人と比べて自分を責めてしまう… 「見つめなおしメモ」で切り換え上手に/1分自己肯定感⑦

暮らし

公開日:2020/7/6

成功者は日々、自己肯定感のメンテナンスを行い、試行錯誤しながら失敗を成功につなげるサイクルをつくっているもの。毎日1分、自己肯定感を高めるメソッドを実践すれば、あなたもきっと「なりたい自分」に近づけます!

『1分自己肯定感 一瞬でメンタルが強くなる33のメソッド』(中島輝/マガジンハウス)

〝他者のモノサシ〟から自由になる

 さて、本パートからはいよいよ実践編。実際に自己肯定感が高い人が日々「1分で」実行しているテクニックを、コーチングの理論をもとにしてくわしく解説していきましょう。このパートでは「トライアングル」のうち、特に「感情」にアプローチする方法をご紹介していきます。

 失敗したのに、ケロッとして「また次、がんばります!」と言える人。

 一方、後悔したり、反省したり、落ち込んだりと、失敗の記憶に引きずられてしまう人。

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 ここまでのパートでご説明したように、その違いは感情のコントロールにあります。

 感情がネガティブに大きく傾いているとき、人の心は自責感が強くなっていきます。

「周囲の人から求められていることに応えられない自分」
「こうあるべきなのにできない自分」
「彼や彼女はできているのに、うまくやれない自分」

 そんなふうに誰かと自分を比べては責めてしまい、他者評価でみずからを苦しめてしまうとき。こうしたネガティブな考え方のクセ、認知のゆがみは自己肯定感を形づくる「6つの感」と密接に関係しており、メンタルを大きく揺さぶります。

◆ 自尊感情……本来、自分には価値があると思える感覚の自尊感情が揺さぶられると、わずかな出来事を根拠にして物事がうまくいかない、自分に価値がないと感じる。

◆ 自己受容感……ありのままの自分を認める感覚である自己受容感がネガティブな方向に向かうと、物事の変化に対して自分が対応できず、悪い結果になると思い込む

◆ 自己効力感……自分にはできると思える感覚である自己効力感を失うと、自分の短所や失敗を実際よりも大げさに考えるようになるだけでなく、本来持っている長所や自信も小さく見積もってしまう

◆ 自己信頼感……自分を信じられる感覚である自己信頼感が揺れてしまうと、悲観的なフィルターを使って自分や世の中を見るようになっていく。何事も悲観的に思えるので、当然ながらネガティブ感情がさらに強くなる。

◆ 自己決定感……自分で決定できるという感覚の自己決定感が揺らぐと、物事を白か黒かでしか見られず、完璧にできそうなときしか決断できないようになっていく。自分で決めたことで少しでもミスが生じると、決定そのものが失敗だったと否定的になる

◆ 自己有用感……自分はなにかの役に立っているという感覚である自己有用感がネガティブな方向に向かうと、自分や他人に対して「○○すべき」「○○でなければならない」と考えるようになる。脅迫的になり、自分も他人も追い込んでしまう

「6つの感」のいずれかがネガティブな方向に大きく揺れてしまうと、自己肯定感全体が大きく低下してしまいます。

オートマティック・シンキング(自動思考)に気づけるか

 ネガティブな感情をうまくコントロールできなかったことがきっかけとなって認知のゆがみが生じてしまったとき、注意したいのは自動思考を鵜呑みにしないことです。

 自動思考とは、ある一定の出来事が起こったときに、本人の意志とは関係なく、パッと自分の中から生まれてくる考え方です。たとえば、

 上司に仕事の段取りについて、ちょっと注意を受けた
 ↓
「ああ、また自分がダメだから怒られた」と自責の念がわいてくる

 というような感情の動きのこと。自尊感情が揺れ、「わずかな出来事を根拠にして物事がうまくいかない、自分に価値がないと感じる」ようになったとしたら、それは現実をとらえるフィルターがくもっているにすぎません。

 あるいは、自己有用感が揺らぎ、自分や他人に対して「○○すべき」「○○でなければならない」と考えるオートマティック・シンキングが働いたとしましょう。

 今期、わが部署の業績が低下した
 ↓
 デキの悪いメンバーにノルマを課して、モチベーションを上げなければ!

 こういう思考の危険なところは、熟慮を経ず、短絡的な方向に走ってしまうこと。

 重要なのは、可能性に心を開き、自分の感情や考えを正しく修正できるかどうかです。

1分コーチング テクニック①
感情のゆがみに気づく「見つめ直しメモ」

 ここで「見つめ直しメモ」のテクニックが役に立ちます。これはオートマティック・シンキングを修正する、世界中でスタンダードに行われている認知療法の一種。ネガティブに振れるきっかけとなった出来事を振り返り、そのときに浮かんだ考えをパッと書き出すというものです。

1 ネガティブな感情を持つきっかけとなったのは?
  いつ?
  どこで?
  誰と?
  何をしていたとき?

2 そのときパッと浮かんだオートマティック・シンキングは?

 ここで書き出した思考が、先ほどの「6つの感」のどれをグラつかせているかをチェックすることで、自分がおちいりやすいネガティブな感情の傾向が見えてきます。

 何度か「見つめ直しメモ」をくり返し、自分の傾向がつかめてくると、「あ、今は自己否定的な思考が始まっているな」と気づくことができるようになります。

 くり返しますが、うまくいっている人が失敗の後もすぐに切り替えられるのは、決して生まれつきではありません。認知のゆがみに気づき、自己否定的な思考におちいらないよう、自己肯定感を高め直しているからです。


<第8回に続く>