仕事で必要な資料を読みこむ… これは読書になるの?/「記憶力」と「思考力」を高める読書の技術④

文芸・カルチャー

公開日:2020/7/19

忙しい人でも簡単にできる、法律家のすごい読み方を伝授! 木山 泰嗣氏が仕事にも学びにも効く読書法を紹介します。読解力はもちろん、記憶力、思考力のすべてを鍛えることができる著者独自の手法が満載です。

『「記憶力」と「思考力」を高める読書の技術』(木山泰嗣/日本実業出版社)

3 リサーチと読書の違い

 読書というのは、文字どおり「書を読む」ということです。書物を読むという語感からすると、従来の読書は紙の書籍を読むことでしたが、電子書籍が一般化した現在ではそれも当然ながら読書に含まれると思います(ただし、わたしは電子書籍を購入して読んだことがありません。自分の本で電子書籍化されているものも多くありますが、自著ですら電子媒体で読んだことがありません)。

 いずれにせよ、現代では、紙と電子を分ける必要はないと思います。一方で、読書と分けて考えるかどうか悩むものとしては、リサーチが挙げられます。

 わたしなどのように研究をしている人の場合、論文を日常的に大量に読みます。法学研究の場合は、これに加えて判例も大量に読みます。また、学術書(体系書)も常時読んでいます。これらも書を読むという意味では、人が書いた文章を読むわけですから、広い意味では読書になるのだと思います。

 ただ、わたしの考える読書には、リサーチの対象となる資料、論文、判例、文献などの読み込みは含まれません。なぜなら、前述したように読書というのは、自由きままに好きなように、自分の純粋な好奇心の赴くままに楽しむものだと思っているからです。

 もちろん、仕事で必要な文章や資料や文献も、熱心に専門的に取り組まれている人は、「知的好奇心がある」とおっしゃるかもしれません。

 しかし、あくまで仕事で必要になるために読むものは、基本的にはそれは業務の一環であり、また学生がレポートや卒論を作成するために図書館で調べて必要な箇所を必要な限度で読み取る文献の読み込みも、あくまでリサーチ(調査)の対象にすぎないと、わたしは考えています。

 そして、電子書籍を読まないわたしも、大学・大学院の研究・教育において日々読み込む文献は、データベースを活用したオンライン上のものであることも多いです。これらは、わたしのなかでは「リサーチ」であり、「読書」には分類されません。

<第5回に続く>