熱意が伝わる! 「一生懸命、やります」を三島由紀夫の“最後の言葉”を使って言い換えると…/文豪のすごい言葉づかい辞典①

文芸・カルチャー

公開日:2020/5/30

夏目漱石、太宰治、三島由紀夫など、文豪の語彙を解説。手紙、メールで使えば、より気持ちが伝わりやすくなる“すごい言葉づかい”が身につきます。文豪ならではの深い教養とあわせて、絶妙な言い回しを学びましょう。

『文豪のすごい言葉づかい辞典』(山口謠司:監修/宝島社)

画/shoyu

昭和の文豪・三島由紀夫。幼少時は祖母から女の子のように育てられたことから肉体コンプレックスが生まれ、30代以降は自己鍛錬として肉体強化に熱中した。

至純

意味:まじりけのないこと。この上なく純粋なこと。

よくある言い方:「一生懸命、やります」「精一杯、取り組むことを誓います」

絶妙な言いまわし:「至純の心でやり遂げます」「至純の心を捧げます」

三島由紀夫『檄』より
われわれは至純の魂を持つ諸君が、一個の男子、真の武士として蘇ることを熱望するあまりこの挙に出たのである。

三島が最後の声明文に用いた言葉

 生涯に一度は使ってみたい、とても美しく、強い言葉です。三島由紀夫は「至純」という言葉を使った声明文『檄』を自衛隊員に撒いた後、演説し、自決しました。「至純」の意味の強さがわかります。その意味を文字の成り立ちから見てみましょう。

「至純」の「至」という漢字は、右側に90度倒すと矢が的にあたっているような形をしており、「もうこの先はない、行きつくところまで来た」という意味をもちます。「純」には、「できたばかりで混じりけのない、それでいて力のこもっている状態」という意味があります。このふたつから成り立つ「至純」は、「この上なく純粋なこと」を表す言葉、「純粋の最上級」といえます。

 現代を生きる私たちには、三島由紀夫ほど強い覚悟を込める機会はほぼありません。ですが、仕事に対する真剣な気持ちを表す際に「至純の心でこの仕事をやり遂げます」、尊敬する相手に「至純の心を捧げます」などと使うことができるでしょう。

<第2回に続く>