【作文の乗りきり法】書き出しは“たった2種類”から選ぶだけ!/めんどくさがりなきみのための文章教室①

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公開日:2020/5/29

めんどくさがりな人ほど、文章の才能がある――。著書累計510万部以上の作家はやみねかおる初の実用書。 だれでも文章が上達する方法を、ぽっちゃり猫が小説形式で楽しく教えます。作文、メール、レポートから小説まで、これ1冊で文章がみるみる上達するはず!

『めんどくさがりなきみのための文章教室』(はやみねかおる/飛鳥新社)

作文の宿題乗りきり編

書き出しは「たった2種類」から選ぶだけ


 ぼくの前には、真っ白い原稿用紙が置かれている。

 そして、手には、シャーペン。そばには、消しゴム。

 シャーペンには、ちゃんと0.5㎜の芯が入ってるし、原稿用紙の予備も買ってある。

 なのに、ぼくの手は動き出さない。なぜか?

 たった1つの単純な答え――宿題の作文で、何を書いたらいいのかわからないんだ。

 もし、溜め息が綿菓子みたいに目に見えるものなら、ぼくの部屋は溜め息で埋め尽くされているだろう。

 「ゴゴゴゴゴゴゴゴ……」

 足下で、不気味なイビキがする。黒猫のマ・ダナイが、丸まって居眠りしている。

 「起きろ、ダナイ」

 ぼくは、両足でダナイを揺する。無理矢理起こされたダナイは、不満いっぱいの目で、ぼくを見てくる。

 「宿題の作文が書けない。手伝ってくれ」

 するとダナイは、大あくびと共に言った。

 「書けないんだったら、書かなくてもいいじゃないか」

 「そんなこと、できるわけないだろ!」

人間社会というのは、妙なものだな。『書けない』と言ってる人に、『書け!』というのは、無理な注文じゃないのかい?

そりゃ、そうかもしれないけど……

無理は、体によくない。――というわけで、健も一緒に昼寝しよう

そんなことしてられないよ。とにかく、書かなきゃいけないんだ

 人間は、猫と違って、文章を書く機会が多い。

 作文や日記、手紙(電子メール、LINEなどのSNS)に小論文、レポート、提案文書などなど。

 書きたくなかったら、書かなくてもいいとは言っていられない。

 しかしそのぶん、文章が書けるようになったらとってもお得!

 文章が書けるようになると、論理的に考えたり、自分の気持ちを上手に伝えたりすることができる。

 なにより、作文が書けない……と悩む時間が、なくなる。

健は、これから先、高校受験をするのかな?

たぶん……

受ける学校にもよるけど、入試に小論文を採用しているところもある。そんなとき、書きたくないから書かないと言ってたら、確実に不合格だね

…………

大学生になったら、レポートの提出が山のようにある。それに、卒業論文を書かないと卒業できないしね

 書かなければいけない文章は、書かなければいけない。

それで、どうして作文が書けないんだい?

そういえば……どうして書けないんだろうね?

書けないのには、理由がある。それを、紙に書いてごらん

えーっと……

何を書いていいかわからない
めんどくさい
文がうまく書けない

大丈夫。こんな理由なら、軽く解決できる

本当か?

まず、『何を書いていいかわからない』という健に、最初の1行の書き方を教えてあげよう

 大きくわけて、作文は2種類。

 ・中学生になった抱負や読書感想文など、気持ちを書くもの。
 ・遠足や運動会など、出来事について書くもの。

気持ちを書く作文は、テーマについての気持ちを最初に書くんだ。『中学生になった抱負』の書き出し、わたしが教えたことを覚えているかい?

ぼくには抱負がないから、正直に『中学生になったけど、抱負はありません』って書くように教えられた

そのとおり。でも、それだけだと怒られるかもしれないから、そこから先は“こんなことではいけない”“勉強やクラブ活動をとおして、なにか抱負を見つけたい”“胸を張って卒業できるように、3年間頑張りたい”と、展開していけばいい

読書感想文は?

最初の感想を書く。おもしろかったのなら『おもしろかった』。つまらなかったら、『おもしろくなかった』。そこからは、その理由を書くんだ。おもしろくない本を選んでしまっても、“こういう物語だったら、もっとおもしろかったのに”とか“ぼくなら、こう書く”と展開すれば、個性的な読書感想文になるよ

 気持ちを書く作文では、書き出しに、正直な気持ちを書くだけでいい。

 そこからは、その理由を説明する。

でもさ、正直に書いたら怒られるだろ?

本当は、怒る方がおかしいんだけどね……

遠足の作文は?

こっちは、もっと簡単。書き出しは『遠足がありました』と、事実を書く。そこからは、起きた出来事を順に書いていけばいい

 出来事を書く作文では、書き出しに、事実を書くだけでいい。

 そこからは、起きた出来事を順に書いていく。

でもさ、起きた出来事が順番に書いてある作文なんて、おもしろくないよ。先生に見せても、『もっと気持ちを書きましょう』とか赤ペンで書かれるんじゃないかな?

そんな風に、『上手に書こう、褒めてもらえるような作文を書こう』と思ってるから、書けないんだよ。大事なのは、まず書くこと

……

上手に書くコツは、だんだん教えてあげるよ


きみの書く文章はどっち?

作文のテーマによって、どんな書き出しにするかを決めよう。

気持ちを書く作文

中学生になった抱負 読書感想文 将来の夢

まず、正直な気持ちを書く。
たとえば、『中学生になった抱負』なら……

中学生になったけど、抱負はありません



なぜ、その気持ちになったか、理由を説明する。

・こんなことではいけない
・勉強やクラブ活動をとおして、なにか抱負を見つけたい
・胸を張って卒業できるように、3年間頑張りたい

出来事について書く作文

行事 観察日記 レポート 学校生活で頑張ったこと

まず、事実を書く。たとえば、『遠足の感想』なら……

昨日、遠足がありました

起きた出来事を順に書いていく。

学校に集合した健康観察をした先生の注意を聞いて、出発した目的地の公園までダラダラ歩いた


書き出しに個性を出したいなら……

台詞から書き始める

「今日、寝不足なんだよね」
遠足の途中で、友達の翔君は言いました。


景色などの情景から書き始める

雲1つない快晴の青空の下、全校生徒200人の影が校庭を埋め尽くしていた。

タイトルとは反対のことを書く

『中学生になった抱負』 文岡 健
中学生になったけど、抱負はありません。


<第2回に続く>