不安は不安を呼び込む… “未来への不安”はどうすれば減少する?/まんがでわかる 最高の体調⑫

健康・美容

公開日:2020/6/13

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『まんがでわかる 最高の体調』(鈴木祐:著、 ながみちながる:まんが/クロスメディア・パブリッシング)

「不安」が心身の機能を低下させる

「不安」もまた、「炎症」と並ぶ文明病の重大な要素の一つです。

「不安」が心身にもたらす影響は大きく、まず、慢性的な不安は記憶力を低下させます。インド国立生命科学研究センターの研究[1]では、常に不安を感じている人は、脳の海馬(記憶や学習能力に関わる器官)が小さくなる現象が認められました。

 続いて、不安は判断力を奪います。物事がうまく進んでいるときには、私たちの脳は衝動や欲望を制御できます。しかし不安が高まると、さまざまな化学物質の連鎖によって、より原始的な脳の働きが優勢になり、衝動的になりやすいのです[2]。

 更に、不安は死期を早めます。7万人の高齢者を対象にした観察研究では、日常の不安レベルが高い人は心疾患や脳卒中のリスクが29%も上昇していました[3]。

 最後に、不安は不安を呼び込みます。不安のせいで脳の扁桃体が敏感になっていき、やがて少しのストレスにも過剰な反応を起こすようになるのです[4]。

 不安は文明病の一種と書きました。では、古代の狩猟採集民に不安はないのかというと、そうでもありません。猛獣や毒性植物などの危険と常に隣合わせ、獲物や木の実などの食料も常に手に入るとは限らない……大変不安に満ちた生活です。

 しかし、原始の不安には、シンプルで対処しやすいという利点があります。猛獣に襲われれば戦うか逃げるかの二択を選ぶしかありませんし、食料が見つからなければサバンナを探し回るか飢えをガマンするだけです。

 オックスフォード大学の人類学者ヒュー・ブロディ氏は、次のように述べます[5]。

「狩猟採集民は今現在に神経を集中する。行動を決めるのは目の前の獲物であって、またの機会を待つ、あるいは、長期的な戦略に立って意思決定を下すことはない。」

 つまり、狩猟採集民の時間感覚は「今、ここ」がメイン。現代のように、事業の計画や人生設計など、より複雑な「未来への不安」を抱くことはなかったのです。

 しかし、農耕の文化がもたらされたことで、狩猟採集民の時間感覚に変化が生まれました。農耕を効率よく進めるには、長期的な時間感覚が必要です。秋から初冬にかけて種をまき、変化のない冬を耐えて待ち、ようやく初夏に収穫する……。1年も先のことを考えて行動する習慣は、それまでの人類にとってまったく未知のもの。ここにおいて、人類は初めて「遠い未来」を想定せねばならなくなったのです。

未来を今に近づければ不安は減少する

 古代と違って未来の感覚が遠くなった現代では、先の見えないことへの不安は次々に生まれ、避けて通ることはできません。

 そこで必要な解決策が、「未来を今に近づける」ことです

 例えば、「5年後の自分を想像してください」と言われたとき、どんな感覚が生まれるでしょうか? 5年後の自分は、今の自分と変わらないぐらいの存在感を持った存在でしょうか? もしそうであれば未来との心理的距離は近いと考えられます。これは、心理学で「自己連続性」と呼ばれる考え方です。

 スタンフォード大学のブライアン・ナットソン氏は、実験[6]で「未来との心理的距離が近い者ほど不安に強く、セルフコントロール能力も高い」ことを明らかにし、「(自己連続性の高さとは)未来の自分の身になって考えられるということだ。そのため、現在の決定が未来に及ぼす影響を実感できるようになる」と述べています。

 ダイエットを例に考えてみましょう。心理的距離が遠いと、ダイエットに成功した自分の姿に現実感を持てず、未来が絵空事のようにしか感じられません。結果、つい目の前のケーキに手が伸びてダイエットは失敗。ところが心理的距離が近いと、ダイエットに成功した自分の姿にリアリティが生まれ、未来のメリットを我が事として捉えられます。結果、ケーキも我慢でき、ダイエットに成功します。

<第13回に続く>