失敗を寛大な心で許してもらえるかも? 太宰治の言葉を使ってスマートに謝罪/文豪のすごい言葉づかい辞典⑦

文芸・カルチャー

公開日:2020/6/5

夏目漱石、太宰治、三島由紀夫など、文豪の語彙を解説。手紙、メールで使えば、より気持ちが伝わりやすくなる“すごい言葉づかい”が身につきます。文豪ならではの深い教養とあわせて、絶妙な言い回しを学びましょう。

『文豪のすごい言葉づかい辞典』(山口謠司:監修/宝島社)

画/shoyu

昭和の文豪・太宰治。『グッド・バイ』は、38歳で自死するわずか1か月前に執筆が開始された未完の作品。

海容

意味:相手の罪や過ちを許すこと。

よくある言い方:「この度は失礼をいたしまして、申し訳ございませんでした」

絶妙な言いまわし:「この度の失礼の段、ご海容くださいませ」

太宰治『グッド・バイ』より
キヌ子にさんざんムダ使いされて、黙って海容の美徳を示しているなんて、とてもそんなことのできる性格ではなかった。何か、それ相当のお返しをいただかなければ、どうしたって、気がすまない。

海の字がもつ寛大さにあやかる

「海容」とは、「海のようにあらゆるものを受け入れる寛大な心で、相手の過ちや罪を許すこと」です。「海」の「容(器)」という、文字から受けるスケールの大きさも魅力ですから、ぜひ手紙やメールで使いたい言葉です。

「海」の文字の本来の意味は「果てが見えない」です。右側の「毎」は、「刃物が突き刺さっている目」を示し、「見えない」ことを意味します。水を表す「氵(さんずい)」がついて、「水が広がっていて、果てが見えない」となります。

「容」の下部の「谷」は、「口」の上に「八」がふたつ重なり、ものを入れるのに適した壺のようなものを表します。上の「宀(うかんむり)」はものの輪郭、枠を示すので、「容」は「ものを入れる空間をもった物体」となります。

 失敗してしまったとき、「申し訳ございません」の代わりに「ご海容くださいますよう、伏してお願い申し上げます」と使えば、相手も「広い心をもって応えねば」と思ってくれるかもしれませんね。

続きは本書でお楽しみください。