「不向きなことを、回避する勇気を持て」限界を迎えてしまう前に、読んでほしいメッセージ/君は君の道をゆけ②

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公開日:2020/7/29

私たちの心を動かす、哲学者ニーチェの言葉の世界へ。刺激的な言葉の数々を遺したニーチェですが、その中には優しく私たちの背中を押してくれるものも多くあります。「君は君の道をゆけ」と、力を与えてくれるメッセージの中から、厳しくもあたたかい言葉の一部をご紹介します。

『君は君の道をゆけ』(齋藤孝:著、東元俊哉:イラスト/ワニブックス)

あなたがたの力以上に
有徳であろうとするな。
可能性を超えたことを
おのれに求めるな。

『ツァラトゥストラ』(中公文庫、652ページ)


不向きなことを、回避する勇気を持て

 要するに、自分の可能性を超えたことまでやろうとしなくてもいい、ということです。無理をして聖人君子になろうとしたり、人に誠実でありたいと願っても、自分の資質にはある程度の限界があるものですから。

「嘘も方便」という言葉があります。頼まれごとを断るとき、何らかの方便を使うというのは、日本人らしい奥ゆかしさもあり、悪いことではありません。

 ただし、さりげなく「嘘も方便」を使える人もいれば、一方で、相手の期待に応えられない自分、断る自分に絶望してしまう人もいるわけです。

 しかし、いくら自分の可能性を追求し、それに絶望したとしても、自分の中にあるものが突然変化したり、増えるということはありません。そういう意味で、ニーチェは「大体必要とされるものしか自分の中にはない」「自分の中にあるものを出していく」ということを、別のところで書いています。

 自分の中にあるものが、形を変えて出てくる。たとえて言うなら、種のようなものでしょうか。チューリップの種からバラが咲くことはない、ということです。

 勉強にしろ、スポーツにしろ、学生時代に自分が苦手なことを克服しようと努力したり、じたばたしたりすることも、ある程度は必要です。自分の適性を理解するうえでも、非常に有意義なことでしょう。

 ただし、大人になるにつれて経験も増え、「これはないな、自分には無理だな」ということが明確にわかってくると、徐々に、自分と上手く付き合えるようになるものです。「嘘も方便」で、実力に見合わないことを回避することもできるでしょうし、自分の持つ可能性を、より芽が出そうな方向に導くことが可能になるからです。

 若い頃にありがちな〝全能感〞というものは、その人の可能性を広げる一方で、ときに危険な存在になりえます。「自分は、なんでもできる!」と勘違いしたままですと、できないことにぶち当たったとき、ぽきっと折れてしまうことがあるためです。

 したがって「これは自分に向いていない」とわかるだけでも、大いにプラスになるものなのです。「何でもやらなきゃ」とばかりに無理に自分を追い込まず、「これは自分のすべきことでない」という冷静な判断をする方が、人間としてスマートということです。

<第3回に続く>