読書をすると「記憶力」と「思考力」というご褒美がもらえる/「記憶力」と「思考力」を高める読書の技術②

文芸・カルチャー

公開日:2020/7/17

忙しい人でも簡単にできる、法律家のすごい読み方を伝授! 木山 泰嗣氏が仕事にも学びにも効く読書法を紹介します。読解力はもちろん、記憶力、思考力のすべてを鍛えることができる著者独自の手法が満載です。

『「記憶力」と「思考力」を高める読書の技術』(木山泰嗣/日本実業出版社)

思考力と読書

 同時に、こうした文字情報を使って、人は「考える」ことができます。体験という映像情報だけで「思考」することは難しいものです。体験を言語化したり、それを別の言語化した体験と結びつけたり、比較したりすることで、人は思考するのです。

 読書から得られるもう1つの大きな効用は、この「思考力」ということになります。いまの試験は、大学入試改革によっていろいろ問題提起もされていますが、小学生から大学生まで基本的には「知識」重視から「思考力」重視に変わっています。

 しかし、思考をするためには、思考をするための「情報」が必要です。これまでは、この情報をまずは「記憶」することができる人が優秀とされていたのですが、ネットで検索すれば即座に情報を得られる時代になったいま、そうした情報の記憶ではなく、与えられた大量の情報をみて、それを処理して「思考」できる人が、入試でも評価される試験に変わりつつあります。

 しかし、忘れてはならないのは、そもそも事実を5W1Hで正確に把握して記憶する力のある人は、自ずと日常的にそれを使って、物事を「思考」している、ということです。

 ということは、記憶しようとする事実が多い人のほうが、現実には「思考力」も高くなるはずなのです。そう考えると、古くから「まずは暗記せよ」という教育がされてきたのも、意味があると思えます。つまり、「記憶力」と「思考力」は切り離されて、お互いに独立して存在するものではなく、また一方があればよいというものではなく、両者は相互に結びつくことで、試験でも社会でも「大きな力」になっているのです。

 わたしは浪人をしましたし、大学に入ってからも必修科目の単位を落としました。

 また、司法試験に3回不合格になりましたし、司法試験合格後の司法修習でも劣等感をもちました。しかし、結果をみると、偏差値70以上の難関私立大学に合格し、合格率2%の司法試験にも合格して弁護士になることができました。弁護士時代には、勝訴率が10%を割る税務訴訟という国税庁と戦う難しい裁判でも勝訴判決を多くもらいました。

 さらに、弁護士5年目の2008年(33歳)の3月から本を出版するようになり、現在の著書は50冊以上となっています。2015年に大学教員に転身し、いまは税法研究者としては1年に毎年2、3本以上の研究論文を公表しています。

 なぜ、これらのことが実現できたかと改めて考えてみますと、「記憶力」をベースにした「思考力」を活用していたからだと思います。こうした技術を養ってくれるのは、読書です。

 読書は、はかり知れない力を、わたしたちにもたらしてくれます。あなたも、この本を手に取られたということは、おそらく直観で、そのメリットを感じ取られていたからです。

自由で気ままに楽しみながら読めばいい

 しかし、こうしたメリットがあるにもかかわらず、読書をする人は少ないのが実際のようです。それは、読書感想文を義務で書かせられたり、あるいは巷にある読書に関連する、これまでの本の多くのテーマが「速読」だったように、「本は速く効率的に読むことが求められる」という誤解をしていたりする人が多いからだと思います。

 読書は、あなたに大きな力を与えてくれますが、義務でするものではありません。

 また、「わたしは30分で読み終わった。あなたは3時間もかかったの?」と非難されるものでもありません。なぜなら、読書は極めて個人的なものだからです。

 毎日の食事のように、あるいはカフェでスイーツを食べながら紅茶を飲んだり、ゆったりとホテルのラウンジでアフタヌーンティーを楽しんだり、スタバ(スターバックスコーヒー)でYouTubeの動画をスマホの画面でみながらコーヒーを飲むように、自由で気ままに、好きなときに楽しみながら読むのが読書です。

 そう考えていただけると、読書の堅いイメージから解放されるのではないでしょうか。読む本も、他人に強制されたり、薦められたり、そんなことはありません。どんなにやさしい内容でも、どんなに変わった内容でも、どんなにエッチな内容であっても、興味があるものを自由に選んで読めばよいのです。

 人に報告することも不要ですし、読んでいる本の内容を他人からチェックされる必要もありません。いわば誰にも知られずに、ひっそりとこっそりと、好きなものを好きなときに、自由に読む。それだけです。

 それだけのことですが、本書でこれからお話しすることなどを意識して読むと、読書からは「記憶力」と「思考力」という、勉強にも仕事にも役立つ「大きな力」が得られます。これは自ら、本を選び、時間を投入して読んだ人だけに与えられるギフト(プレゼント)だと思います。読書には、ご褒美があるんですね。

<第3回に続く>