「白井悠介のなんとかなるさ」⑨ぼく、役者になりたいかも!

小説・エッセイ

公開日:2020/6/1

 専門学校を卒業し、ナレーション系の養成所に入ったぼくは、自信満々でした。専門学校時代にナレーション技術を褒められていたこともあって、「ふんっ、きっとぼくがトップになるだろう」なんて思っていたんです。いやぁ、若さって怖い! あの自信はどこから来てたんだろう(笑)。

 ところが、そこに通っているのは、みんなぼくと同じような人たちばかり。専門学校を卒業していて、「プロになるんだ!」という意識も高い。専門学校時代はみんなとワイワイやっていたのに、養成所ではライバル同士だからかバチバチ火花が飛んでいました。

 もちろん、それも必要なことです。声優を目指す人が全員プロになれるわけではありません。互いをライバル視し、切磋琢磨することで高みを目指すんです。ぼくも同期からいい刺激を受けて、日々、声優としての技術を磨いていました。

 ところが、養成所に入って1年半が過ぎた頃、ぼくの脳みそが誤作動を起こしてしまったんです。

 ぼく、声優よりも“役者”になりたいかも……!

 幼い頃からアニメやゲームが大好きで、キャラクターに命を吹き込む声優という職業に憧れ、その夢を叶えるためにわざわざ上京してきたのに! それなのに、バグってしまったぼくは声優から役者へと大きく方向転換することにしました。

 思い立ったらもう居ても立っても居られません。役者になりたいという気持ちに歯止めが効かず、ぼくはそのまま養成所を辞めてしまいました。

 それから、役者になるためのオーディションを受ける日々がスタート。とはいえ、一般公募でいきなりデビューするチャンスを掴むなんて夢のまた夢。まずはその足がかりとして、事務所に所属するためのオーディションやワークショップを受け続けました。

 ただ、そんな日々を1年半くらい続けたあるとき、またしてもぼくは思ってしまったんです。

 やっぱり、声優になりたいかも……!

 せっかく声優の養成所を辞めて方向転換したのに、結局また同じ道に戻るんかい! きっと誰もがツッコみたいですよね。ぼくもあの頃の自分をドツキたいです(笑)。当時はまだ22、23歳。完全なる迷走期でした。

 結果、ぼくはもう一度声優の道を志すことを決めます。今度こそ、ちゃんとしよう。固く決心したぼくは、大手声優事務所が運営する養成所の門を叩きました。そこは無料の体験レッスンが開催されていたので、まずはそれを受けてみることに。すると、ぼくは声をかけられました。

「あなたは優秀なので、入所金を無料にします。うちで勉強しませんか?」

 キターーー! やっとぼくの才能を認めてくれるところに出会えた! まさに有頂天だったぼくは、その養成所に入ることを決め、あらためてイチから声優を目指しはじめました。入所前から期待されているわけだし、もうデビュー目前だな。なんてことも思いながら。

 でも……そんなに甘い世界じゃないんですよね。有頂天だったぼくがどうなってしまうのか。次回も引き続き「迷走編」をお届けします(笑)。

今週の一言:迷走はおとなになってもするものか?

構成協力=五十嵐 大 写真=干川 修 スタイリング=小林かおる ヘアメイク=川口愉里恵
衣装協力=ミックスメッシュワンピース(gomme/GOMME HOMME) 2万4200円/ラフォーレ原宿店 TEL 03-3796-4336

第10回につづく

しらい・ゆうすけ
1月18日、長野県生まれ。2011年に声優デビュー。2015年に出演した『美男高校地球防衛部LOVE!』で注目を集め、以降、『アイドルマスター SideM』『アイドリッシュセブン』『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』などの話題作への出演が相次ぐ。「理想の緑」をブランドアイコンとする、オリジナルアパレルブランド【MIDORI】も立ち上げたほか、YouTuberとしての活動もスタートし、「しらいむチャンネル」で自由気ままな動画も投稿中。
公式Twitter:@shirai_universe
公式YouTubeチャンネル:しらいむチャンネル
MIDORI公式サイト:アパレルブランド