを、十二鬼月を倒すことで証明しなさいと言います。

 この言葉に炭治郎の思いが爆発します。

「俺と禰豆子は鬼舞辻無惨を倒します!! 俺と禰豆子が必ず!!」
(6巻 第47話「プイ」より)

 お館様が十二鬼月を倒すようにと言っているにもかかわらず、興奮した炭治郎は、鬼殺隊の最終ターゲットである鬼舞辻の名前をいきなり口にしたのです。

 いうならば、高校球児がメジャーリーガーに真っ向勝負を挑むようなもの。

 この、あまりに無謀な宣言に対し、お館様はさらりとたしなめます。

「今の炭治郎にはできないから まず十二鬼月を一人倒そうね」
(6巻 第47話「プイ」より)

 顔を真っ赤にして「はい」と言うしかない炭治郎。柱たちは笑い出しそうになるのを必死にこらえます。

 身のほど知らずという言葉がこれ以上ないというくらい見事に当てはまることを、自他ともに認めたシーンでした。

 大きな目標を持つことはいいことですが、今の自分にそれはできない、そこまで実力が届いていないということを自覚(現状把握)したうえで、目の前の小さな目標から達成していかないと、大きな目標を達成することはままなりません。

 地道にやることがいちばんの近道なのです。

<第8回に続く>