「ちょっとおかしいのよ。わたしのパンツまで盗んでいくの…」もしや認知症?/子育てとばして介護かよ⑦

暮らし

更新日:2020/7/13

子育てとばして介護かよ

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:

30代で出産する人生設計だったのに、気づけば40代に突入…いろいろ決断すべきタイミングで、なんと義両親の認知症が立て続けに発覚!
仕事の締切は待ったなし、夫の言動にもやきもきする――そんな現実に直面したらどうする? 久しぶりに会った親が「老いてきたなぁ」と感じた人は必読! 『子育てとばして介護かよ』(島影真奈美:著、川:マンガ・イラスト/KADOKAWA)から“書き下ろし”を含む試し読み連載です(全9回)。

『子育てとばして介護かよ』(島影真奈美:著、川:マンガ・イラスト/KADOKAWA)

もしや認知症? …でも面と向かってそうとは言えない

「最近ね、物騒になっていて困るの」
「そうそう、あの女ドロボウだろう? 早く出て行ってほしいんだが……」

 義父母が顔を見合わせうなずき合う。義母によると、「2階の女性」は夜中になると階下にやってきてタンスの中を物色し、あれこれものを盗んでいくという。

「この間も、あれだろう? カーディガンを盗まれたんだよな」
「そうなの! すごくお気に入りだったのに」
「けしからんな」
「しかも、ちょっとおかしいのよ。わたしのパンツまで盗んでいくの……」
 義母が顔を赤らめ、恥ずかしそうに身をよじる。

 ぶっちゃけ、認知症の症状じゃないですかね?
 そんなセリフがのど元まで出かかったけれど、グッと飲み込む。さすがにそれを言うのはマズいだろうと理性が働いた。
 ただ、黙って聞くだけに徹することもできなかった。

「思い切って家のなかに防犯カメラをつけてみるのはどうですか」
 自分でもどうしてこう、おせっかいなのかと思う。

「それはいいアイディアね!」
 最初に飛びついたのは義母だった。ところが次の瞬間、「でも……」と表情をくもらせる。

「何か気になることがありますか」
「すごくいい案だと思うんだけど。でも、あの方がどう思うか……」
「あの方、ですか?」
「そう、お二階にいらっしゃるあの女性の方ね。見張られているみたいで、気を悪くするんじゃないかしら」
「え、例の女ドロボウですか?」
「あなた、声が大きいわよ!! 聞こえたらどうするの」
「すみません……」

 どうにもややこしい話になっている。義母の話をまとめると、女ドロボウには出て行ってほしいが、できる限りことを荒立てたくない。穏便にすませたいということらしい。

「だって、すごくズル賢い人なのよ」
「監視されてるって、ちょっと気分がよくないわよね」
「きっと防犯カメラの死角になるところで盗むんじゃないかしら」

 話が一向にまとまらない。義父も防犯カメラの設置に乗り気だったが、義母がうんと言わない。結局、夫が「よさそうな防犯カメラを探してみるよ。具体的なものが見つかってから考えよう」と会話を打ち切った。


「防犯カメラの件だけど、このまま探さずにうやむやにしたほうがいいかもな」
 実家からの帰り道で、夫がそう言い出した。
「どうして?」

「洋服や現金がなくなっているのは多分、おふくろのせいだよな」
「うん。お金まわり以外はおかあさんのものしかなくなってないって言ってたし。ただ、おとうさんが忘れているパターンもあるかも」
「親父の性格を考えるとさ、防犯カメラをつけたら必ず、その記録を見ると思うんだよ」
「おとうさん、真面目だもんね」
「一連の〝犯人〞が、じつはおふくろだと気づいたとき、親父はどう反応するのか、正直言って想像がつかない」

 夫が言うには、義父は義母のことをかなり溺愛(できあい)していて、〝守らねば〞という意識も強い。うすうすはおかしいと思っても、義母の言い分をすべて信じこむことで義父自身がなんとか正気を保っている可能性があるという。

 わたしとしても、ヘタに真実を暴き出し、義父母の仲が険悪になるのは避けたい。夫婦喧嘩の仲裁なんかしたくない。大丈夫、わたしたちにはまだ「もの忘れ外来受診」という希望がある。親自身が「近々受診するつもり」と言っているのだから、その日さえ来れば、何か進展する。そう信じて疑っていなかった。

【次回に続く!】

【この話題の連載を初回から読む!】▶『子育てとばして介護かよ』

この記事で紹介した書籍ほか

子育てとばして介護かよ

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:
ISBN:
9784041081563