「空高く飛ぶために、君がすべきこと」新たなスタートを切りたいと思っている人へ/君は君の道をゆけ①

暮らし

公開日:2020/7/28

私たちの心を動かす、哲学者ニーチェの言葉の世界へ。刺激的な言葉の数々を遺したニーチェですが、その中には優しく私たちの背中を押してくれるものも多くあります。「君は君の道をゆけ」と、力を与えてくれるメッセージの中から、厳しくもあたたかい言葉の一部をご紹介します。

『君は君の道をゆけ』(齋藤孝:著、東元俊哉:イラスト/ワニブックス)

飛ぶことを学んで、
それをいつか実現したいと思う者は、
まず、立つこと、歩くこと、
走ること、よじのぼること、
踊ることを学ばなければならない。
―最初から飛ぶばかりでは、
空高く飛ぶ力は獲得されない。

『ツァラトゥストラ』(中公文庫、434ページ)

空高く飛ぶために、君がすべきこと

 この言葉はつまり、物事には段階があって「最初から飛ぶ」ことはできない、ということです。立つ、歩く、走る、よじ登ると、いろいろとやってみて、そこで初めて飛ぶことができるのです。

 したがって、何か目標がある人は、段階を踏んで、あれこれと試してみなければいけません。たとえば仕事でも、いくらクリエイティブな仕事をしたいと思ったところで、最初からそのような仕事を任されることはありません。まずは誰かの補助業務につき、次に会議に出席するようになって……というように、会社の中でも仕事のプロセスがあるはずです。

 よく、新入社員が研修の2週目にして、会社を辞めてしまうという話を聞きます。もちろん、研修の時点で辞めてしまうわけですから、本当にその仕事に向いていないのかもしれません。ただし、新卒というカードは、非常に重要なもの。一般的に人は新卒のときに、一番よい会社に就職できる傾向があるからです。ですから、新卒で入った会社を研修段階で辞めてしまうというのは、非常に残念なことなのです。

 研修では、まだ本格的な仕事についているわけではありませんから、先のことはわかりません。そのような段階で見切りをつける人を見ると、「いきなり飛べるとでも思ったのかな?」と、感じてしまいます。途中の段階で、よじ登るなり、走るなり、いろいろな選択肢があったはずだと、少々残念に思うわけです。

 もちろん決断が早い方がいいというケースもあります。とはいえ、最初から飛ぶばかりでは、高く飛べるようにはなりません。なぜなら、空高く飛ぶためには、地味な仕事や勉強をする時期が必要だからです。最初は「地味だなあ」と思っていたことが、あとから効いてくる、ということが多くあるのです。

 これらのことを踏まえたうえで、「空高く飛ぶためには、自分はいったい何をやらねばいけないのか」ということを、よく考えておくといいと思います。

 あくまで比喩ではあるものの、「君はよじ登ったことがあるか? 走ったことがあるか?」と聞かれたとき、様々なエピソードを笑って話すことができたなら、最初から飛んでいた人より、ちょっとかっこいいと思いませんか? また、その方が、結果的に空高く飛ぶことができるわけです。

<第2回に続く>