その反省、極端になっていませんか? 隠された「脳の特性」を理解すると…/1分自己肯定感④

暮らし

公開日:2020/7/3

成功者は日々、自己肯定感のメンテナンスを行い、試行錯誤しながら失敗を成功につなげるサイクルをつくっているもの。毎日1分、自己肯定感を高めるメソッドを実践すれば、あなたもきっと「なりたい自分」に近づけます!

『1分自己肯定感 一瞬でメンタルが強くなる33のメソッド』(中島輝/マガジンハウス)

思考を〝メタ視点〟で眺める

 職場からの帰り道、「今日の取引先での発言は失敗だったな」と思い返しているとしましょう。働いていれば、誰もが一度はそんな内省をしたことがあると思います。

 物事のとらえ方がプラスに傾いてしまいがちな人は、「でもまあ、大丈夫だろう」とプラスすぎる発想で反省ゼロだったり、逆にマイナスに傾いてしまいがちな人は、「あんな失敗をしてしまう自分は、なんてダメなんだろう」とますますマイナスの想像をふくらませて泥沼に沈んでしまいます。

 一方、失敗を成功の踏み台にできる人は、失敗を起点にしてメタ認知を行い、物事のとらえ方を深めていきます。ただ自分の思考の流れに任せてしまうと、プラスかマイナスどちらかに偏ってしまいがち。したがって、次の「内省」「逆転の発想」「改善案」の3つのステップに沿って考えると、メタ認知はグッと建設的になります。

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①【内省】今の自分が疑問に思っていることを素直に問う。「なぜ?」「どうして?」「たとえば?」
「どうして、あの場であんな発言をしてしまったのだろう?」
「きっと無言になる場の空気が苦手だからだ」
「それはコミュニケーション能力に不安があるからかもしれない」

②【逆転の発想】内省で出てきた答えの、真逆の発想を問うてみる。
不安が強いことの効用もあるのでは?」
「昔から自分は他の人に比べて事前の準備に力を入れている」
「上司から充実した資料をつくってくれると褒められたこともある」

③【改善案】次回のチャンスがあれば、なにか〝よくできること〟はないか?
「そう考えると、今回は準備不足だった。次回はどう改善できるかな?
「次からは取引先のことをもっと調べていくようにしよう」
「調べた上で質問を用意していけば、会話に詰まることはないはず」
「取引先のことを教えてもらいたい聞き手のスタンスで向き合えば、相手も気持ちよく話してくれるに違いない」
「こういうことに気づけるなら、コミュニケーション能力に不安があるのも悪くないな」

 こんなふうに自分の弱点についての見方を変えることができれば、プラスとマイナス、どちらか一方に物事のとらえ方が偏ってしまうこともなくなっていきます。

隠された「脳の特性」

 極端で一方的な思い込みは、多かれ少なかれ誰もが持つ考え方で、「認知バイアス」といいます。認知バイアスとは、人間が生まれながらに持っている「脳の特性」。

◆バンドワゴン思考―「みんながいいと言ったものがよく見えてくる」

◆ コントロール幻想―「自分がコントロールできないことに対しても、100%自分のせいだと思えてしまう」

◆ 極端の回避性―「8000円のコース、5000円のコース、3000円のコース」が提示されると、多くの人は失敗が怖いので「無難な5000円(真ん中)」を選んでしまう

 これらは人間の脳のはたらきにおける「あるある現象」のほんの一例です。

 自分はそういった「バイアス(偏り)」とは無縁。できるだけ公平に、冷静に物事を見るように心がけている―そういう人もいるかもしれませんね。

 ですが、どんなに頭のいい人でも、生きているかぎり人間は「認知バイアス」から逃れることはできません。それに他人の「認知バイアス」ははっきりと見えて指摘できても、自分がしていることになると自覚できないものです。

 この人間の特性を理解していると、「仕事が忙しくて自分ばっかり損をしている気がしていたけど、人間は誰しも『自分が特別である』と考えるからだな」といったように別の角度から物事をとらえることができます。

 つまり、人間の特性を知ることで物事のとらえ方に深みと広がりが生まれ、感情も行動もコントロールしやすくなるのです。

 また、「恐怖」や「悲しみ」「喜び」といった人間の「当たり前の感情」を知っておくのも1つの「人間理解」につながります。

 身近な例で言えば、私たちは人前に出ると緊張します。どんなにキャリアを積んだ芸人さんも舞台に出るときは緊張するといいます。緊張はネガティブなことだと考えられがちですが、人間の特性として自然な反応です。

 ところがここで、人間の特性がわからない人は「どこかに緊張しない方法はないか」と考えてしまいます。人前に出ると緊張するのは当たり前の反応ですから、しなくなる方法を見つけるのは容易ではありません。

 もっとも簡単で、最悪なのは「緊張するから人前に出ない」という行動です。

 でも、それは人生を好転させるチャンスをみずから手放す選択でしょう。

 逆に、何事もうまくいっている人は「緊張したままでも〝いい結果〟が出るような方法はないだろうか?」と考えます。

 プレゼン前、緊張して話せなくなったときのために、プレゼンシートをつくり込む。

 極度の緊張を解くには「慣れが一番だ」と気づき、何度も本番さながらに話し方のトレーニングに励む。

 緊張のドキドキを、「これは今からやるプレゼンへの期待のワクワクなんだ」ととらえる。

 人間の特性を逆手にとって、行動を変えていけるマインドセットを身につけているのです。

<第5回に続く>