ポジティブなだけではダメ! 人間心理の特性を知って極端な見方から抜け出そう/1分自己肯定感③

暮らし

公開日:2020/7/2

成功者は日々、自己肯定感のメンテナンスを行い、試行錯誤しながら失敗を成功につなげるサイクルをつくっているもの。毎日1分、自己肯定感を高めるメソッドを実践すれば、あなたもきっと「なりたい自分」に近づけます!

『1分自己肯定感 一瞬でメンタルが強くなる33のメソッド』(中島輝/マガジンハウス)

鋼の1分マインドセット②
メンタルが強い人は、「多面思考」ができる

 物事をポジティブにとらえ、失敗してもくじけず、立ち直れる人だから成功できる―多くの人はそう信じています。

 実際、どん底時代の私がずっとお世話になり、外へ出る力を与えてくれた先輩の経営者は、常に前向きでした。

 仕事でトラブルが発生しても、「起きてしまったことは仕方がない」と言って、部下を励まします。不景気などで経営環境が悪化しても、「うまくいかないところを見ていてもしょうがない」と打開策を立て、前に進んでいく姿も何度も見てきました。

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 しかし、振り返ってみると常に前向きだと思えたその人は、忙しい日々の中に必ず自分1人で考える時間をつくっていました。

 1人になったその時間で「起きてしまったこと」「うまくいかないところ」と向き合い、ポジティブ、ネガティブの双方から今後のことを検討し、結論を出していたのです。

 まわりにいる人のほとんどは、本人が導き出した「結論のメッセージ」にしか触れません。

「起きてしまったことは仕方がない。トラブルを解決する過程に意味がある」

「悩んでいてもしょうがない。今回は、うまくいかないやり方がわかったと解釈して、別の方法を試してみよう」

 こんなふうに言って周囲を引っ張っている姿を見れば、「なんて前向きなんだろう」と思うのも無理はありません。

 でもそこに表れている言葉や行動は、自分の中でポジティブとネガティブの折り合いをつけ、そのあとに出てきた結論の部分。「あの人は根っから楽観的なのだ」と結論づけるのは早すぎます。

「あの人はポジティブだからいい」
「ネガティブな考え方はダメ」

 ちまたで幅を利かせているこういった「ポジティブ信仰」ともいえる考え方は、〝大きな誤解〟です。

 こんなふうに多くの人がどちらか一方に偏って考えてしまうのは、人間の特性に照らし合わせてみると、仕方がないことかもしれません。なぜなら、人間は誰しも「自分が特別である」と考えるからです。

 たとえば、あなたがささいな理由でパートナーとケンカになってしまったとしましょう。

 言い合いになり、引っ込みのつかない状況です。そうなったらパートナーに対して腹が立つのが自然ですし、しばらく冷静でいられなくなります。

 そして、そのネガティブな感情に引っ張られ、パートナーとの関係のとらえ方も変化し、「こんなにガンコな人とはもう、別れる!」と思うこともあるでしょう。

 物事のとらえ方と感情はお互いに影響し合って変化するからです。

 ネガティブな感情はマイナスの物事のとらえ方と、ポジティブな感情はプラスの物事のとらえ方と相性がよく、さらに言えば、感情と物事のとらえ方はその後の行動に強い影響を及ぼします。

 さて、パートナーとケンカになったあなたは、気心の知れた友人に連絡を取ることにしました。そこであなたはパートナーに関するグチをぶちまけます。

 そのとき、あなたのことをよく知る親密な友人であればあるほど、「うんうん」と共感しながらも、そっと別の見方を提案してくれるでしょう。

「そういうの、よくあることだよ。私もこの前、似たようなグチ聞いてもらったよね」
「あなたも少し言い過ぎたんじゃない?」

 そこで、あなたは「そんなことないよ……」とムッとするはずです。これも自然な反応です。誰しも自分の置かれた立場は特別で、自分の悩みは自分にしかわからないと思っていますから、たとえ友人の真摯なアドバイスにも一瞬、反発を感じるわけです。

 でも、よくよく考えてみると同じような理由でケンカをしている夫婦や恋人は、いくらでもいますし、両者のうちどちらかが一方的に悪いことなどめったにありません。

 その事実に気づけば、「そっか、うちだけじゃないよな」と冷静になることができ、ネガティブな感情がフラットな状態に近づいていきます。すると、パートナーとの関係のとらえ方も極端な見方をしなくなります

 しかし、ここで人間の心理の特性を知らないと、友人のアドバイスがあっても、プラス、マイナスのどちらかに偏ってしまっている自分の物事のとらえ方に、ますます執着してしまいます。

<第4回に続く>