雑踏やパーティーで疲れる…敏感すぎる人は、実は察知能力の高い人/敏感すぎる自分を好きになれる本④

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更新日:2020/6/16

ちょっとしたことで過敏に反応してしまう…それは性格ではなく、性質のせいかもしれません。何事にも敏感に反応しすぎてしまうのが「HSP(Highly Sensitive Person)」の性質。
神経質、傷つきやすい、引っ込み思案…そういったことで生きづらさを感じている方向けに、気持ちがラクになれるヒントを医師が紹介します。『「敏感すぎる自分」を好きになれる本』(長沼睦雄/青春出版社)からの全6回連載です。

『「敏感すぎる自分」を好きになれる本』(長沼睦雄/青春出版社)

特徴① 刺激に敏感に反応する

五感や第六感が敏感な分、ストレス反応も大きくなる

 ここからは、HSPについてさらに理解していただくために、先に示した5つの特徴の1つひとつについて、詳しく解説していきます。まずは「刺激に敏感に反応する」という特徴です。

 HSPはさまざまなものに敏感に反応します。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のいわゆる五感ばかりでなく、五感を超えた感覚にも敏感であることは、HSPの大きな特徴といえるでしょう。人間は五感や第六感や体の感覚を通して、刺激をキャッチしています。目に映った像、聞いた音、嗅いだにおい、食べ物の味、触れた皮膚感覚、さらには目には見えない物質や霊的なエネルギー、内臓や筋肉(膜)や関節の感覚など、さまざまな刺激の総体として、自身や世界を認識しているわけです。

 HSPは人より敏感な感覚を持っているために、刺激をより強く、詳細で鮮明にキャッチできるのですが、その分、それによるストレス反応も大きくなりがちだといえます。

 たとえば、聴覚であれば、ほかの人たちが気づかないような小さな音が気になりますし、突然大きな音がしようものなら、飛び上がるほど驚いてしまうはずです。

 そのため、人の集まる雑踏やパーティ会場などにいるだけで、自分でも気づかないうちに膨大な量の刺激を溜め込んでしまい、それが過剰なストレスになることも多々あります。話し声や足音、グラスや食器のあたる音などが、HSPにとっては、耐えがたい騒音になってしまうのです。

 また、多くのHSPは五感から感じられる外からの刺激だけでなく、体の内側から生まれる刺激に対しても敏感で、腹痛や頭痛、疲労感や倦怠感など、体の中で発生するさまざまな痛みや疲れも、非HSPよりも感じやすくなります。

 もちろん、HSPだからといって、五感や第六感などすべての感覚が敏感に反応をするわけではありません。五感すべてが敏感なHSPもいれば、聴覚だけに突出した敏感さを持っているHSPもいますし、目に見えないエネルギーだけに敏感なHSPもいます。同じHSPであっても、人によって敏感さが現れる感覚も、その程度も異なるため、自分がHSPかもしれないと思う方は、敏感に反応してしまう刺激はなにかを、知ることが重要なのです。

過剰に敏感なのは、脳内の情報処理能力が高いから

 では、このようなHSP特有の感覚の敏感さはどこから生まれるのでしょう。

 私たちは、刺激に対する知覚は自動的に起こっていると思いがちですが、刺激に対して意識や注意を向けなければ、刺激を感覚としてしっかりと受け取れません。「心ここに在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず」というわけです。

 HSPは、生まれ持った神経の性質として神経が高ぶりやすく、不安や緊張がほかの人よりも強い傾向にあるため、無意識のうちに受けた刺激に意識や注意を向けてしまいやすく、知覚が敏感になりやすいと考えられます。

 また、感覚の敏感さには、脳内の情報処理能力が大きく関わっています。感覚が鋭いHSPの多くは、この脳内の情報処理能力がきわめて高いと考えられます。

 目や耳、鼻などの感覚器官で受け取った光や音、においなどの感覚情報は、それぞれに決まったルートを通って、脳の特定の場所へ伝えられます。その過程で情報処理がなされることにより、はじめて「あ、ネコがいる」とか、「救急車のサイレンの音がする」とか、「このにおいはシチューだな」などと認識することができるのです。

 HSPの脳では、感覚器官で受けた刺激を脳内で、高度に複合的に、かつ、無意識に情報処理していると考えられます。そのため、目や耳などから入った膨大な刺激の多くを豊かに認識することができるのです。脳における、このような感覚の情報処理能力をそれぞれ脳内聴力、脳内視力、脳内嗅覚……と、私は呼んでいます。

 脳内聴力や脳内視力などがすぐれていて、しかも受け取る情報が多ければ、日常の中の小さな変化にもすぐに気づくことができます。

 たとえば、商談相手と会った瞬間に、その人の声の調子がいつもと少し違うことに気づいたり、壁の額がいつもよりわずかに曲がっていることが、部屋に入った瞬間にわかったりするのです。

 いっぽう、非HSPはHSPに比べて、感覚情報の取り入れも、脳内での情報処理も大まかだといえるでしょう。つまり、見ているようで、実際には見ていない、聞いているようで、実際には聞いていない……といった状態なのです。

 このような状態であれば、小さなことには無頓着でいられ、こまごましたことに煩わされることも少ないでしょう。細かいことも見逃さず、いろいろなことに気づく敏感さはHSPのすぐれた点ではありますが、その分、脳内の情報処理も過剰になり、脳も心も疲れやすくなってしまうのです。

敏感だからこそ、異変や異常をだれよりも早く察知できる

 HSPの中には、特定の食品に対して敏感に反応する人もいます。そういった人たちはカフェインなどの刺激物、防腐剤や化学調味料などを口にすると、胸がむかついたり、お腹を壊したりといった反応を起こしますし、そこまではっきりとした症状が現れなくても、なんとなく体調がすぐれないといった状態が続いたりします。

 食品だけでなく、大気汚染や、川や海の汚染などにも体が反応して、頭が痛くなったり、熱っぽくなったりするなど、体調を崩してしまう人もHSPには少なくありません。また、携帯電話や電化製品の放つ電磁波に過敏に反応する人もいますし、薬にも敏感で、ごく少量で効いたり、副作用が強く出たりする人もいるのです。

 このように刺激を鋭敏にとらえ、その中で少しでも人体にとって危険なもの、よくないものがあれば、それをいち早く察知できるのは、HSPの大きな特徴です。 こうしたHSPの特徴は、ときに「カナリア」にたとえられます。

 ひと昔前、炭鉱においてカナリアは、有毒ガスの早期発見のための警報として使われていました。炭鉱の中では有毒ガスが発生しやすく、ガスが充満すると爆発が起きます。カナリアはその有毒ガスがわずかでも発生したら、はげしく反応する敏感な生き物なのです。そこで、坑夫たちはカナリアを入れた鳥かごをぶら下げて坑内へ入っていき、そして、カナリアに異変があればすぐに外へ脱出していました。

 HSPは炭鉱におけるカナリアのように、地球上で起きている異変や異常をいち早く感じ取り、そして体に変化をきたします。化学調味料や農薬や大気汚染などにHSPが鋭く反応して体調を崩すということは、それらが人間という生き物にとって危険な存在であることへの警告とも考えられるのです。

 人口全体に対して20%ほどいるHSPのおかげで、これまでに人類は危険や異常をいち早く察知することができ、現在まで種を保存できたのかもしれません。

【次回に続きます】

この記事で紹介した書籍ほか

「敏感すぎる自分」を好きになれる本 (青春新書プレイブックス)

著:
出版社:
青春出版社
発売日:
ISBN:
9784413211567