それは真の空腹ではない。「デブレイクスルー」を経験して空腹の呪縛から解放されよ/痩せない豚は幻想を捨てろ⑤

健康・美容

公開日:2020/6/23

数々のダイエットで挫折してきたダイエット難民たちへ。ブログとTwitterで話題のテキーラ村上による「テキ村式ダイエット」のすべてがここに! 『痩せない豚は幻想を捨てろ』より、テキーラ村上の魂がこもったダイエットメンタル強化法を紹介します。

『痩せない豚は幻想を捨てろ』(テキーラ村上/KADOKAWA)

空腹の幻を打ち破る

 このステップで伝える事は、もしかすると人類史上最大の発見であり、下手するとテキ村がノーベル平和賞を授与されかねない事実なので心を落ち着かせてから読むように。

 なんと、お前は腹が減っていない。これは大事な事なので2回言う。

 お前は実は、腹が減っていない。

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「いや、おなかが減ってるから我慢できないんじゃん」
「何言ってんのこの人」
「元々頭おかしな人だとは思ってたけど、ついに完全にイカれたね」

 よろしい、言いたいことはそれだけだろうか。

 諸君も少なからず経験あると思うが、たくさん食べ続けていると胃が大きくなったような気がしていくらでも食べたくなるし、食事制限中だと逆に胃が小さくなったような気がして少し食べただけで満腹になってしまう。

 しかし胃は伸縮するため、実は大食を続けている時の胃と小食を続けている時の胃の容量は変わらない。食べる量は違うのに後者は少量で脳が「腹いっぱい」と感じるだけなのである。

 つまり、「腹は減っていないけど、とりあえず何かを食べたい」「なんか口が寂しい」という状態になっているだけなのである。三度の食事の間に、清涼飲料水やスナック菓子に手が伸びる。食後3時間もあけばすぐ腹が減る。これは完全にお前らのデブ脳がそうさせている。

 常に食欲を満たしてきてしまったために、腹が減る前にメシを食うのがデフォルトになってしまった。お前らは酒やタバコのような嗜好品の感覚で、メシを食らう。腹が減ったから食べる、のではなく、食べたいから食べる。

 そう考えると、多くの場合その空腹感は実は幻であることが分かる。しかし心配しなくてもいい。お前らはこれから本当の腹減りの苦しみ、いわば腹減りのエレクトリカルパレードを身をもって知る事となる。これはもう嫌でも知る。

「いや、おなかが減る苦しみなんか知ってるよ。それが我慢できなくて困ってるんだから。私の空腹は幻なんかじゃない」

 いや、真の空腹をお前はまだ知らない。光の速さで食い物に手を伸ばしてきたお前に、空腹を語る資格はないんだよ。俺だって最初は知らなかったさ。俺が本当の空腹を知ったのは、忘れもしない減量中のある日の朝のことだった。

 その日、俺は起き抜けにベッドからキッチンへ直行し、冷蔵庫を開けた。何か食べ物はないか、と。冷蔵庫を開けると、一袋のサラダチキンが目に飛び込んできた。なんの変哲もないサラダチキンである。当然パサパサしててうまくはない。サラダチキンを本気でうまいと思って食べている奴は頭がどうかしている。そして俺はなんと、前日の夜もサラダチキンと玄米しか食べていなかった。

 俺は、サラダチキンが嫌いなのだ。食いたくもないよな? 俺は見たくもない。しかししゃあなし、またコレを食うか……なんだか嫌になってきたな……と思いつつ、手に取り、袋を開ける。そして一口食べた。驚くべき事が起こったのは、その時である。

 う、うまい。

 これは本当にサラダチキンなのか? まるでご飯のおかずになるために生まれてきたような味じゃないか、そう思った俺は急に米が欲しくなり、ガクガクと震える脚で炊飯器に駆け寄った。

 キッチンに立ったまま、むさぼるようにサラダチキンのせご飯を食べた。食欲が溢れて止まらない。茶碗に子供の拳ほどの大きさに盛ったご飯が一瞬でなくなった。この世のものとは思えないほどに、うまい。冗談抜きでうまい。うますぎて涙が出そうになった。

 あの嫌いなはずの、薄い塩味だけのサラダチキンが、である。一人、サラダチキンをむさぼりながらキッチンで叫んだ。

「俺はゾンビだ! 俺は今、ゾンビと化している!」

 といった具合で、人は本当の空腹に直面すると嫌いなものですらおいしくなるのだ。

 例えば、まずは1週間だけ食事の量を減らしてみる。ランチだけ、もしくは夜だけ極端に減らすのもいい(食事について詳しくは第二章で後述する)。週の序盤はコンビニのお菓子コーナー、総菜コーナー、パンコーナー、アイスコーナーなどに自分の意思とは関係なく引き寄せられる。勝手にヨダレが出る。序盤は実に、腹が減る。死ぬほど、腹が減る。とにかく腹が減る。正気の沙汰ではない。

 お前は晴れてゾンビの気分が味わえる。バイオハザード的空腹。それでもなんとかここを乗り切る。心を無にして減量食を食す。吉野家でふっくらアツアツに炊かれた大盛りの白飯に、もちろんツユダクで、ジューシーな牛肉と、卵と、それらを絡ませめちゃくちゃにして食べたい。糖質・フィーチャリング脂質の誘惑である。

 しかしなぜか豆腐や野菜やサラダチキンを食べることを強いられる。苦痛の極みでしかない。修行僧かよとも思う。

 でもここさえ乗り切れば、後半になるにつれてだんだんとカラダが慣れてきて食べ物を見ても「ハハッ煩悩がなんか言ってる」といった具合で第三者目線になり空腹が人ごとのように感じられてくる。

 まるで自分を俯瞰するような、それでいて今確実に脂肪が減っている事はなんとなく実感できる、何か幽体離脱的な感覚ですらある。断っておくが、テキ村はスピリチュアルの類いを一切信じない。しかも、驚くべきなのはこれだけではない。

 なんと、それまではご飯が大盛りでも足りなかったのに、なんと小盛りでも足りるようになる。これまでがいかに尋常ではない食欲だったかが分かる。基本食い過ぎなんだよ。カロリー大魔神かよ。

 お前らはこれからイヤでもこれを体験する事になるが、実際に経験してみるとさぞビックリすることだろう。テキ村式ダイエットにおいてはこれをデブのブレイクスルー、通称「デブレイクスルー現象」と呼ぶ。

 まあ、要は、慣れてくる。人間が進化の過程で身につけた「慣れ」は偉大である。ここまでくれば、満腹を感じるであろう脳のどこかしらの部分も通常の状態に戻っているだろう。

 デブ飯を食らいまくってた頃の半分の量にしても十分満腹になるはずだ。三度食事をしているにもかかわらずの「口さみしい」や空腹感は、ただの幻にすぎないのだ。

 常にそのことを頭に入れておけば「おなかが空いたような……あ、今私は幻に脅されている!」と気づくことができ、食べる量も自然に減る。

まとめ
減量食に慣れ、幻の空腹の呪縛から解放されよ。

<第6回に続く>