不確かな世界で生きる私たち。不安に押しつぶされそうになったら、ぷかぷか浮かんでみよう/コロナうつはぷかぷか思考でゆるゆる鎮める①

暮らし

公開日:2020/8/1

新型コロナウイルスへの不安から、心身に不調をきたす「コロナうつ」が急増。つらいと感じたら一度立ち止まり、ぷかぷかと浮いたような気分でのんびりしてみては? 精神科医が教える心を鎮める思考方法をご紹介します。

コロナうつはぷかぷか思考でゆるゆる鎮める
『コロナうつはぷかぷか思考でゆるゆる鎮める – みんな不安。でも、それでいい –』(藤野智哉/ワニブックス)

コロナうつとは

 コロナで自粛生活を余儀なくされた私たちですが、自粛が明けたあと、すべてにおいて無気力になってしまったとしたら、どうしたらいいでしょう。

 この世界の様子はコロナが一変させました。

 同時にコロナ後の世界では、極度の疲労や不安などに苦しむ人が増えています。

 やる気が起きない。毎日が不安でしかたない。

 私たちはこれらの症状を「コロナうつ」と呼んでいます。

 コロナうつとはいったい何なのでしょうか? もう一度考えてみたいと思います。

 コロナうつで引き起こされる症状の多くは、慣れない環境や未知の恐怖への反応として正常な疲労、抑うつ気分、不眠などだと考えられます。

 これらはストレスに対する人間の正常な反応でもあります。

 アフターコロナの世界では、これまでの社会生活を取り戻すべく復興が始まりますが、長い自粛生活のストレス、現実の生活苦、燃え尽きなどから心が病的となってきてしまう方もいます。

 しかし、「コロナうつ= うつ病ではありません」。

 心が極度に疲れている症状ともいえるかもしれませんが、長引くことで症状が悪化する可能性があります。そのためにも、今からコロナうつと向き合う必要があります。

 うつ病ではないからこそ、薬ではなく考え方などを変えていくことでいい方向に向かっていくはずです。

 この章では、コロナで疲れたあなたに、ちょっと気持ちが楽になるいくつかのコツをご紹介しましょう。

 コロナ後、いえ根絶は難しいかもしれない“Withコロナ”の世界で 生きていくための生きる知恵をお届けします。

ぷかぷか浮かぶようにゆるゆる生きる

 人は自分が思っているよりも不確かな世界で生きています。

 気付いていないこと、知らないことがこの世にはごまんとありますが、その仕組みや理屈を知らなくても、なんの問題もなく生きています。

 知ろうとする必要もないことがあります。知ろうとしたけれど、理解できず、なんとなく納得していることもあります。

 たとえば初めて飛行機に乗ったときのことを覚えていますか?

 私は幼い頃「なんで飛ぶんだろう」「どうして落ちないんだろう」と怖いような、ワクワクするような気持ちで窓の外を眺めていました。

 大人になった今は、そんなふうにドキドキすることもなくなりましたが、だからといって、飛行機が飛ぶ理屈を完全に理解しているわけではありません。

 おそらく揚力とやらが関係して、ジェットエンジンが推し出す力で前に進むんだろうとはわかるんですが、なぜ安全に空を飛べるのかまったくわからないのです。

 それでは、なぜ私は飛行機に乗るのでしょうか。

 それは安全であることが、結果として証明されているからです。

「飛行機は車よりも安全である」「毎日飛行機に乗り続けても事故に遭遇する確率は0.01パーセント以下」「宝くじに当たるようなもの」などと言われますが、確かにこの結果を見る限り、飛行機はとても安全な乗り物だということは理解できます。

 それでも私は「飛行機はなんで飛ぶのだろう」と疑問に思うことがあります。離陸するまさにその瞬間、恐怖を感じることもあります。

 しかし、離陸してしばらくするとそのときの恐怖なんてすっかり忘れて、機内で映像を楽しんだり、窓の外に見える雲をぼんやり眺めたりしているうちに目的地に着きます。

 それなのに、また飛行機に乗るときになると、果たして落ちないのだろうかと不安に思い、不確かさの中で命を預けます。飛行機の原理は解明されている、されていないなど諸説ありますがどちらにせよ我々にとっては不確かなものですが、これを繰り返すうちに飛行機に乗ることの安全性を自らが証明して、慣れていきます。

 過度に怖がって飛行機の謎をすべて解明してやろうと意気込んで、そして安心する人もいるかもしれません。

 しかし、私たちの大多数は、なんとか不確かな中でやっていく技術を身に付けていくわけですね。

ぷかぷかと浮かぶように生きる

 私は不確かな毎日で不安に押しつぶされそうになったとき、患者さんにこう言うことがあります。

「ぷかぷか浮かんでみたらどうでしょう」と。

 目的地に向かって泳いで行こうと必死で頑張るから疲れるんです。

 世界ではコロナが猛威を振るっていて、その中で今までと同じような毎日を過ごそうと思うこと自体に、無理があるんです。

 自分が思い描く明るい未来に向かって、しっかりとまっすぐ泳いで行こうとしたら疲れますし、そのうち息切れしてしまうでしょう。腕をかいて必死に泳いでも、今の位置をキープするのが精いっぱい。

 だったら、ぷかぷかと浮かんでいればいいんです。

 言い換えると、私は問題となることからそっと目線を逸らすことを推奨しています。

 目を背けるわけでなく、そっと目を逸らす。そうすると違うものが視界に入ってきますよね。

 美しい夕焼けだったり、楽しそうな音楽だったり、近所のカレーの匂いだってそうです。今まで気がつかなかったことが、五感から流れ込んでくることでしょう。

コロナうつはぷかぷか思考でゆるゆる鎮める p.73

自分をボーッと見つめ直す

 つらいことから目を逸らす。それと同時に自分を見つめ直すことも大事です。

 幸いにして、コロナは私たちに1人で考える時間をたくさん与えてくれました。1人の時間をじっと過ごしているうちに不安が増幅してしまったかもしれません。でも、こう考えたらどうでしょう。

 仕事に追われていたけど、自分と向き合える時間がようやくできた。

 SNSなどを通じて、人とつながっていることがあなたに安心を与えてくれているような気がしていましたが、実はSNSがあなたの不安を増殖させていたことに気付けたのではないでしょうか。

 だったら、人や会社とのつながりに必死に手を伸ばすのではなく、波の赴くままに身を任せるのもいいかもしれません。

 ひとところにとどまって見つめ直すと、自分がこれまでどれだけ一生懸命、荒波を泳いできたかに気がつくことでしょう。

 おそらく不格好な泳ぎ方をしていたに違いありません。

 ぷかぷかと水面に浮かんだようなくつろいだ気分になったら、自分がいた状況を客観的に見ることができるでしょう。

 そこはどんなに価値のある場所だったのでしょうか? そんなことはないと思えるかもしれません。

 あなたがいた場所は居心地がよかったことでしょうから、またそこに戻りたいと思うこともあるかもしれません。

 でも、戻らないと、決めてしまえば、意外と気楽になるものです。

 SNSをしばらく断ち、ログインさえすればまたつながれることをあなたの心の支えにすればいいでしょう。

死を思うことが一番死から遠い

 誰もが通ると思うのですが、ある日「死」という概念を知り、死の恐怖に苛まれる時期が幼少期にあります。

 夜になると、親や自分が死ぬことを思って、泣き叫ぶ。すると母親が優しく抱きしめてくれて、スヤスヤと眠りにつく。

 明くる日の朝になるとすっかり昨夜のことは忘れてしまっている。そうやって私たちは死への恐怖を克服していきます。

 死は誰だって怖いです。

 なぜなら生きている誰もが経験したことがないから。

 だけど、いつまで命があるのか不確かでありながらも、それに耐えて生きています。死にあらがうことは不可能と知っていても、決して投げやりにならず、幸せに生きているわけです。

 私は心臓に持病があるため、人より死が身近ではありますが、割と心地よくぷかぷかと浮かんで暮らしています。

 波間に浮かんでいるだけなので、あまり前には進めないし引き返せない。荒波の前では立ち尽くしていようが、ぷかぷかしてようが一緒なわけで、せっかちに答えを追い求める人から見たら図々しく思われるかもしれません。それとも鈍感だと思われるかもしれませんが、それくらいでいいと思うんです。

 だって、人生のゴールが死だとしたら、生き急いだって意味がないと思えませんか。

 鈍感さがあるからこそ、毎日を楽しく過ごせるのです。

<第2回に続く>

この記事で紹介した書籍ほか

コロナうつはぷかぷか思考でゆるゆる鎮める - みんな不安。でも、それでいい -

著:
出版社:
ワニブックス
発売日:
ISBN:
9784847099281